quest.1 序章《プロローグ》
こんにちは、片岡雅です♪
今回は8月末に向けて応募用作品を書きます。
なんとなく意味不になる気がしますが、そこのところは徐々に改変していくんで、ご了承ください;
――はじめまして、というべきだろうか。
とりあえず自己紹介からいこうか。
俺の名前は一之瀬真。東京出身の十七歳だ。まぁ、東京とは言っても随分と田舎な方だが……、そんなことはこの際関係ないだろう。
俺はいま、随分と面倒で、随分と厄介な出来事に巻き込まれてしまっている。
まずは少しだけ、思出話といこうか。
◇◇◇
そこらじゅうに生い茂る木々の葉が少しずつ赤みを帯びようとしてくると、真夏日の続いた夏休みが終わってしまったということを嫌でも思い知らされる。実際毎日冷房の効いた快適空間にいたから、一日一日大した苦ではなかったのだが、如何せんなにも目的がないため(宿題? そんなものは知らん)、どうにも退屈な日々が続いた。
高校三年ともなると、この時期はもう受験勉強をしたり、もしくはもう受験をしたりと、何かと忙しいのだろうが、俺は進学するつもりはなく、周りと違って本当に退屈だった。
え? なんで進学しないかって? それを普通聞くか? まぁ、別にいいけど。
理由はいたって単純明快。面倒だからだ。前に言ったが、俺には目的がない。やりたいことも気になる事すらもない。かつてはあったであろうそのすべては、俺には少々難しい……えっと、なんとかっていう法律の援助ですべて消えてなくなっていった。
俺の通う高校は、数年前にあった災害でそういう状態になった子供が集められた学校で、そこでみな新しい目的に出会い、そこへ目指す。……はずなのだが、何度も言うが、俺にはそれがない。
それならもう学校に行く理由さえないのではないかと言われてしまうだろうが、それは一応あるのだ。
――俺は今、ある女の子に恋心を抱いている。……というまでは言わないが、すこし興味が湧いている。周りの人間とは、少し違った匂いがするのだ。いや、変な意味じゃなくて。
とにかく、俺はその子に会うため、ようやく終わりを告げてくれた夏休みをゴミ箱へ放り投げて、自宅の扉に鍵をかけた。
ガタンガタンと、久しぶりの感覚が俺の体に伝わってくる。少し潔癖の気があるためつり革や手すりにはつかまらないが、俺は通学電車のなかで揺られていた。言ってしまえば、退屈を持て余していた俺にはこの揺れさえもが楽しく思えてくる。なんとなくやばそうだからこれ以上言うのはやめておくが……。
自宅近くの最寄り駅から二駅で、学校最寄り駅に到着。これもまたいつもどおりの時間だ。
長期休暇終わりの第一日目というのは、以外にも早く目が覚めてしまったりする。そのおかげで今日は家を普段の五分前にでることができ、電車も安定して乗ることができた。きっといつもの調子なら揺れなんて感じる余裕もないだろう。走り疲れて。
家を出発して約四十五分ほど。無事高校に到着した。
俺はチラチラと見える同じ高校の生徒に混ざりながら校門を抜けると、それからもまた他の生徒に混じって昇降口まで歩いていった。
生徒玄関は全学年同じ場所で時間によってはこの場所は人でごった返しになる。そうなる前に来る事ができたのはラッキーだ。
まわりから、いやというほど聞かされる「おはよう」のこえが響く。ちょくちょく俺にも声を掛けてくるヤツはいるが、どれもこれも偽善で、俺は返すつもりはない。
俺はあまり人とのコミュニケーションが得意なほうではないのだ。特に女子とは……無理だな。我ながら情けない。
一体なぜ俺が浮いているかという話だが、これもまた単純明快な話しで、俺だけが異質だからだ。他のやつらとは、何かが少し違う。言ってしまえば、俺も周りとは違った匂いがする。いやだから変な意味じゃなくて。
その点で言ってみれば、俺の気になる女の子というのも同じなのだが、彼女は持ち前の明るさと、誰にでも対等に接する事のできるコミュニケーション能力でそれをカバーしているのだ。実は俺も、彼女とだけは普通に話すことができる。彼女と話しているときだけは、いつもの退屈な世界ではなく、なにか別の世界にでも行ったような気持ちで、あたらしい気持ちで対話する事ができるのだ。
そんな彼女がある夢の話をし始めたのは、一体いつごろだっただろうか。きっとあれは七月ごろだったろうか。運よく席替えで隣同士になった僕らは、一日に二、三度会話をしていたのだ。
その時によく聞いたのが、ある夢の話。それはココとは別の世界の夢で、まるでゲームのような、幻想に満ち溢れた世界だというのだ。夏休みが始まるころにはもうその話を聞くのも百を越えようとしていたかもしれない。
夏休みの途中からは、彼女のことを考えるあまり、俺までそんな夢をみてしまったくらいだ。今でもその夢は、瞼を閉じれば鮮明によみがえる。
美しい草花、この世のものとは思えない輝く泉に、とても澄んだ広大な大空。……なんて、そんな幻想に思いを馳せる年齢でもないのだが、どうにも心躍ってしまうのだ。こればかりは仕方ないとしか言いようがない。
きっと、彼女もこんな思いが胸のうちにあったのだろうか……。
――いや、そろそろ現実逃避は終いにしようか。
今まで俺の語っていた過去話は、所詮過去話。現実から目を背けていたに過ぎない。
ときは、登校直後に戻る。
この日の校舎内は、やけに静かだったことを覚えている。あの時点でなにかの異変に気づくべきだったのかも知れない。そうすれば、きっとショックも少なかったのかもしれない……。
俺の目に最初に映ったのは、小瓶にいけられた赤い花だった。まだ新しいのか、湿った花びらが日光を反射して輝いていた。
それから目に映ったのは、ボロボロと涙を流してなく生徒。
なぜかはわからないが、俺は涙がでてこなかった。
悲劇は突然訪れるもの、なんて、よく言ったものだ。
彼女はどうやら夏のうちに急に病にかかり、しかもそれが日に日に悪化して行ったそうで、夏の終わりには、その命を失ってしまったそうだ。死因は心肺停止。家族に見守られて、息を引き取ったらしい。
これで、もう俺にはこの学校に通う理由も何もなくなってしまった。もちろん、目的なんてものも見つかっていない。
俺に唯一残されたのは、彼女に聞いた夢の話のみだ。強いて言うなら、俺の望みはあの夢の世界にでも行く事だろうか。……なんてね。そんなことできっこないんだけどさ。今の俺には、そんなことを思うくらいしかできる事ないからな。
◇◇◇
――さて、こんな茶番もいい加減終わらせて、話を変えようか。
俺が話したかった話は、これとは別にあるのだ。勿論、先程までの女の子との話もとても大事な俺の思い出だ。
俺には到底忘れることなんてできない。
だが、この話にはまだつながらないようでつながっていた続きがあるのだ。つながらないようでつながっていた、別の話があるのだ。
あれは彼女の死を知って一週間たった頃だった。
俺の夢に、彼女が現れたのだ。それも、いつか話してくれたあの幻想世界のなかに。そしてこう言ったのだ。
『ごめんね……』
と。
俺には正直、自分がよほど彼女に執着しているとしか思えなかった。だが、実際はそうではなかったのだ。
純白の世界が俺を取り巻いている。道を歩く人間ひとりひとりが、みな意思を持たずにただ歩いているように見える。
どうやら俺はかなり重症のようだ。
だからだろうか。夢から覚めてもなお、夢を見続けようとしてしまったのは。
俺はその日、夢のなかで彼女に導かれたまま、高いマンションの屋上から、身を投げた。
変な終わり方でしたね;