初めての仕事
今日は新撰組としての初めての仕事である。仕事内容は薩摩と長州の情報を手に入れるため、遊郭にいる。
私は遊女に化けて潜入している。
勿論、万が一の時のために私の着ている着物のしたには動きやすい服を着ている。そして、武器も所持している。
「おばんどすえ。わっちは宝玉どす。」
勿論偽名をを使う。この名前は豊玉発句集の豊玉の漢字を変えただけの適当なものだ。
「ほう。なかなかのべっぴんだ。こりゃ、運が良い」
鼻の下をのばしニヤニヤと笑う。気持ち悪っ。
「まずはお酒でも…」
お酒の力を借りて吐かせる。
「わっち、まだ廓詞に慣れてないので…大目に見てくんなまし。」
「そうか。」
「はい。この仕事、貴方が初めてでありんすぇ。緊張しんす。」
男は自分が初めて。特別。そんな言葉が好きだ。だからそれを利用する。
「ほう。そうか。そうか。へへへ…この酒はかなり旨いな。」
早くも上機嫌である。
こいつかなりチョロいな。
きっと女に騙され易いタイプだな。
「貴方は武士なんでありんしょう?」
尊敬の眼差しを送る。相手をさらに上機嫌にさせ、酒をもっと飲ませるためだ。
「ああ。俺は…長州の者だ」
自慢げに言った。
鼻息も荒くなり、元々気持ち悪い顔が更に気持ち悪くなっている。
空になった器にまた酒を注ぐ。
「あの長州でありんすか!!凄いどすなぁ。」
興奮した様子で言った。
勿論演技だが。私、女優になれるんじゃないか?転職しようかな。でも、まあ、この時代では無理だが。
「武士もなかなか大変なんだ…坂本ちゅーもんが薩摩と手組もうと言いだして。本当に困ってしまうよ。」
薩長同盟か。
これは土方に伝えなければ。結構重要な情報のはず。
「そうなんでありんすか。大変どすなぁ。お酒、どうぞ」
これだけの情報が手に入ったからもう良いだろう。
さっさとコイツを潰そう。
顔が赤いし、目も泳いでいるし、もう少しで潰れるだろう。
酒を浴びるように飲ませたしな。
でも思ったよりコイツ酒に強い。
私の予定ではもっと早く仕事が終わる予定だったんだが…。ちっ。
「俺はぁ、お前が気に入ったぁ。だから嫁に来い。」
かなり酔いが回っているな。あと一押し──。
「まあ。嬉しい。わっちも貴方を愛していんす。さぁ、祝いの杯を」
そう言い、また杯にお酒を並々とつぐ。
「ぅおう。祝いだぁ。わっはっは。」
ついには踊りだした。
見ているこっちが恥ずかしい。
さらに調子に乗り、わたしの太ももに頭を乗せて膝枕の状態である。
殴ってやりたい衝動にかられる。
しかし、私の理性を全てかき集めて抑える。
「気持ちよいなぁ。……すーすーすー」
寝た。よし。帰ろう。うん。帰る前に一発殴っておこう。
ばきっ。
お腹を力一発殴ってやった。
私の憎しみ全てをこめて…骨折したんじゃないかな。ふふふ。
「ぐえっ。」
一瞬目覚めたが、すぐにまた夢の世界に行った。
動きにくい着物を脱ぎ捨中に着ていた服だけの状態になる。
そして土方の元へ情報を届けに走った。