新撰組に入りました
私は今、寝泊まりする所が無い。
だから、新撰組に入っちゃおうと考えたためである。勿論男と偽るつもりだ。
「何故、変な着物を着ている?お前、何者だ?」
「俺は名前すら無い小さな村から新撰組に入りたいと思い、此処にきただけだ。この服はただの民族衣装だ。」
此処は尋問所…一(?)が土方さんと言っていた男が、前で鞭を持って鬼の形相をしている男が新撰組の副長か。
「何者なんだ!!答えろ!!」
バチーンと私をむ鞭で打つ音が響き渡る。
「新撰組に入りたいと思っているだけの男だ」
表情を変えずに言う。
「何故、鞭に打たれても表情を変えない?」
信じられないというように言った。
「打たれて慣れた。父上や母上から。俺は嫌われてたんだ。あんな生活には戻りたくない…!!」
涙目になり、言った。
涙は偽りだ。
同情させるための。
しかし、言ったことは…本当の事だ。
「──分かった。近藤さんに言ってみるよ」
土方は優しいのだそう。それと同時に甘い。そう感じた一言だった。
歩きだした。
私に歩く速度を合わせてくれているのか、小走りをする必要が無い。
今まで私に合わせてくれる人なんて居なかったから、ほんわりと心が暖かくなった。
「近藤さん。こいつを新撰組にいれないか?」
おお。もう着いたのか。
「お嬢さんを新撰組に入れることはできんよ。」
眉毛が八の字になり、困った顔をした。
「お前…女か。女なら駄目だ。ここ、新撰組は女人厳禁だからな。」
「俺は男だ!!」
“男”を強調して言った。
その声が大き過ぎたのか人が集まってしまった。
「え~なになに?」
楽しそうに言い、部屋に入って来た。
「あ。」
「あ。僕が連れてきた娘じゃん」
「うむ。」
えっ。居たんだ。この人は一だっけ。
「んで、何の話ししてんの?土方さん?」
あっ。忘れてたよ。
「あ。」
やっぱり忘れてるか。
うん。やっぱり私だけじゃなかった。
「こいつが女だとお前らは思うか?」
何も無かったかのようにと問いかけた。なんか腹立つ。
「女って髪が命の次に大切って言うからさ、髪、切らせてみたら?」
「でも、そりゃ…やり過ぎなんじゃ…」
土方が苦虫を噛み潰したように言った。
「分かった。切れば男って認めてくれるよな?」
ショートヘアなんて現代では普通だからなんのためらいもない。
「あぁ。」
「刀は袋の中に入っているから…」
「ほらよ」
土方の手にはもうバックがある。早っっ。
腰まである長い髪をザクッと切った。
髪は鎖骨ぐらいの短さになった。
頭がかなり軽くなった気がする。
左手にある髪を土方や近藤さんに見せる。
「これで認めてくれるよな?」
「あぁ。認めるしかなさそうだ。じゃ、これから頼むぞ───君の名前はなんだ?」
「慧美。」
「名前も女っぽいんだねぇ。」
「黙れ。沖田」
沖田は楽しそうに笑った。
「慧美、部屋に要望はあるか?」
話を遮るようにして言った。
ほお。以外と土方ってしっかり者なんだな。
「この傷跡はあんまり人に見られたくないから…」
私の古傷、鞭によってできた傷をそっと指した。これはだだの理由付け。
本当は着替えている姿を見られたらバレてしまうからである。
「──あぁ。分かった。一人部屋にしとく。」
タイムトリップ2日目、意外と早く寝床ゲットしました。