撲滅
「綺麗な女…うまそう…喰いたい…」
にぃと口が歪み、私に血で濡れた手を伸ばす。
びくっ
「ちょっと、凛?狙われているのは私なのに、何故震えているの?」
「あの人…人間じゃないよ?目が怖い!なんで桜は怖くないの??」
凛の震えが私にも伝い、ガクガクして気持ち悪い。
とりあえず、降りるか。
背中の辺りに魔力を集める。
そしてその魔力を闇に変えて宙に押し出して翼を作る。
真っ黒の鴉のような翼でとても大きい。
触るとツルツルしていてあまり汚れなそう。
そして、動きやすいスリットが入った黒い光沢のあるドレスを作り、纏わせた。
ぴっちりと体に合っていて動いても服がずれない。
翼を動かすとバサバサと音を立てながら躯が宙に浮く。そして凛の隣の地に足を付ける。地に翼がついてしまっている。歩けば翼を引きずる状態なのだろう。大きいな、とは思ったが、ここまで翼が大きいとは思わなかった。
「ごきげんよう皆様、私も混ぜて下さいな」
背筋を伸ばして…胸を張って…声を少し高くして…まるで女王のように気品のある堂々とした姿。
「美人…喰う…早く」
「美味しそう…喰いたい」
目を閉じる。
体の中を魔力で満たし、体を強化させる。
視界は広くなり、どんなに暗くても昼間のように見える目に。耳は心臓の音すら聞こえる尖った耳に。手はとても大きな握力を持ち、人の顔を易々と砕ける程の。
爪は鋭く、鋭利な刃物のように。
一歩一歩悪魔に近づく。
「ひっ」
「喰う…しない…殺さないで」
あんなに威勢が良かったのに嘘のようだ。
なんだか私が悪いことしているみたいじゃない、怯えないで。
にこり
優しく微笑む。
悪魔はほっとした顔をした。そしてこの場から逃げようとした。
ふふふ。逃がすはずないじゃない。
悪魔の頭に手をおく。力を込めると砂のように細かく割れた。
残っている悪魔も同じように殺したから顔と手がびしょびしょだ。
「じゃあ、帰ろっか」
「畏まりました」
頭を下げて凛は敬語で答えた。
その姿は殿様のおな~り~とか言って正座をして頭をさげている人を思い浮かべる。
ぷぷぷ。似合わないよ。
ん?蒼い物がちらりと見えた。
「あ?慧美か?………ちょっ。お…えっ」
新撰組の平助君!懐かしいなぁ。
かなり酷い周りの光景!色々と飛び散っているからねー。吐いちゃうのも分からなくはない。
「慧美?だれですか?」
「お前、女…じゃあ、違うな。ごめん。悪かった」
平助君…ごめんね。




