桜院財閥を潰すために本格的に動き出します。
赤く、朱く、紅く染まった制服はまるでルビーのような赤い。しかし不吉感のあるドレス。
圧倒的な存在感を誇っている。
「ご、御機嫌よう。どういたしましたの…?」
顔を真っ青にさせながは話しかけてきた勇者がいた。勇者と言っても桜院家に気に入られたいだけの愚かな貴族なのだけれど。
「御機嫌よう。ふふふ。私、とても気分が良いの。ふふふふふ。」
だって大っ嫌いな2人をこの手で殺せたのだもの。とても憎くて憎くて頭がおかしくなってしまうほどの。そんな存在がいなくなったのだもの。誰だって喜ぶはずよ。
ああ。なんて気分が良いのでしょう。うふふふふ。あははは。
「ひっ」
小さく悲鳴をあげ、逃げようとする。しかし、腰が抜けたのか動くどころか立ち上がることすらもできなかった。それは、まるで生まれたての小鹿のようである。
「大丈夫よ。あなたには、何もしないから。殺したりしないから、安心して?」
「私には…。つまり、いえ、やはりその紅い液体は…血。なのです…か…?」
「ええ。そうよ。それ以外に何があるの?」
「きゃぁぁぁぁぁあああ」
目の前に殺人鬼がいるのだもの。血を顔や手、制服のあちらこちらにつけているのだもの。そりゃ、怖くなるわよね。
「悪魔…」
「悪魔だ…」
あちらこちらで悪魔という言葉が聞こえる。それから私は影で“紅い悪魔”と呼ばれるようになった。血の紅に悪魔、か。全く捻りのない名前だな。
けれど気に入った。
この紅い悪魔という言葉は学園内だけでなく、街中でもすぐに耳にするようになった。噂というものは怖い。あっという間に警察共は私を捕まえようと躍起になるだろう。
だから私は恐怖を覚えてしまう。だって捕まりたくないもの。
とんでもないことをやってしまった…
ねぇ、本当に恐怖を感じているの?
私の恐怖という感情は既に麻痺しているはず。お母さんを殺された時に。だから本当は恐怖など私のなかには存在しない。
捕まりたくない?
私は捕まらない。だって強い、私は。それに神から貰った力だってある。もう一度言う。
『私は捕まらない』
私に敵などもういない。
「ふぅ。」
深呼吸をして口元には笑みを浮かべさせる。華やかで身を守る棘をもつ薔薇のように。
桜院財閥を潰してあげよう。
完全に。父と母の愛した桜院財閥を。
さぁ、本当に最後の桜院家の令嬢として舞台に出よう。
宝石のように輝いる、綺麗な場所に。しかし、金、血そして死体にまみれた血生臭い舞台に。