能力
私は殺した。
身近にいる人を。
けれど、罪悪感とか心にポッカリと空いた穴なんて物はない。あるのは頬や手、胸、お腹に付着したあの女の血に対する嫌悪感、そして心地よい開放感。
人を殺して快感が…?私は気付かない内に壊れていたのかもしれない。
「くくくっ」
自称気味に笑う。
あの男達が私から逃げるのも分かる。
彼等から見たら私はきっと──────────悪魔だ。
はぁ。
不快感のする身体を洗おう。
シャワーのお湯が身体を伝い、赤い液体となってな流れ落ちる。
ボディーソープを並々と手のひらに注ぐ。
身体があわあわになるまでしっかりと洗う。
けれどまだ汚れている気がする。ゴシゴシと赤くなるまで擦る。けれどまだ私の身体は汚い。あの女の血が身体に染み込んでいる。
…いつから私の身体は清らかと思うようになったのだろうか?
新撰組の下にいて、私の生きている価値を見つけられたからか。
もうすでに汚れているというのに。清らかと思う私は非常に滑稽だ。
バスタオルで身体に髪を拭き、下着を身に着ける。何も着る気分になれずパジャマは着なかった。
ベッドに飛び込む。
するとバフンッと音をたて、埃が舞い散る。
「なんだか、今日は疲れた。」
小さく言葉にした。
目をゆっくりと閉じる。
次の瞬間私の意識は夢の中に誘われた。
『
ベッドに飛び込むとバフンッと音をたて、埃が舞い散る。
「なんだか、今日は疲れた」
小さく言葉にした。
目をゆっくりと閉じる。
次の瞬間私の意識は夢の中に誘われた。
『あらら。とうとう母親を殺しちゃったんだねー』
声だけがこの暗闇に響く。
「誰?姿を現して。」
『ひっさしっぶりー神だよ!』
「…」
こんな人居たなー。いや、人ではなくて神だったが。
『ちょっと、こんなヤツ居たなー的な目、やめてよー』
「ごめんなさい。」
『否定してよ!!』
半泣き。…コイツ、男神だよね?男だよね?
『ぷぅ』
頬を膨らませている。
そんなことしても可愛く無……可愛い。中性な顔立ちで美人だからだ。
幾ら可愛くても生理的に受け付けない。
『生理的に…酷いよっ。くすん。』
「チッ」
『聞こえているよ!!……っと。こんなことしている暇無かったよ。えーっと、君は新撰組のもと
に行きたいか?それとで、このまま現代にいたいか?』
「うんー」
幕末に行って皆に会いたい。けれど、現代で父親にはまだ復讐していない。
「私は貪欲なの。だから両方。」
『両方って現代にも幕末にも居たいってこと?はは。面白い!本当に暇つぶしに最適の人間だね!!じゃあ、この力をあげるよ』
紅色の光が神の手から出て、それが私の胸に吸収された。
「これは?」
『君たちの言うタイムトリップができる力だよ。あ。そろそろ君の身体が目覚める!じゃ、バイバーイ』
「んーっ」
伸びをする。
紅色の光を吸収した胸を見ると何か文字が書いてある。私には読めないが。
トリップする能力ゲットということか。