コンビニ
私は桜院財閥の娘。
だから、嫉妬の目で見る。
たしかに、お金には不自由しない。
けれど…だからこそ、こんな家に生まれてしまったのだから周りの人よりも優れなければいけない。勉強もスポーツもなんでも人一倍頑張っている。これは“義務”なのである。
そんな私の何処が羨ましいの?そんなに羨ましいのなら、誰か代わって欲しい。
はぁ。口から溜め息がこぼれる。
「コンビニに行こう」
小さく呟いた。
私はコンビニが好きだ。
けれど、ここからは遠い。何故ならここら辺はお金持ちしか住め無い場所だからである。コンビニやスーパーなんて無い。あるのは最高級品を取り扱うデパートのみである。だから私は電車に乗り、この街を出た。電車を降りると、寂れたコンビニが見えた。
私がコンビニが好きな理由は私を皆がジロジロとまるで獲物を見る目で見ない所である。
もし、私の家の近くのデパートなら…
「桜院慧美様ですか?」
にこにこと笑いながらおじさんが話しかけてくる。
「大変優秀だと良くお聞きします。しかし、時には困難な事があるでしょう?私には息子がいます。相談役どしてどうでしょうか?」
こんな風に息子を私の婚約者にしようと考え、近づいてくるのだ。
それが、ここにはないのである。
そんな所が特に嬉しい。
ドロドロとした所がない。ここは私の癒やしだ。─────唯一の。
「何買おうかなぁ…チョコレートも欲しいし…あ。あのクッキーも美味しそうだなぁ。あれ。グミもある!!…うーん決められない。よし。全部買っちゃおう」
持ちきれないので、2回に分けてレジに持って行く。
あまりの量に店員は目を丸くした。会計を済ませ、リュックに買ったお菓子を入れると、化粧ポーチとペンケースとノートとお財布しか入っていないぺっちゃんこのリュックはパンパンになった。幸せな気持ちでリュックをポンっとたたいた。
「でも、ちょっと買い過ぎたかな。」
首をかしげ、呟いた。
─────後にこのお菓子は大きな鍵になるとも知らないでコンビニから出て、歩きだす。