ミステイク?
ずっと昔私には愛しい恋人がいた。
臆病で恥ずかしがり屋で優しい人。
私は彼女の笑顔が大好きだった。
彼女が隣で笑っていてくれるだけで幸せだった。
彼女がいれば他に何もいらなかった。
誰にも祝福されなくたって良かった。
だけど世界は残酷だ。
いくら願ったところで異端はすぐに排除される。
最後に見た彼女の顔は覚えていない。
けれどその時私を呼ぶ彼女の声を今でも思い出す。
「いや…いやよサラ…サラ…お願い死なないで…」
あんな苦しそうな彼女の声など聞きたくなかった。
涙を拭う事も、大丈夫だと声をかける事すらも出来ない。
私は彼女を守れたのだろうか。
…きっと守れなかったのだろう。
ごめん、ごめんね。
次は必ず守るから…。
だから今度こそ2人だけで生きようね。
マリア。
ずっとマリアを探していた。
生まれてからずっと、ずっと、ずーーーーっと。
現代でも同性愛は偏見されているけど、昔に比べたらどうってことない。
殺されないだけでもありがたいけど、外国にいけば結婚だって出来るんだ。
現世ではマリアを私のお嫁さんにしたい。
それが私の夢であり目標だ。
ここでならきっとマリアと幸せになれる。
だけど会いたいと焦る心とは裏腹に17歳になってもマリアは見つからなかった。
容姿は昔と違うだろうと思っている、私だって昔とは違う。
性格も生きている環境で少しは変わってしまっている可能性もあるけれど、
それでも私はわかっていた。
マリアがどんなに変わっても彼女が好きな気持ちは変わらない。
そして一目見ればマリアだと気づけると…。
早く、早くマリアに会いたい。
いやいやいやいや…
うん…いくらなんでも…これはないよ。
ないよね?
ないよ!ないない…
あっそうだ!
きっと私はマリアに会いたいあまり夢を見ているんだ!
なーんだ、私もバカだな。
でも白昼夢に見るぐらい、私は今でもマリアが好きってことだよね……うん
「今日からこのクラスに転校してきた間宮だ。間宮自己紹介」
信じない!私は絶対信じない!!
私の可愛いマリアが、あんな…あんな…
「…間宮弘毅だ。」
無愛想な男になっているなんて!!!
神様あの男はマリアじゃないですよね?
この感覚は私の勘違いですよね?
退屈そうに名前しか言わないあの男がマリア?
1ミクロンもマリアの要素がないよ!!
なのに…なのに…なんで。
あの男から目を逸らせない、胸がドキドキと五月蝿い。
どこを見ているのかわからなかったあの男と目が合った。
その瞬間真っ直ぐ私の席まで歩いてくる。
ちょっと…待って…まだ、心の準備が!
「逢いたかった」
私の右手を取り嬉しそうに笑う彼の笑顔は、大好きなマリアの笑顔そのものだった。
ああ…もう認めるしかなさそうだ。
「…私も逢いたかったよ」
彼の手に左手を添えた瞬間。
私の口は彼によって塞がれていた。
周囲は騒がしい、きっとこの後大変だろうけど、そんな事は考える余裕なんてない。
私の口から離れた彼の唇が耳元に移動してくる。
「結婚しよう」
その一言がどんな意味なのか理解する前に、
私の口は彼にまた塞がれていた。
これじゃあ夢叶わないな、なんて考えたけれど、
彼の笑顔が見られるなら何でもいいかと結論を出し
私はそっと瞼を閉じた。
設定は1年前に出来ていましたが、
話しが全く思い浮かばず放置してました。
たまたま設定を見つけたので今回書いてみました。
いかがだったでしょうか?
感想がありましたら、お待ちしています。
誤字、脱字など知らせていただけたら嬉しいです。
お読み下さりありがとうございました