苦しい匂い
GLです。ちょっと黒いです。
苦手な方は、ご注意ください。
―私は今日もアロマキャンドルの匂いにつつまれる。
「んっ、、、」
隣には、カーテンを開けた私のせいで眩しげに顔をしかめる少女・優里がいた。
「、、、あ、ごめん。起こしたね。」
言い終わるか言い終わらないかのうちに、優里はまた眠る。
私は、優里の頭を撫でる。
でも実体が無いみたいに私の掌は優里という少女を包んでいる空間を、頼りないわずかな空間に残された少し温かい彼女の体温を認識する。
彼女は居ない。
今現在世界に、現実という名の空間に「優里」という少女は存在しない。
理由は明確で単純。
彼女を私が殺したからだ。
アロマキャンドルの匂いが私の心を、鍵をかけて心の奥にしまいこんでいた記憶を息も出来ないほど苦しく、切なく締め付ける。
「優里、、、。」
私が声をかけても、優里は返事をしない。
理由はここが私の『記憶』という名の一種の世界だからである。
この世界の中の住人は私を除いて四人。
パパ、ママ、弟のたっくん、そして優里。
優里は薄い羽衣のようなパジャマから純白の、まるで白百合のように穢れなく真白いドレスに身を包む。
「ねぇ、―さん。今日は私達の結婚式だよ、、、?」
結婚、、、。
私はぼうっとした頭で考える。
、、、違う。優里には、彼氏がいたはず、、、。それも、身近に、、、。
何度考えても、思い出せない。解らない。
頭痛と耳鳴りが止まない。
私は、誰だっけ、、、?家族はなんでいないんだっけ、、、?
何度考えても、結局思いだせなかった。
『キミガコロシタンダヨ、、、?』
私に良く似た声が耳元で囁く。
「「待って!」」
優里と、誰かの声が重なって聞こえた。
でも、止まれない。止まったら、アイツが、、、!
目に見えない恐怖心に、心臓が潰れそうになる。
瞬間、目の前に迫る赤い三輪車。
弟の小さな頃に使っていた赤い、、、赤い、、、真っ赤な、、、
「い、いやあああああああああああああああああああああああああああああああああああああっ!」
ごめんなさい!たっくん!!ごめんなさい!!!
背後に人の気配を感じて振り向く。
すると、後ろには優しい顔をしたたっくんが立っていた。
「た、たっくん、、、。」
たっくんは、ふわりと微笑む。
『オネエチャン、、、。』
「ごめんなさい!お願いだから、殺さないで!」
みっとも無いくらい、必死で懇願する。
瞳からは涙が溢れて、鼻水と唾液と嗚咽が混じる。
しかし、必死の懇願も空しく、たっくんは鎌を勢いよく振り上げる。
『ユルサナイヨ?オネエチャン、、、』
薄れていく意識の中、私は自分の罪を思い出した。
、、、そうだ。たっくんを、家族を殺したのは、、、
私だ。
―あの日、たっくんは優里を彼女として家に連れてきた。
私が大好きだった、愛していた優里を。
だから、許せなかった。 だから、私はたっくんを殺した。
親に警察に連れていかれそうになった私は、親さえも殺してしまった。
私は一人ぼっち。天罰をくらった。
今度は私がたっくんに殺される。
それでも、私は優里へとてを伸ばす。
私を好きなら、愛しているなら、
この手をとってよ。優里。
しかし、優里は笑顔を崩さぬまま私の手を払う。
―パンッ!
乾いた音が、暗闇に響く。「ゆ…り…!」
優里は笑顔で言った。
「ワタシは、貴女を永遠に愛さない―。」
私は暗闇に取り残された。
それでも…
私は今日も、貴女を愛してる―
END
恋をすることは素敵なことなので、これをみてショックを受ける人がいませんように…(切実)