日直
早足で林檎を引っ張りながらも学校に着いた。
靴箱のところまで連れて行き、そこで林檎の手を離した。
林檎はずっと俯いたまま動かない。
「林檎…その…さっきのは気にしなくていいんだぞ」
「…」
何も答えないし何も反応がない。
僕は靴を履き替えた。
「…先に行っとくけど、大丈夫か…?」
「…ん」
消え入りそうな声が返ってきた。
2度くらい林檎を見てみたが、ついてくる様子はなかったので僕は1人で教室へ向かった。
教室に入り自分の席へと向かっている途中。
「おはよう」
桃山さんに声を掛けられた。
「あ、おはよう桃山さん。」
「…林檎ちゃんは?」
「あぁ…」
さっきの出来事を言おうとして、
止めた。
「…少し体調が悪いみたいでな。多分もうすぐ来ると思う。」
「そう…」
桃山さんは心配そうに林檎の席を見つめていた。
「林檎ちゃん、今日日直なんだけど…無理かしらね?」
「え、あ、そうなのか?」
林檎が今日、日直だということを僕は初めて知った。
「ねぇ」
「…何?」
「林檎ちゃんの代わりに日直、頼まれてくれない?」
「は?」
さすがに驚いた、と同時に面倒くささで
「ごめんだけど他をあたってくれ」
キッパリと断った。
だが…
「林檎ちゃん体調が悪いのを知ってるの、君だけでしょ?」
「え…だからってなんで?桃山さん、委員長だし林檎とも仲良いんだろ?じゃあ、僕じゃなくて桃山さんがー
「私は委員長だから他にやることがあるの」
僕の意見はキッパリバッサリと切られてしまった。
「はぁ…わかったよ」
渋々、僕は職員室に向かうことにした。