鍵
その後。
休憩中も昼休みも掃除中も、
林檎とは、一言も喋っていない。
まぁ、いいか。
気づくと放課後で、部室前に立っていた。
『ガチャン』
「あ、れ?」
『ガチャガチャン』
「まだ、部室空いてないのか。」
部長は何やっているんだ。まったく…
「・・・・・・」
じっとしていると、遠くからワイワイと運動部の声がする。
もうすぐで、この学校も蝉の声で包まれるのだろうか。
なんだかうとうとしてきて、最終的に座り込んで、目を閉じていた。
『ボスンッ』
頭の上にのしかかる重さ。
「?」
軽い。
見上げると、林檎が給食当番の白い袋を片手に立っていた。
給食当番の袋は今、僕の頭の上に乗っている。
「そんなところで寝られたら邪魔なんだけれど。」
「…へ?」
後ろを見ると、ドアの鍵穴が僕の目の前にあった。
林檎の片手には、銀色でミサンガのついた鍵を持っていた。
「あれ?部長は…?」
のびをしつつ、ドアの前から退く。
「今日は休み。」
「他の子、は?」
「サボり。……いや、正確に言うと、体調不良で帰る・・・フリをして友達と何処かに行った。」
ただ淡々と棒読みで言われる林檎の言葉は、感情がまったくない。
「あ、れ?」
ちょっと待てよ…。
みんな休み=
林檎と
ふ、二人きり…!?