プロローグ
20XX年。
現在、日本は――
「働いたら負けだと思っている」
世界的なニート大国と成り果てていた!
無論、それは誰が望んだわけでもない。
人々が望んだのは「働きたくない」という、単純で怠惰な欲望。
そう、彼らはただ働きたくないだけなのだ。
しかし社会は、政府はそれを許さない。
ときの総理大臣である、濃住純ニチ郎は言った。
「現代における非労働者の急増の理由。それはズバリ意識の低下! 社会と自分との関係性がどれほど強いものか、その意識が現代人には大きく欠如しているのです! そして、政府はついにそれに対する打開策を用意することができました。国民よ、恐れるなかれ! 皆が等しく輝かしい労働の汗を流す未来は、すぐそこにあります‼ ――最後に、政治家としてではなく、社会人としてひと言だけ言わせてほしい……てめぇら、はたらけえぇぇぇぇ‼」
残念至極、この演説の直後に濃住は政界を退いた。理由は現在も謎のままである。
しかし彼の遺志は残された。
次代の首相が濃住の政治――そして思想を受け継ぎ、彼の言った“打開策”を実行段階へと移行させたのだ。
その政策の実態が、現代の“ハロワマン・ハロワレディ制度”と呼ばれるものであった。
かくして、日本のニート大国の汚名を返上せんとする制度は誕生した。
これは、その規律に翻弄された道化たちの、愛と涙とニートの屁理屈の物語である――