序章
私の処女作です。
最近、暇な時間が多く、文庫本や漫画を読み漁っていたら、突然閃きました。
「自分も書いてみよう!」
本当に突然です。
って事で、稚拙な文章ですが、誹謗中傷、感想、ご指摘、お褒めの言葉、何か頂けたら幸いです。
夏の面影もすっかりと消え、赤く染まった街路樹が、夕日を浴び一段と色濃く染まっていく。
窓の先に浮かぶ雲も、ほんのりと赤く色付き、それを愁うかの様に、午後6時を知らせる鐘の音が遠くから聴こえてきた。
滝沢和也が仕事を終え、帰る支度をしていると、自分を呼ぶ声が聞こえた。
「和也、今日早いじゃん」
振り返ると、同僚の中田亮太だった。既に帰る支度は終わっている様で、ショルダーバックを肩に掛けている。
「今から佳奈と飯食いに行くんだけどさ、和也も来いよ」と言った。
「あー悪い、明日同窓会でさ、今から実家に帰るから」と和也は言いながら、スーツの上着を手に取り席を立った。
「ふーん。和也がそういうの参加するの珍しいじゃん。今日、由美ちゃんも呼べるらしいぜ?」
と和也の表情を確認する様に見ながら、亮太が少しニヤケた顔で言った。
中里由美は亮太の彼女、佳奈の友人で、3週間程前に飲み会で紹介された。
ショートヘアで、目をクリクリさせながらいつも笑ってる、活発な感じの可愛らしい小柄な女の子。
「由美ちゃん、和也みたいなちょっとクールな感じがタイプらしいぜ」と、紹介された次の日の朝、会社で亮太が笑いながら話していたのを思い出した。
俺がタイプ?…。
ちょっと苦笑いがでる。
それは、ただ自分の『無気力な男』を『クール』だとか『少し影のある男』という類いに勘違いする女の子も稀にいる。
確かにこれまで異性に全くモテなかったわけでもないが、『特にぱっとしない男』が正しいと言うか、自分でもしっくりくる、自分の評価なのだと思う。
身長も体重も平均的。スポーツも勉強も人並み。お洒落とは言えない少しクセのある髪。容姿もさほど特徴があるわけでもない。
それでも、21歳の男として相応の恋愛もして、彼女も出来、セックスもした。
ただ、いわゆる「交際」が長続きした事が一度も無い。
「私といても楽しくないの?」
過去の彼女達に言わせると、自分はいつも「冷めてる」らしい。
ただ、遊びで女の子と付き合う程の甲斐性は無い。
「好きだ」と思ったからこそ、真剣に交際してきた。
それでもなぜか、女の感は違和感を感じ取るらしい。
それは多分、自分でも解ってる。
真剣に付き合おうとする努力。
今度こそ本気で愛そうという努力。
この努力こそ違和感なのだと。
それは、心の奥深くにいつまでも眠り続ける1人の少女の存在。それを、これまで何度も忘れようとする努力。
他の女の子とデートをする時も、キスの時も、セックスの時も、いつもそこに居て、笑う事も怒る事も無く、ただじっと無表情で自分を見つめている。
その目は余りにも切なく、どこからともなく湧いてくる罪悪感と後悔が体中に広がる。
「由美ちゃん可愛いし、性格も良さそうだし、文句ねぇじゃん」
足早にエレベーターに乗り込む和也の後を追って、亮太が来る。
「勿論文句なんか無いよ。こっちからお願いしたい位だ」和也は少し笑いながら答えた。
「じゃあ、今日飲み行ってさ、明日の朝帰ればいいじゃん。イイコトあるかもよ?」
「昔の女の事なんかいい加減忘れようぜ」
と少し真面目な顔で和也の背中を叩く。
亮太はいいやつだ。
以前お酒の勢いで、ほんの少しだけ忘れられない少女の話しをした事がある。
意外に真剣に聞いてくれ、それ以来なにかと「お世話」をしてくれる。
「そうだよ」
「だから行くんだよ、同窓会」
「もう抵抗するのは止めたよ。ケリをつけてくる」
「そろそろ俺も前に進まなきゃな…」