↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR

三題噺もどき5

眺める

作者: 狐彪
掲載日:2026/09/10

三題噺もどき―きゅうひゃくさんじゅうよん。

 




 眼下に広がっているのは、見慣れない町。

 所々に高い建物が並び、スーパーの看板も見える。

 白い広場は学校の校庭だろうか。

「……」

 見えるのは、私の住んでいる町。

 見慣れないのは、こんな高さから見ているから。

 こう見ると、この町もたいして広くはないのだろうと思う。

「……」

 私の通う高校……らしき建物も見える。

 ならあそこはいつも行くスーパーだろう。

 反対側には工場のようなものが並んでいる。

「……」

 見慣れた町ではある。

 確かに。

 建物は何か分かるし、場所の把握もなんとなくできる。

「……」

 けれどこう。

 どこかぼんやりと靄がかかったような。

 端の方が見えないのは当たり前かもしれないけれど、それにしても見えないと言うか。

 そもそも、分かるところしかはっきりと見えていないと言うか。

「……」

 ごちゃごちゃしたあたりとかは、なんだか霧のようなものがかかっている。

 建物が小さすぎてモザイクみたいに見えているわけではなく。

 ほんとに、うっすらと白い影が、記憶にはっきりしない場所にはかかっている。

「……」

 そんな局所的に霧が発生しているのなら、仕方ないが。

 そもそも街中でそんなに霧が発生するのかという問題があり。

 この山に霧がかかるならまだしも。

「……」

 私が今いる位置は、町の端にある山の、その上にある観覧車の更に頂上付近。

 かなり高い位置まで来ているから、景色的にはよくよく見えていて。

 今日は特に天気が悪いわけでもない。曇っても居ない。

 オレンジ色の輝かしい空が広がっている。

「……」

 やけにぼんやりとしている景色。

 ちょっと考えれば、こうしておかしな景色だと気づく。

 このオレンジだって、夕日なんだろうけど。

「……」

 何で夕方にこの観覧車に乗っているのだろう。

 ここは高校の近くではあるけれど、わざわざ乗りに来ることなんてない。

 そもそも山の頂上にあるのだ。急な坂を上ってくるには自転車や徒歩ではあまりにも苦痛だ。あの子に誘われたならまだしも、そんなこともない。

「……」

 だって、ここには私1人しかいない。

 ごうんごうんと、音を上げて回っている観覧車の籠の中に。

 私1人。これもおかしな話だ。

「……」

 考えれば考えるほど。

 おかしな景色におかしな現状。

 明らかに現実味はない。

 けれど。

「……」

 私は考えることをやめた。

 見えている景色がすべてだし。

 そういう事もあるんだろう。

「……」

 もうなんてもいいし。

 考えたくもない。

 考えれば考えるだけ疲れる。

「……」

 何も考えずに。

 ただ流れに任せて。

 なるようになっていく方が。

「……」

 楽で、周りにも迷惑をかけないし、考えて動く方が迷惑をかけるんだから、そっちのほうがいいし、自分の意思なんてない方がいいわけで、周りがそう言うからそう動いたって方がましで、自己主張なんてもってのほかで。

「……」

 町の景色は徐々に遠ざかる。

 何も見えなくなっていく。

 ―あぁ、そろそろ起きなくては。


「……」

 頭の上でアラームが鳴る。

 リビングから母の呼ぶ声が聞こえた。

「……」

 今日もまた、一日が始まる。











 お題:観覧車・オレンジ・空

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。