登竜山 初出勤
〔へぇ、すごい部隊に入ったわね。新しいところでも頑張ってね。〕
〔うん。って言っても、登竜山だからすぐ近くだよ。〕
〔そうね。じゃ。〕
〔じゃあね。〕
登竜山への初出勤。
と言っても、日菜は一切緊張を示さなかった。
母親と電話で異動部隊に入ったことを伝えて家を出ると、迷いなくいつも向かっている駅とは違う方向に歩いていく。
日菜の住んでいるところは『登竜山』は、『モンストゥルム討伐部隊登竜山』が拠点としている島。
登竜山のメンバーとは顔見知りで、関係性が少しだけ変わったが日菜にはなんの憂いもなかった。
登竜山の拠点は、登竜山の中心にある大きな山の麓にあり、その山の全てを登竜山が所有している。登竜山は道場も開いており、幼い子供から大人まで門下生がいる。
(やっぱりデカいなぁ)
日菜の目の前には「登竜山」と達筆すぎて読めないような書体で、大きな看板に書かれていた。周りはメッキなのか、所々剥がれているが陽の光によって輝いている。
月光との拠点とは大きな違いだ。
「こんにちは!!!香日菜です!!!」
登竜山の門は日菜の身長の倍はあり、木造で15センチ以上の厚さがある。
日菜はいつも登竜山に訪れるときは、まず大声を出して、外に人がいることを中にいる人に知らせる。それでも、何回かは大声を出す必要があるので、時には門が開いた時は息切れを起こしている時もあった。
だが、今回は素早くチャンが門を開けた。
「来たか。前のアザリアガーデン振りか?」
「そうですね。これからよろしくお願いします!」
「あぁ。シャンたちも待っている」
門の中は一つの大きな寺が建てられている。その中はさっぱりとしていてあまり物は置かれていない。強いて言えば、道場での訓練道具ぐらいだ。
「お邪魔します………」
「あーっ!日菜ちゃーん!今日からよろしくね〜!」
「あらぁ、日菜ちゃん。よろしくねぇ」
寺の中に入って日菜を歓迎してきたのは、チャンと同じく虎の獣人でルナと雰囲気が似ている『シャン』と、ウサギの獣人でおっとりとした話し方の『エリザ』。2人とも日菜とは親しい間柄だ。
2人の後ろには狼の獣人である『ブオン』と、普通の犬よりは大きい綺麗な毛並みの白色の犬『ララ』がいた。
ララは日菜のことは知っており、それなりに親しいが、ブオンは日菜と出会ったことはないので、鋭い目つきで日菜を睨んで警戒している。
「メンバー紹介……、は、ブオンだけか。彼は去年新しく入ったんだ」
「よろしくお願いしますっ」
「…………………」
日菜はブオンに頭を下げるが、ブオンはそっぽを向いて黙っている。それに対して、チャンはため息をついた。
「ブオン。彼女は新しく入るメンバーだ」
「ブオンだ。狼の獣人………」
素っ気ない挨拶だが、日菜は返事をしてくれたので喜んでいる。だが、ブオンが日菜に対して明らかに警戒、というより嫌っていた。




