表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
施設管理業異世界転生『予知保全スキルで異世界のインフラを守ります ~ビルメンは世界の破滅フラグを見逃さない~』  作者: もしものべりすと


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

9/41

第九話 信頼の芽生え

魔導炉の一件から、桐生に対する信頼は、さらに高まった。


 技術者たちは、桐生の判断を尊重するようになった。


 「キリュウ殿が言うなら、間違いない」


 「キリュウ殿に確認してもらえば、安心だ」


 そんな声が、聞こえるようになった。


 ある日の夕方——。


 桐生は、リーネから呼び出された。


 執務室に行くと、彼女はいつもの椅子ではなく、窓辺に立っていた。


 夕焼けを眺めている。


「お呼びですか」


「はい。少し、お話ししたいことがあって」


 リーネは、振り返らずに言った。


「二ヶ月前、あなたが来てから、この都市は変わりました」


「まだ、道半ばです」


「それでも、変わりました。魔導炉の事故を二度も防いでいただきました。上水道を浄化していただきました。城壁を補強していただきました。住民たちの表情が、明るくなりました」


 リーネは、ようやく振り返った。


 その目には、涙が光っていた。


「父が亡くなった時、私は絶望していました。この都市を、一人でどうやって守ればいいのか。若い私に、何ができるのか。毎日が、不安でした」


「……」


「でも、あなたが来てくれた。私の代わりに、都市を守ってくれた。私に、やり方を教えてくれた。今、私は、前よりも自信を持てるようになりました。それは、あなたのおかげです」


 桐生は、何と言えばいいか分からなかった。


 感謝されることに、慣れていなかった。


「俺は、自分の仕事をしているだけです」


「それは、謙遜です」


 リーネは、小さく笑った。


「自分の仕事をするだけ——それが、どれほど難しいことか。私は、父を見てきたから、わかります。父も、『自分の仕事をするだけ』と言っていました。でも、その仕事を、本当にやり遂げる人は、少ないのです」


 桐生は、黙って聞いていた。


「あなたは、やり遂げる人です。どんな地味な仕事でも、どんな危険な仕事でも、逃げずにやり遂げる。そういう人を、私は信頼します」


「……ありがとうございます」


 桐生は、素直に言った。


「信頼してもらえるのは、嬉しいです」


「私も、嬉しいです」


 リーネは、微笑んだ。


 その笑顔は、今まで見た中で、一番自然なものだった。


「これからも、よろしくお願いします。施設管理官殿」


「ああ。よろしく、リーネ様」


 二人は、そこで握手を交わした。


 それは、単なる形式的な挨拶ではなかった。


 信頼という名の、絆の証だった。


 その夜——。


 桐生は、自室で報告書を書いていた。


 今日の点検結果、明日の作業予定、来週の修繕計画。


 書くことは、山ほどある。


 だが、桐生の心は、軽かった。


 信頼されている。


 必要とされている。


 元の世界では、得られなかったもの。


 この世界では、それがある。


 ペンを走らせながら、桐生は思った。


 ここに来て、良かった。


 元の世界で死んだことは、不本意だった。


 黒崎の無責任な判断が、許せなかった。


 だが、その結果、ここに来ることができた。


 新しい世界で、新しい仕事を、新しい仲間と。


 それは、悪いことではない。


 むしろ——。


 いや、感傷に浸っている場合ではない。


 まだ、やることは山積みだ。


 桐生は、頭を振って、報告書の続きを書き始めた。


 だが、その時——。


 スキルが、反応した。


 遠くから、何かが来る。


 大きな「異常」が。


 前よりも、近づいている。


 前よりも、鮮明になっている。


 桐生は、窓の外を見た。


 西の空に、赤い光が瞬いていた。


 夕焼けではない。


 何か、別のものだ。


 何かが、起きようとしている。


 桐生は、それを確信した。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ