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施設管理業異世界転生『予知保全スキルで異世界のインフラを守ります ~ビルメンは世界の破滅フラグを見逃さない~』  作者: もしものべりすと


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第八話 魔導炉の危機

その日の朝——。


 桐生のスキルが、強烈な警報を発した。


 赤。


 それも、今までで最も強い反応だ。


 桐生は、即座に反応の発生源を特定した。


 魔導炉だ。


 城の地下にある、都市の心臓部。


 二ヶ月前に修理したはずの、あの魔導炉が。


 桐生は、走った。


 管理詰所から城の地下へ、階段を駆け下りる。


 途中で、ハインリッヒとすれ違った。


「キリュウ殿、どちらへ」


「魔導炉だ。異常がある」


「異常? 先ほど確認しましたが、問題なかったですが——」


「確認しろ。今すぐ」


 ハインリッヒは、桐生の表情を見て、事態の深刻さを察した。


 二人で、魔導炉の部屋に駆け込む。


 見た目には、異常はなかった。


 青白い光を放つ魔導炉は、いつも通りに稼働している。


 計器の数値も、正常範囲内だ。


 だが——。


 桐生のスキルは、明確に「赤」を示している。


 壊れる。


 このままでは、壊れる。


 三十六時間以内に。


「……聞こえないか」


 桐生は、耳を澄ませた。


「何がです」


「音だ。いつもと違う」


 ハインリッヒも、耳を澄ませた。


 数秒後、彼の顔色が変わった。


「……確かに。高い音が混じっています」


「ああ。共振音だ。どこかで、部品が緩んでいる」


 桐生は、魔導炉の周囲を歩き、音の発生源を探った。


 北側……いや、東側……もう少し上……。


 見つけた。


 魔導炉の上部、冷却装置との接合部。


 そこに、わずかな振動がある。


「ここだ」


 桐生は、指差した。


「冷却管の取り付けボルトが緩んでいる。振動で外れかけている」


「取り付けボルト……確認します」


 ハインリッヒが、梯子を持ってきて、魔導炉の上部に登った。


 しばらく確認した後、彼は青ざめた顔で降りてきた。


「キリュウ殿……仰る通りです。ボルトが三本、緩んでいます。あと数日で、完全に外れるところでした」


「外れたら、どうなる」


「冷却管が脱落します。魔導炉の温度が制御できなくなり……暴走します」


「二ヶ月前と同じだ」


「はい。いや、今度はもっと悪いかもしれません。前回は炉心の亀裂でしたが、今回は冷却系の故障です。暴走までの時間が、短くなります」


 桐生は、深呼吸をした。


 最悪の事態は、避けられた。


 まだ、時間がある。


「すぐに修理だ。ボルトを締め直せ」


「わかりました。ただ、炉を稼働させたままでは、危険です。一旦、停止させる必要があります」


「どのくらいかかる」


「修理自体は、半日あれば。ですが、炉を冷却するのに、さらに半日かかります」


「合計一日か」


「はい」


 桐生は、考えた。


 魔導炉を一日止めれば、都市の機能に影響が出る。


 二ヶ月前と同じだ。


 照明、暖房、浄水——すべてが止まる。


 だが、放置すれば、もっと酷いことになる。


「リーネ様に報告しろ。俺が直接説明する」


「わかりました」


 リーネへの報告は、すぐに済んだ。


 彼女は、桐生の判断を全面的に信頼してくれた。


「停止してください。住民には、私から説明します」


「ありがとうございます」


「いいえ、お礼を言うのは私の方です。また、大事故を未然に防いでくださいました」


 魔導炉は、その日の午後に停止した。


 住民たちには、「定期点検のため」と説明された。


 嘘ではない。


 ただ、「緊急の」定期点検だというだけだ。


 修理は、予定通りに完了した。


 緩んでいたボルトを締め直し、念のため、他の接合部もすべて確認した。


 その結果、さらに二箇所の緩みが見つかった。


 いずれも、前回の修理の際に、きちんと締められていなかったようだ。


「……前回の修理を担当した者は」


 桐生が尋ねると、ハインリッヒは気まずそうに答えた。


「外部から呼んだ職人です。専門家ということで、信頼していたのですが……」


「チェックはしなかったのか」


「いえ、一応は……ですが、彼が『問題ない』と言うので、鵜呑みにしてしまいました」


 桐生は、溜息をついた。


 専門家を信頼することは、大切だ。


 だが、信頼と、盲信は違う。


 最終確認は、自分でやらなければならない。


「これからは、外部の職人が作業した後は、必ず自分たちで確認しろ。ダブルチェックだ」


「はい。申し訳ありませんでした」


「謝る必要はない。次から気をつければいい」


 翌日、魔導炉は再稼働した。


 都市の機能は、正常に戻った。


 住民たちは、「定期点検が無事に終わった」と安堵した。


 誰も、大事故が寸前で回避されたことを知らない。


 それでいい、と桐生は思った。


 何も起きないこと。


 それが、俺たちの成果だ。


 だが——。


 今回の件で、桐生は一つの教訓を得た。


 自分のスキルは、万能ではない。


 異常を察知することはできる。


 だが、それを修理するのは、人間だ。


 人間が、ミスをすれば、意味がない。


 チェック体制を、もっと強化しなければならない。


 一人でやるのではなく、複数の目で確認する。


 そうすれば、ミスを見逃す可能性が減る。


 桐生は、新しいルールを作った。


 「重要な作業は、必ず二人以上で行う」


 「作業後は、作業者以外の者が確認する」


 「確認結果は、必ず記録に残す」


 シンプルなルールだ。


 だが、これが徹底されれば、事故の可能性は大幅に減る。


 施設管理の仕事は、一人では成り立たない。


 チームで動かなければならない。


 そして、チームを動かすには、ルールが必要だ。


 桐生は、そのことを改めて実感した。

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