第三十二話 宣戦布告
六ヶ月が経過した。
ガルディア帝国は、予告通り、王国に対して宣戦布告を行った。
大規模な軍事行動の開始。
帝国軍は、三方向から同時に攻勢を仕掛けた。
北部戦線、中央戦線、南部戦線。
王国の防衛線は、たちまち圧迫された。
バルトハイムも、その影響を受けた。
「帝国軍が、本格的に動き始めました」
ガルドが、緊急報告を持ってきた。
「中央戦線では、すでに二つの城塞が陥落しています。このままでは、バルトハイムも危険です」
「防衛の状況は」
「城壁の修復は、キリュウ殿のおかげで完了しています。兵糧も、半年分の備蓄があります。籠城するなら、当面は持ちこたえられます」
桐生は、地図を見つめた。
帝国軍の進軍ルート、補給線、主要な拠点——すべてを、頭の中に入れていく。
「……帝国軍の動きは、速いな」
「はい。まるで、王国の弱点を知り尽くしているかのようです」
「知り尽くしている、か……」
桐生は、黒崎の顔を思い浮かべた。
あの男のスキルは【最適解析】。
あらゆる状況の「最適解」を計算する能力だ。
王国の防衛線の弱点も、計算しているのだろう。
どこを攻めれば最も効率的か、すべてわかっているはずだ。
「厄介な敵だ」
桐生は、呟いた。
「え?」
「いや、何でもない。防衛の準備を続けろ。俺は、別の対策を考える」
「別の対策?」
「ああ。籠城だけでは、ジリ貧だ。何か、攻勢に転じる方法を考えないと」
桐生は、自室に戻った。
そして、机に向かって、考え始めた。
黒崎との戦い。
それは、単なる軍事的な戦いではない。
二つの哲学の戦いだ。
「効率」を追求する黒崎と、「予防」を重視する自分。
どちらの考え方が正しいか、この戦いを通じて証明される。
「俺のやり方で、勝ってみせる」
桐生は、決意を新たにした。
黒崎の「効率」に対抗するには、自分の「予防」の強みを活かすしかない。
壊れる前に直す。
問題が起きる前に対処する。
その考え方を、戦争にも適用する。
「敵の攻撃を、事前に察知して対処する。敵の計画を、先回りして潰す。それが、俺のやり方だ」
桐生は、スキル【予知保全】を発動させた。
設備の異常だけでなく、この世界全体の「異常」を感知する。
敵軍の動き、天候の変化、地形の歪み——すべてが、情報として流れ込んでくる。
その中から、重要な情報を抽出する。
「……見つけた」
桐生は、地図上の一点を指差した。
帝国軍の補給線に、弱点がある。
そこを突けば、帝国軍の進軍を遅らせることができる。
「これを、リーネ様に報告しよう」
桐生は、立ち上がった。
戦いは、始まったばかりだ。
だが、桐生は負けるつもりはなかった。
自分の信念を貫き、この世界を守る。
それが、自分に課せられた使命だ。
そして、黒崎に——。
自分のやり方が正しいことを、証明してみせる。




