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オカルト部を立ち上げた結果、押しかけ幽霊ヒロインとの同居生活が始まりました  作者: 秋川悠


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9/18

幽霊の朝は早い

 まだ眠りたい気持ちを無視するように、日の光がカーテンの隙間からうっすら差し込んでくる。


 少し体を起こして壁掛けの時計の方を見ると、まだ五時四十分だった。七時半に家を出れば高校には十分間に合うから、もう少し寝れるな。


 そう思いながら、俺は再びベッドに横になり、頭の後ろで腕を組みながら天井を見つめる。


 そういえば、俺、昨日から幽霊と同居してるんだっけか。正直、全く実感が湧かない。


 そんな非日常を思い出した瞬間、階下から物音がした。


 ガサッ......ズルッ......ガタンッ!......


 寝たい気持ちを粉砕するような騒音。何をしたら朝五時台にあんな音が出せるんだよ。いや、待てよ......。あいつの事だ、まさかもう一階の掃除を始めてるんじゃないのか......?


 俺は渋々ベッドから起き上がり、寝巻であるジャージ姿で階段を降り、恐る恐るリビングに顔を出そうとすると、


「床が! 床が見えたぁぁああ!!」

 

 リビングのど真ん中で、かなえが膝をついた状態で天に向かって勝利のガッツポーズをしていた。


 その周りには分別途中のゴミ袋が山のように並び、靴下片方、ペットボトルのフタ、プリント類などが謎のグループ分けされ並べられている。


「あ! 蓮くんおはよー! ほら! ある程度リビングは綺麗になったよ! 全然まだ途中だけど!」


 ガッツポーズ姿のかなえが俺に気づき、挨拶とともに経過報告をしてきた。


「お前、嘘だろ......。あのゴミ、いや、大量のモノを全部片づけたのか? 何時に起きて掃除始めてたんだよ」


 昨日とは見違えるリビングを目の当たりにし、俺は思わずかなえに訊ねた。


「いや~、昨日のゴミ屋敷を見てから変な夢を見ちゃってさ。途中で目が覚めて朝四時からここの掃除してたの」


 この人、とうとう俺の家をゴミ屋敷って言っちゃったよ。でも一時間半でここまで色んなものを分別して、床まで見える状況にするとは......。


「あ、そうだ蓮くん。これ、確認して!」


 あっけにとられている俺をよそに、かなえは満面の笑みでゴミ袋を指差した。


「可燃! 不燃! 資源! あと謎!」


「謎って......。最後のカテゴリ雑すぎだろ」


「謎というよりかは、蓮くんの私物と思われるものかな。一応蓮くんの確認なしに捨てるのは嫌だったし。ほら、確認して!」


「えーっと、とりあえず顔洗ってきていいか......? まだ起きたばっかりなんだが.......」


「だめ! そうやって後回しにするからこんな状況になっちゃうんだよ!」


 なんだこのオカンみたいな幽霊。でも何も言い返せない自分が一番情けない......。


 清掃名人の幽霊から正論をぶつけられた俺は、渋々謎カテゴリーのゴミを漁る。


 謎カテゴリの中身は学校のプリントやら、脱ぎかけの服などなど、とにかく俺の私物が敷き詰められていた。ざっと服だけは自室に持ち帰り、プリントはぱっと見て必要なモノだけをピックして机の上に置いた。ちなみに、プリントの九割七分くらいは留学の広告やら、どっかの大学で行われる研究発表会の案内など、俺とは全く関係の無いものばかりだったが、とあるプリントの隙間からあるモノが出てきた。


「うわ、懐かしいもんが出てきた」


「ん? なになに?」


 かなえがさっと俺の方に駆け寄り、肩越しに覗き込む。


 出てきたのは、折れ曲がった写真。


「これ、うちの家族写真だ。確か、旅行で長野に行ったときに撮ったやつ」


 懐かしいはずなのに、胸がちょっとだけズキッとした。


 ぎこちなく笑う父さん。ふわっと母さんの膝元に抱き着いてニコッと笑う妹。ただカメラを見つめ、棒立ちの俺。そして、優しく微笑みながら俺の肩に手を当てる母親。


「そっか、これ、家族全員で撮った最後の写真だったんだ」


「ふーん……」


 かなえは写真を見つめ、少しだけ言葉を探すように黙った。

 

「ねぇ蓮くん」


「なんだよ」


「捨てないでよね、それ」


「……当たり前だろ」


 そう返すと、かなえはちょっと安心したように笑った。

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