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オカルト部を立ち上げた結果、押しかけ幽霊ヒロインとの同居生活が始まりました  作者: 秋川悠


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幽霊講座開講

「まぁ、ここからはややこしい話になるから、要点だけ押さえてもらったらいいんだけど……」


 そう前置きしてから、理人はテーブルに肘をついた。


「まず、一般的な幽霊、いわゆる“一般霊”ってやつはさ、霊感を持ってない人間には見えないし、基本的に物にも触れられない。だから壁を壁をすり抜けたりするのが普通なんだよ」


「まぁ、よくある幽霊像だな」


「そうそう。で、次が”実体霊”」


 そう言いながら、理人は指を二本立てた。


「これは、霊感を持ってない人間には姿は見えないけど、物理的な干渉ができる霊なんだよ。ドアを開けたり、物を動かしたりすることが出来る。よく言われるポルターガイストっていう現象は、彼らが引き起こしているんだよ。ほら、昨日の空き教室で見せたやつ、勝手にチョークが動いていたでしょ?」


「なるほどな。俺が護符を手にしてたらその姿も見れたってことだな」


「そういうこと」


 今の話に俺は思わず頷いた。


「その話を聞く限り、俺が昨日遭遇した幽霊に近いな」


「うん。今の話を聞く限り、分類だけで言えばそこが一番近いかな。ただし」


「ただし?」


「実体霊の多くは、長時間安定して人間みたいに生活することは出来ないんだよ。物に触れられる時間に制限があったり、霊力を消耗すると実体が薄くなったりするんだよ」


「なるほどな。一緒に過ごした感じだと、そんな様子はなかったな。ひたすらに俺の家の掃除をしてたしな」


「蓮、女性の幽霊になんてことをさせてるの......」


 しまった。少し話し過ぎたか。俺のズボラぶりがバレてしまうかもしれない。


「それで、俺の家にいる幽霊は実体霊じゃないってことか?」


「しばらく様子を見てみないと分からないかな。三日くらい見てみて、実体が薄くなったりしなければ実体霊の可能性は低いと考えていいかな」


 そう言いながら、理人は手元のオレンジジュースを一口飲んだ。


「実体霊じゃなければ何になるんだ?」


「さらに上の段階として、”完全実体霊”になるかな。この場合だと霊力を消耗することも無いから、実体が薄くなったり、物に触れられる時間にも制限は無い」


「まぁ何日か観察してみないと分からないが、その可能性もありそうだな」


「そうだね。さらに上の段階の話をしておくと、”影霊”って呼ばれる存在もある」


「影霊?」


「そう。実体と非実体をある程度自由に切り替えられる中間進化みたいなやつ。触れたり触れなかったりを自分で選べたり、存在感を薄くしたりも出来る」


 なんだよそれ。幽霊ってのはポ〇モンみたいな感じで進化もしていくものなのか?


「なんか、もう人間の理解を超え始めていないか?」


「まぁ、そもそも幽霊っていう存在自体が人間の理解を超えた存在だからね」


 それを言い出したら元も子もないだろ。でも、昨日の今日で自分の中の幽霊に対する価値基準がだいぶ壊れてきている気がする。あぁ、かなえに壊されていく感覚がする......。


「それでさ、ここからは稀なケースなんだけど、”完全霊”ってのもいるんだよ。この幽霊はほぼ人間と同じように存在できる霊。体温や呼吸、鼓動まで同じで、霊感の無い人間にも見える。それで、人間と同じように歳を取って、最終的には人間と同じように消えていく」


「......それ、もう幽霊って言っていいのか?」


「ギリギリ幽霊かな」


 理人は苦笑した。


 ただ、この話を聞いて少しゾっとした。そいつらはこの世界に溶け込んで生活をしているってわけだろ?


 そしたら、直哉や佐々木、そして、目の前にいる理人でさえも幽霊の可能性があるってことだ。


 なんか、とんでもないことに足を突っ込んでしまったかもな......。知らぬが仏とはこのことか。


「そして、ここから先は完全に例外中の例外」


 少し間を置いて、理人は低い声で続けた。


「”零魂”」


 聞きなれない単語に俺は思わず眉をひそめた。


「生物と幽霊の境界が、継ぎ目なく混ざった存在。特異的な存在で、世界そのものに影響を与える体質を持ってる」


「......それって」


「人間の理解を完全に超える領域だね。僕もまだ見たこと無いし」


 理人はそう言って、一度言葉を区切り、俺にまっすぐな視線を送ってきた。


「今の段階では、蓮の家にいる幽霊が何なのかは断定できないね」


 その言葉を聞いて、胸の奥がじわりと重くなる。


 もし、かなえが理人の言う零魂だとしたら......。あいつは世界にどんな影響を与えるのだろうか。あいつに世界を変えられるほどの力があるとしたら......。いや、これ以上考えるのはやめておこう......。


「ちなみに」


 俺の表情を見て気を遣ったのか、理人は少しだけ声をやわらげた。


「蓮は彼女に願い事をした?」


「願い事?」


「あぁ、まだこの話してなかったっけ?幽霊は人間と契約を結べるんだよ」


 理人はそう言って、指先でテーブルを軽く叩いた。


「契約って言っても、悪魔みたいなやつじゃないから安心して。もっと個人的で、曖昧で......厄介なやつ」


「厄介って時点で安心できねぇんだけど」


「まぁ聞いてよ」


 理人はストローを回しながら、淡々と説明を始めた。


「人間と幽霊が強く関わるとき、条件が揃うと“契約”が発生することがある。基本的には、幽霊と人間の“思い”が一致した瞬間だね」


「思い?」


「助けたい、とか。そばにいたい、とか。失いたくない、とか」


 その言葉が、やけに胸に引っかかった。


「契約が成立すると、外部からの除霊や干渉ができなくなる。つまり、霊力のある他の人間が勝手に手を出せない状態になる」


「......それは、幽霊側にとっては守られるってことか?」


「そう。人間側にとっても、勝手に関係を壊されないって意味では同じだね。もし蓮がその幽霊と契約を結んでいたら、僕も彼女には除霊とか干渉できないよ」


 理人は一拍置いてから続けた。


「その代わり、人間は“一つだけ”願いを叶えられる」


「一つだけ?」


「そう。ただし、その願いがどこまで届くかは、幽霊の”階級”次第だね」


 『一つだけ願い事が叶えられる』か。今のところ叶えてもらいたい事なんて無いし、その機会は取っておくことにするか。


「ちなみに、一般霊程度であれば、せいぜい偶然が少し重なる程度かな。実体霊なら、叶えられる事の幅が広がる感じ。運が良くなったり、人との良い縁が繋がるとか」


「なるほどな。ちなみに、零魂クラスになると、どんな願いが叶えられるんだ?」


「世界に影響を与えるクラスの願いが叶えられる可能性がある。現象、因果、記憶の書き換え......そういう“境界”に手を突っ込める存在だね。まぁ、実際に僕も見たことが無いから、どれくらいのレベルなのかはハッキリとは分からないけど」


 現象とか記憶の書き換え?なんか幽霊の話とは別物な気がしてきた。そんな展開はSF映画とかでしか見たこと無いんだが。


 理人は再びオレンジジュースを一口飲んで、さらに話を続ける。


「あ、幽霊と人間との契約が切れる点についても話しておこうか」


「......切れる、って言い方が怖いんだが」


「まぁまぁ。ちゃんと条件は決まってるから」


 俺の言葉をよそに、理人は淡々と契約についての説明を始めた。


「一つ目はシンプル。契約している人間が死んだとき」


「それはまぁ......想定通りだな」


「もう一つは、人間と幽霊、どちらかの”思い”が完全にズレたとき」


「ズレたとき?」


「そう。企業とか現実だってそうでしょ?互いの利害関係が合致することで、契約は交わされるし、途中で方向性が変われば、契約は破棄される」


「なるほど、分かりやすい説明だ」


「まぁ、ここで話してるだけじゃあんまり分からないよね」


 理人はそう言って肩をすくめた。


「幽霊の基本的な説明としてはこんな感じかな。また分からないことがあったらいつでも聞いてよ」


 この情報量で”基本”なのか。これ以上詰め込んだら確実に頭がパンクする......。

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