唐突なテスト
オカルト部の顧問について俺と直哉が話し合っていると、いつの間にか学校の校門を通り越していて、そのまま昇降口でサッとスリッパに履き替えてから教室へと足を運んだ。
教室に着くと、俺の席の隣人である佐々木が既に着席していて、何やら難しい顔で英語の単語帳とにらめっこをしていた。
「なんだよ佐々木。朝から辛気臭い顔して。犬のうんこでも踏んだのか?」
直哉の軽口に、佐々木は単語帳から視線を上げ、ため息をついた。
「……はぁ。今日英語の単語テストあるの知らないの?」
「は?」
佐々木の思わぬ返答に直哉が素っ頓狂な声を上げる。
「ちょっと待って。そんな話、俺聞いてねーんだけど」
「いや、昨日の授業で先生言ってたじゃん。範囲も」
「絶対聞いてねぇ……」
直哉は頭を抱えるが、俺も他人事じゃない。
言われてみれば、そんなことを聞いた気がしなくもないが、完全に記憶の彼方だ。
「お前、何でそんな真剣にやってんだよ」
「単語テストは地味に評価に響くのよ。ここでもしっかりポイント取っておかないと」
そう言って佐々木は、再び単語帳に視線を落とした。
朝練終わりでこれか。
真面目すぎて逆に尊敬する。
俺はというと、直哉と目を合わせて同時にため息をついた。
♦
一限目は英語。直前で英単語を頭に突っ込む時間すら無いままテストが始まろうとしていた。
テスト用紙を後ろの直哉に渡した瞬間、直哉は完全に魂を抜かれた顔をしていた。
「……なぁ蓮」
「なんだ」
「俺は先に逝くから、待ってるぜ、蓮」
「やかましいわ」
開始の合図と同時に、教室中でシャーペンの走る音が響く。
佐々木は相変わらず淡々と問題を埋めていくし、俺もそこそこ手は動いた。
ただ、後ろの席からはペンを走らせる音が全くしなかった。直哉は本当に逝ってしまったみたいだ。
テストが終わり、後ろから答案用紙を回収する過程で直哉の用紙をちらっと見てみた。
単語欄はほぼ白紙。たまに書かれている英単語もスペルはめちゃくちゃ。今まで見たことない英単語がいくつも書かれていた。
こいつ、本当に終わってるな......。
♦
放課後。
俺と直哉は、並んで職員室へ向かっていた。
「なぁ蓮……」
「何だ」
「相沢先生ってさ、本当に顧問やってくれると思う?」
「知らん。やってくれたらラッキー、断られたら次を考えるだけだろ。お前が」
「冷てぇ……。てか一緒に考えてくれよ!」
「まぁ善処はする」
「それ絶対何もしてくれないやつじゃねーかよ......」
だが、俺の本音もそれに近い。
正直、相沢真帆という教師は掴みどころがなさすぎる。
歴史の授業では淡々としていて、やる気があるのか無いのか分からないし、時々授業でも謎の発言をしだす。
「でもさ」
職員室の前で、直哉が立ち止まる。
「顧問が決まらなきゃ、何も始まらねぇんだよな」
「……まぁそうだな」
オカルト部。幽霊。そして、かなえのこと。
まだ何も分かっていないし、正直なところ、俺自身どう向き合えばいいのかも整理できていない。
それでも。このまま何も知らないまま放っておくのは、違う気がしていた。
「行くぞ」
「おう」
俺たちは、意を決して職員室の扉を開けた。




