王位継承
「汝に魔の加護があらんことを」
僕は今、魔王城の大広間で大魔術師エレン・ファーブライの前に跪き、頭を垂れている。彼の年齢は分からない。ただ、見た目は青年のように若い。その手には王冠があり、大事そうに両手で抱えている。彼はそれをそっと僕の頭に乗せた。
「今ここに、エーレ・ロングロフ第14代統一魔王国国王が即位したことをここに宣言する!」
僕は観衆の方へ振り向き、堂々と立ってみせた。
どっと拍手が沸き起こる。
嫌なものを継いでしまった。と思った。
一通り戴冠式が終わると、その後は城下町のパレードに連れ回され、新国王が即位したことを華々しく民衆に知らしめることとなった。
しかし、民衆の反応は悪かった。中には罵詈雑言を浴びせ、石を投げつける者もいた。近衛兵が抑えにかかって、そこから大乱闘に発展してしまった地区もあった。
それもそうだろう。先代魔王であるこの世界の父は歴代稀に見る暴君、愚王だった。度重なる政策の失敗。そのつけを民衆に払わせるかのように重税をしき、反発するものはすぐ処刑をするといった圧政。それは政界においても例外ではなく、多くの粛清があり、魔王城には優秀な人材がほとんどいなくなってしまっていた。
多くの民衆、魔界に住む種族たちが反旗を翻し、各地で反乱が起きていた。もう国王の権力だけでは押さえつけることが出来なくなっていた。
そんな折に、父は僕に押し付けるように王位継承を断行したのだ。状況は最悪である。
「エーレ、おめでとう。お前ももう立派な国王か。わしも歳でな、これから大変だと思うが、頑張ってくれ」
魔王城に帰って、一息ついたところで、父は僕に会ってそれだけ言い、自室へ戻って行った。
(まだ引退するほどの歳でもないのに。ほんとに言い訳がましい親だ)
パレードで疲れた体を休ませ、城の中を散歩していた。気づけばもう夜になっていた。
「陛下、早速明日より公務がございますので、もうお休みになってください」
廊下を歩いてると、宰相ランドル・メンゲフがそう話しかけてきた。初老の、顎に少し白い髭をたくわえた男だ。
「ランドル、この国はどうなると思う」
月夜に照らされた城下町を窓辺から見下ろしながら尋ねる。
「私はエーレ様に、国王様に仕えるのみです。どうなろうとどこまでもついて行く覚悟でございます」
「ありがとう。よく父の元で長年宰相を務めてくれた。まだこの国が崩壊してないのもランドル、君のおかげだよ」
「もったいなきお言葉。光栄でございます」
「君の有能な部下メイメイ、ハクロも父の粛清でいなくなってしまった。今のヤフツキー、アンロンはダメだ。また新しい左大臣、右大臣を任命しなくてはな。君が家臣にしたい者を二人、また教えてくれ」
「私めが選んでよろしいのでしょうか、」
「今はなりふり構ってられない。できるだけ優秀な人材を集めて、この国を立て直さなくては」
「はっ、仰せのままに」
「そういうことだ。おやすみ、ランドル」
「おやすみなさいませ。陛下」
そう言って僕はランドルと別れ、自室のベットへ入った。明日から忙しい毎日が始まる。僕は、はっと小さくため息をついて眠りについたーー




