表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/6

各種スケート練習

 時間に追われ、箱を詰む仕事をしていた。これで最後!と思ったら後ろにまだ残っていて、それを片付けると、また後ろにあり、永遠と仕事が終わらない。そんな悪夢だった。


 私は相変わらず動けず、少し浮いたその場でそれを見守っている。


 あ、やっと後ろの箱が無くなったように見える! すると、あろうことか、積み上げた箱が一切に崩れ、一番最初の状態に戻ったようだった。


 何て気の毒な。

 今回は長い。時間が過ぎ去っていくのに、状況が変わらない。あの不思議な幼児も現れない。


 座布団の上にいるのも飽きてきて、座布団をどかそうとしたら、なんと地上に落っこちた。痛くはなかったけど、どうして良いか判らず、その場で呆然としていた。


「あれ?動けたの?」

 声のした方を振り返ると、あの幼児が話しかけていた。

「あ、えーと、座布団をどかしたら、落ちたのよー」

「なあーんだ。動ける訳じゃないのか」


 そう言うと、途中まで詰み上がっている箱めがけて突進していき、この世界ごと暗転した。


「待ってぇ!」

 私の声は間に合わず、私は私の叫び声で目を覚ました。


「夢ちゃん大丈夫? 今、起こそうかと思っていたよ」

「蘭さん、私、何か言ってた?」

「うん、なんか、『落ちたのよ』とか『まってー!』って感じに叫んでいたよ」

「騒いでしまってごめんなさい。毎晩のように他人の悪夢と、不思議な幼児を見ていてね。その幼児が初めて話しかけてきたのよ」 


 私はありのままを伝えたのに、夫は物凄く心配そうな顔で聞いてきた。

「夢ちゃん、疲れてる? 何か辛い事とかある?」

「たぶん疲れていないし、辛いこともないわ。毎日幸せだし、不満もないわ」

 本当に思い当たらない。

「無理せず、相談するんだよ?」

「蘭さん、ありがとう」


 私は考えた。動けるかどうかがポイントであるなら、何か動ける物を用意しよう! 座布団を持ち込めたのなら、他の物も可能かもしれない。

 足にキャスターのついた椅子は、パソコンデスクの前にあるけど、寝室に持ち込んだらさすがに邪魔そう。何か良いものはないかな。



 今日も1日が終わり、そろそろ寝る時間になった。

 そして私は気がついた。靴! 毎回靴を履いていないから、歩けないのかもしれない。そうと決まれば、ベッドの脇にスニーカーと装着型ローラースケートを準備してみた。

 ベッドの脇を見た夫は、何も聞かずに布団に入っていた。もしかして理解してくれたのかしら?


 その時、夫の蘭は、夢ちゃんはローラースケート出来ないけど、夢でなら出来るのかな?と考えていた。



 座布団に座り、ローラースケートを履いた足をぶらつかせ、4~5mの空中に浮いているところから気がついた。

「よし!やったー!」

 これで移動できるはず!と、座布団から飛び降りると、足が大開脚をして、空中にべったりと座り込んでしまった。

「あ、私、ローラースケート乗れないんだった! 失敗したぁ」

 仕方なく、装着しているローラースケートをはずそうとしたけど、用意したのは装着型だったのに、夢の中のローラースケートは一体型のようで、頑張っても外れなかった。

 仕方なくジャンプして座布団に戻り、足をぶらぶらさせながら、色々作戦を考えていた。


 今日も誰かの夢だったのかもしれないけど、夢の情景を全く見ずに、1人考えをまとめていると、あの幼児の声が聞こえ、景色が暗転した。


 起きると、目覚ましが鳴る1分前だった。目覚まし時計を切り、お弁当を作り、朝食を作り、夫を送り出し、家の掃除をしたところで、良い案を思い付いた。


 ダイニングの床で、厚手の靴下を履いて滑る練習をしたらどうかしら? うん!良い案だわ!


 早速テーブルと椅子を片付け、冬用のモコモコ靴下を履いて、床を滑ってみた。少し助走をつけて、ツツーと滑る。

「うん、良い感じね! これでターンとか練習して、脚に筋肉でもつけば、きっとローラースケートも上手に滑れるはず!」


 ローラースケートそのものを練習すれば良いという案は出ないらしい。


 そこへ、忘れ物をしたらしい夫が帰ってきた。

「夢ちゃん、携帯電話を充電したままだったよー!」

「蘭さん、お帰りなさい」


 初夏なのに、真冬のモコモコ靴下を履いている妻が気になったらしい。

「夢ちゃん、何してるの?」

「ローラースケートの練習!」

 夢の中で、滑れなかったのかな?と、夫は少しだけ微笑ましく思った。しかし、格好がおかしい。

「家の中で、靴下で?」

「うん! 良い案でしょう?」

 これは、突っ込んだら負けだと、夫は気づいた。

「あ、うん、頑張って、ね?」

「蘭さん、これから会社にいくの?」

「今仕事中、移動中に家に寄ってもらったよ」

「そうなのね。お仕事頑張ってくださいね」

「ありがとう。夢ちゃんも、練習頑張ってね」

「はーい!」


 夫はバタバタと、電話を充電コードから抜き、再度出掛けていった。


 夏に真冬用の靴下は、とても暑い。汗をかいてきて、靴下が滑らなくなってきた。

「困ったわぁ。もっと良いものはないかしら?」

 とりあえず、洗濯と片付けをし、片付けの途中で次の案を思い付いた。


「靴下に、シールの台紙みたいなツルツルの滑る紙を貼ることが出来れば、そうだ普通の靴下に紙製のガムテープを貼ったら滑らないかしら?」

 ガムテープの幅だと足の裏をカバーしきれないので、少し考えて、底面の外側だけに貼るようにしてみた。小指の爪側から、踵の上まで貼ってある。ガムテープの端のわずかな接着力が影響しないように、両端をわずかに折り込んである。止まる時に、親指側に力をいれれば、そこにはガムテープが貼っていないからうまく止まれるはず。


 早速滑ると、モコモコ靴下よりも勢い良く滑り、履き替えた靴下は乾いたままのため、止まれず壁に激突した。

「痛ーい。親指にしっかり力をいれて止めている暇がなかったわぁ」

 ぶつかった拍子に、壁に立て掛けてあった折り畳みテーブルと折り畳み椅子が倒れ、結構な音が出た。



 ♪ピンポーン、ピンポーン♪

「夢ちゃん、大丈夫? 何があったの? 夢ちゃーん?」

 なんと、1階の義母が驚いて訪ねてきた。


「今行きます!」

 インターフォンに出ずに、そのまま玄関の扉を開け、義母を招き入れた。

「何があったの? 大丈夫なの?」

「お義母さん、ごめんなさい。ローラースケートの練習をしていたら、壁にぶつかって、壁に立て掛けておいた椅子と折り畳みテーブルが倒れました」

「練習? ローラースケートの? 家の中で?」

「はい。家の中でローラーシューズは履けないので、靴下にガムテープを貼って滑ってました」

 片足を持ち上げ、脚の裏を見せた。

「え。それで、滑るの?」

「はい。思ったよりも滑って、止まれずに椅子まで倒しました」

「そうなのね。怪我はないのよね?」

「はい!」

「なら、良かったわ。私帰るわね」

「ご心配ありがとうございました」

「怪我しないようにね」

「はーい」

 戸を閉めるまで心配そうな顔をしていたのに、戸を閉めたとたん、お義母さんのクスクス笑う声が聞こえた。


 笑われてしまった。でも怒られるよりは良いよね?


 その日、帰ってきた夫から、週末にアイススケートでもしに行かないかと誘われた。いきなりなぜだろうと思ったら、お義母さんから、たまにはアイススケートでもしに行くと良い。と、言われたらしい。理由は告げずにそれだけを言うなんて、お義母さんの神対応に感謝した。ま、結局、夫に問い詰められて、自分で昼間の件を話すここになったけど。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ