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007.疑念

 さてさて、記憶が戻り、記憶を本に整理している内に鑑定されに行ったりと地味に忙しかった。

 しかし鑑定の日から2日たった今日、やっとギフトも含めて記憶の整理ーー必要な記憶のメモの書き出しなどが終わった。


 日記をつけれる本をもらって、本と一体型の鍵までつけた記憶のメモ帳。

 空間魔法の詠唱が書かれているので俺の生命線でありトップシークレットでもある。

 なので小説で読んだ時に見た先駆者の知恵を借りて日本語で書いてます。

 いやはや、転生者の先輩方の知恵は流石ですね。


「……待てよ、これって読まれたら俺の頭がおかしくなったと思われるのかな」


 見た事もない文字が並びまくる本を、大事そうに厳重に扱ってる貴族子息。……父上から早速重複授与による欠陥が出たかと疑われそうだな。


 まぁいいや。その時は追放されてやろう。


 


 さて、やっと記憶が落ち着いて気付いた事がいくつかある。


「兄上、この後手合わせをお願いします!」


「お、いいぞ。でも慌てて食べるなよ、ちゃんと噛め。あ、それと炎熱付与はやめてね?焼き切られちゃうから」


 もう鍛えたくて仕方ないとばかりのレオンハルト9歳。

 普段から子犬っぽいが、最近は特に子犬っぽい。


「ルイお兄様、口調が……」


 無表情ながら伝わる呆れた雰囲気のローズマリー7歳。

 銀髪と紫の瞳を持つ人形ばりの整った顔立ちは今日もクールだ。


「うわぁ、私も見たいです!」


 そして末っ子。可愛らしい顔立ちを感情のままにコロコロ変える次女、フラムリリー7歳。

 レオンハルトや父上似の濃い金髪ーーはちみつ色の髪とローズマリーと似た紫の瞳。


「レオン、怪我をしないように。ルイ……も、気をつけて」


 3児の母とは思えないグラマラスな体型の妖艶な美人系の顔立ちを持つ後妻、現ダハーカ侯爵夫人のリーリエ。

 白い髪と、青い瞳。


「手合わせもいいが、家庭教師からの宿題はきちんとこなすように」


 若く見える訳ではないが、歳相応の威厳と端正な顔立ちを持つ父であり当主、ラスボーン侯爵。

 はちみつ色の髪と、赤い瞳。


「はい、終わらせてます」

「うっ、は、はい。必ず終わらせます」


 そして俺、唯一の前妻の子。

 黒髪と赤い瞳。


 まぁ色とりどりだこと。

 持ってる属性とかに影響されてんのかね。

 まぁ俺の場合は馴染みのある黒髪で良かったよ。金髪とかになったら澪に笑われるわ。


 それにしても、久しぶりに食卓で会話が生まれたな。


 というのも実はこの家族、なんか空気が固い。

 どこかよそよそしかったり距離があったりと……まぁ仲良しとは言えない感じ。

 それに、たまーに義母リーリエが俺を険しい目で見てる気がするんだよな。


 なんだろうね、貴族ってこんな感じなんだろうか。

 まぁ出ていく予定の俺にはあまり関係ないけどさ。






「はっ、ふっ!やぁっ!」


「だらっしゃぁああい!」


 華麗に剣を捌くレオンハルトに、力任せに剣を叩きつけて隙を作る俺。

 この歳の数ヶ月差という地味に馬鹿にできない身体能力の差をフルに活かした大人気ない戦法ともいう。


「うわっ、し、しびれたぁ……!」


「え、マジかごめん。大丈夫か?休憩にしよっか」


 珍しく観客として見に来てる、きゃっきゃと楽しそうに笑うフラムリリーと、しらっとした視線で俺を見据えるローズマリー。

 あとは全員の専属侍女や専属執事もいるけど、創作に出るような忠義全開といった人種ではなく、職務に忠実なドライなタイプ。

 この人達はそこまで干渉してこないから、大人気ない俺を咎めたりもしない。


 とりあえず休憩だと妹2人の方へレオンハルトの背中を柔らかく押していく。

 

「ルイお兄様……さすがにそれはちょっと」


「ルイ兄様、かっこよかった!」


 ローズマリーが「え、あれがですか?」とフラムリリーの方に振り向いたりしてるが、構わず笑顔で「だろ!」と押し切ってやった。

 とは言え大人気ない自覚はあるので、むぅと口を尖らせるレオンハルトの背中を軽く叩く。

 

「まぁ実際のとこレオンの方が腕は上だよ。俺のはまぁ、うん、卑怯な戦法でしたごめんなさい」


「あ、兄上……!」


「えーそーなのー?」


「そーなのー。覚えておくんだよリリー。戦いはね、勝った方が偉いんだ。つまりレオンより俺のが偉い」


「兄上っ?!」


「あははっ、ルイ兄様えらーい!」


「はぁ……リリーの教育に良くない…」


 双子なのに母みたいな呟きのローズマリー。

 目を剥くレオンハルトに冗談冗談と笑って頭を撫でておく。

 

 そしてそっと視線だけ動かしてみると、少し離れた場所でリーリエがこちらを見ていた。

 そしてそこに宿る、険しさの含む目。


「……」


「? 兄上?」


「ん?おお、どした?」


「いえ、さっきの技はどうやるんですか?」


「技……というか、ただ思い切りフルスイングしたというか」


 視線を戻して真面目な発言をするレオンハルトに答えながら、頭の片隅で思考する。

 うん、勘違いじゃない。


 あのリーリエが険しい目をする時の先にあるのは、俺とローズマリーだった。






 記憶の整理をしてる間に、家令の空いた時間をもらって書庫にある本の案内をしてもらっていた。

 そしてたまに訪れて色々赴くまま眺めていたが、今日は狙って探したい情報がある。


 この世界にあるかは分からないけど、遺伝についてだ。


 リーリエが俺を睨んでるだけなら分かる。若干腹立つけど。

 唯一血が繋がってないし、もし血の繋がった息子ーーレオンハルトを当主に据えたいなら俺は邪魔だろう。


 だがローズマリーが分からない。

 血の繋がった娘のはずだし、フラムリリーとは双子だと聞いている。

 それなのに何故ローズマリーにあんな目を向けるのか。しかも双子のフラムリリーにはそんな目は向けてないように見える。


 パッと思いつく違いは三弟妹で唯一髪色が違う事。

 ただ断言するにはあまりにも弱い気もする。なので、有用な情報がないか調べに来た。


「まぁ科学技術より魔術が進んでるこの世界に遺伝の概念があるかは分からないけど……」


 ぼやきながら探していくと、ひとつの書物が目についた。


「『髪色と瞳の色による性質判断!』……いや血液型占いかよ」


 ……父上、これ買ったのかな。絵面を想像したら面白いけど、外交の時に参考にしてるならちょっと不安になる。


 まぁ一応、と開いてみると……存外面白い。

 くそぅ、俺も朝の占いで良い順位だとテンション上がってたもんなぁ。

 へー、とかほー、とか言って読んでいくと、とある一文に目を引かれた。


「髪か瞳のどちらかにギフトを表す色が出る……か」


 んー、俺もそう思ったけどさ。アテになるのかこれ?なんせ占いレベルの本よこれ。


 父上は風魔法の一端のギフトを持つけど、はちみつ色の髪と赤い瞳だし。関係ないよなぁ。

 俺のは空間魔法……あぁ、宇宙っぽい黒髪とか?いやこじつけが過ぎるか。


 だが、もしこれが絶対正解とは言わないまでも、『そういう例もある』程度に正解だとしたら。

 ローズマリーは銀色に関するギフト持ちの可能性が高いって事かな?唯一家族の中で違う色合いはそこだし。


 てかリーリエのギフトって何だろ。

 ギフトの詐称は重罪だし、特に貴族なんかは名鑑に載せなくちゃいけない。

 ただ王家直々の管理だから他人が勝手に見る事出来ないのだ。まぁぶっちゃけリーリエのギフトとか興味ないし別にいい。


 それよりも。


「……もしも、だ」


 もしも、ローズマリーだけ血縁じゃなかったとしたら?

 双子というのは嘘で、何かしらの理由でそう偽らないといけなかった?


 ……ハッ、くだらね。

 どんな理由だよ、ありえないって。考えすぎだ。


 それに本当の家族であっても仲が悪い事もあるし。

 いやそれはそれで辛いけど、変な疑い方をするよりはまともな思考だろう。


 ……ただ、ローズマリーの妙に人を避ける雰囲気も気になりはする。

 今日の手合わせだって、実は割と無理矢理俺が連れてったし。いやリーリエの視線の確認をしたかったからって理由もあったけど、妙に距離をとりたがる。


「うーむ……」


 あーやだやだ。スッキリしねぇなぁ。

 澪ちゃんや、俺は君が恋しいよ。


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