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065.討伐が終わって

 日差しが角度をつけて照らす朝。

 差し込む光に照らされる中、金の髪と瞳を持つ美少女が憂いに満ちた顔でベッドに横たわる少年を見ている。


「……もう3日。もうこのまま目を覚さないのかな…」


「いやクルルさん?これ何の小芝居かな?てか不謹慎だろおい」


 俺はほぼ無傷でアジ・ダハーカを討伐する事に成功。

 そんな快挙から立て続けに、シヴァ様との手合わせという名の死闘にて全身ボロボロ。特に左腕なんか千切れかけたわ。


 結果、一気に完全治癒すると反動で下手したら死ぬレベルのダメージだった事もあり、最低限の治癒を受けてから2日眠り続けた。

 そして昨日の夕方に目を覚まして、軽く話した後すぐ寝て、また今起きたら妙な小芝居してるクルルさんがいた。


「……すごい血塗れだったから、また『血塗れの狂獣』が暴れたってギルドは盛り上がってた」


「うぐぅ……マジで改名とか受け付けてないのかな?どこの窓口で変えれるんだろ」


 まず市役所的なとこあるのかなこの王国。


「……心配した」


「いやまぁ、敵にはほぼ無傷で勝ったんだけどね。一撃もらったけど戦闘中に自己治癒したし」


 ただその後に地上最強様がね。

 なんか途中からノリノリだったしさ。何回か三途の川見えたよ。


「……シヴァ様、反省してた」


「え、それマジ?」


 なにそれ超見たい。あの超越者様がしょんぼりしてるの見たい。


「……マジ。でもお酒飲んだらいつも通り」


「あーボーナスタイム終わってたかー。見てみたかったわくそぉ」


「……バカな事言ってないで、早く治す。『ヒール』」


「あぁぁああ……極楽ぅ」


 寒さで冷え切った体で温泉に入ったような、なんとも安心する感覚。

 シヴァ様ではこうはならないのに、何故かクルルの治癒魔法って心地良いんだよなぁ。


「……ふふ、私の愛情が入ってる。感謝せぃ」


「ははー、ありがたき幸せ。……っと、そういえば寝てる間に問題とか起きたりしてない?」


 とりあえずテンプレの対応をしてから、気になることを聞く。

 すると、クルルは微かに首を傾げた。


「……問題、かな?勇者がパーティ組んでA級魔物に勝ったらしい」


「ほー、やるじゃんか。早いな」


「……でもパーティメンバー、全員A級」


「あー……それは褒めていいか分からないパターンだな」


 勇者何もしなくても勝てる場合もあるし。


「……あとは、魔王軍の尖兵が1人で『ラクサス・イクリプス』に単独で攻めてきた」


「大事ぉおお!マジで?怪我してる人いない?!」


「……無事。たまたまお見舞いにシヴァ様が来てた」


「あ、うん」


 一瞬で心配が消えたわ。


「……シヴァ様、殺す気はないからって言って、転移で送り返した」


「あー、シヴァ様らしいなそれ」


「……ただ、狙いはルイだったし、『我の責任だからしばらく来れぬようにさせてもらう』って言って四肢全て落としてた」


「お、おぉ……俺の左腕のトラウマが…」


 落とされはしなかったけどね。思い出したくない程度にはボロボロにされた。


「……あとは、みんな平和。あと、ルイの持ってる『王』級ドラゴンの肉、みんな楽しみにしてる」


「みんな肉好きすぎじゃない……?実は俺の心配より肉の心配してるだろ」


 最近お願いして、シヴァ様特製マジックバッグの方は俺しか開けれない設定にしてもらった。

 割と貴重品も増えてきたから、防犯意識ってやつよ。

 しかしその結果、俺が死んだらそのまま死蔵してしまう物もたくさんある訳で。


「……それとこれとは、別」


「まぁうん、俺もシヴァ様相手に殺される事はないとは思ってるけどね。あの人基本優しいし」


 シヴァ様は叱る優しさがある。

 ただなぁなぁに肯定するのではなく、時に厳しくする事が相手の為になると理解し、それを実行に移してくれる。

 それは意外と得難い存在だったりするのだ。


「……どう?動くくらいは出来る?」


「んー…………よし。大丈夫そうだ、普通に生活するくらいはいける」


 まだ痛む上に戦闘は無理だけどね。全身傷が開くわ。


「……じゃ、ドラゴン肉でバーベキュー」


「おう、俺も実は楽しみにしてたんだよ!」


 なんたって『王』級だしな!さぞ美味いだろう。






「う、うめぇええ!」


 その晩、全員でアジ・ダハーカの肉をバーベキューして食べた。

 例えが思いつかないくらいには美味かった。あれらしいね、魔力が豊富な肉は単純な味覚以外でも美味いと感じるとかなんとか。


「……何故我の家の前でやるのじゃ?」


 ちなみに場所は黒の森の拠点。

 そして俺の家ではなく、シヴァ様の家の前。


「そりゃシヴァ様がやりすぎたせいで肉食うのが遅くなったからなー。せめて焼き台くらいは提供してもらわないとなぁー」


「う、うむ……許可しよう。その、すまぬ、ここ数百年はない手応えについ楽しくなってしもうた」


 おぉおおお!しょんぼりシヴァ様だ!俺も見れた!これはレア!

 しかしアレだな、こんな美少女のナリで慎ましくされるとただの美少女だなこれ。横柄さが抜けるとこんなに見た目が際立つのかこの人。


「許ーす!じゃこれで話はおしまいとして、アジ・ダハーカの内臓って食えると思います?ハツとか割と好きなんどけど、一応毒持ちなんでしょアイツ」


 毒まともに使う前に倒したけどね。ちなみに毒は牙に穴があって、噛まれたらそこから流し込むという形だったらしい。

 ちなみに心臓は大半が結晶化して魔石になってるから、食べれるところは少ない。


「……ふ、そうか、ありがとの。それと、心臓は問題ないぞ。気をつけるのは首から先くらいのようじゃしの」


 ふわりと微笑み、置いてたハツに指を向けて。


「ほれ、食うが良い」


 ビッ、と鋭く炎が煌めき、一瞬で程よく焼いてくれた。

 いやいや何をした?という質問はしない。聞いてもどうせ一生使えないレベルの難易度なんだろう。


「むむ、これは……美味いッ!」


「ルイ君、私もそれ食べたーい!」


 そのシンシアさんをきっかけに、結局全メンバーに配ったらすぐ無くなった。

 それから満腹まで食べて、それでも余る肉。お裾分けして少しでも減らそう。じゃないと何年分の肉だって量が残ってるし。







 それから体調も回復して、リハビリにいくつか依頼をクランメンバーと受けた。


 そして今日、シヴァ様に約束の無人島に連れてきてもらった。

 そう広くない精々野球場程度の海に囲まれた島だ。

 少し長細い形をした島で、緩い傾斜になっており、片方は高さもあって切り立った崖になっており、反対側は砂浜になっている。

 木々もパラパラあるがほぼ草原となっていて、花はほとんどないからパッと見だと緑一色だ。海も綺麗で良い景色である。


 うん、長閑な雰囲気が良い感じだ!


「っしゃ、気合い入れて別荘作りますか!」


「うむ、やってやろうかの」


 無人島に転移のマーキングとして俺の魔力を込めた魔法陣を刻んでおいて、作業開始。


 そしていざ始めてみると実感する、自分の魔力の扱いやすさや身体能力の上がり具合。

 

「……これなら黒の森の時より数倍早く完成しそうだわ」


「だろうの。なんせルイ坊はもう超越者一歩手前じゃ」


 あのシヴァ様との死闘は無駄ではなかったと分かる。

 明らかにアジ・ダハーカの戦いよりも強くなってるし、それをきちんと扱えていると自覚できる。


「こうなったら家を建ててみたRTAでもするかな」


「あーる……? まぁ好きにせえ」


 意味は分からないのにこくりと頷くシヴァ様。そういう適当なとこ嫌いじゃない。

 さてやるか。黒の森の秘密基地よりは小さくする予定だし、意外と早く終わると思うんだよね。何よりシヴァ様も手伝ってくれるし。


 それから別荘が完成してたのはざっくり60時間後だった。なんと不眠不休である……この体、睡眠時間も少なくていいのね。


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