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055.別荘計画

 その後、魔王軍の動きが鈍ったと聞いた。

 おそらく突然消滅したゴルドスの軍の事もあって警戒しているのではないかと言われた。


 それと王国の方からも感謝状が届いていた。

 シンシアさんいわく、ロイロ総帥は大人しくしており、もう『イクリプス』に無茶はそうそう言わないだろうとの事。

 ……予想が正しければ、裏でシンシアさんが何かしら手を回してるな。

 流石にこんなに上手くいく訳がないし。


「はぁ、なるほど。てか国家の中枢まで情報網が伸びてるんすね……」


 当然、これら全ての情報はシンシアさんからです。

 ニッコニコに笑うシンシアさんから報告を聞き、マジで言う通りになったと乾いた笑いが出た。


 そしてこれは噂程度だけど、と前置きして聞いた情報だ。


『実はさー、王国が『勇者』と『聖女』を探してるんだって。ちなみにローズマリーちゃんはスルーされてるわよ。ギフトから見捨てられた子なんか興味ないみたい』


 ほんと、なんで人を見下す人って視野が狭いんだろうね。






「って感じらしいよ。あ、ちなみに魔王軍幹部は意外とあっさり勝てた」


「ふむ、そうか。まぁゴルドスとやらは子爵級程度だったしの。今更お主の敵ではなかろ」


 今は黒の森でシヴァ様に報告がてら作業中。

 何の作業かといえば、勿論秘密基地の作成作業だ。


 くっくっく、ヴェハハハハハァ!!この半年で、ようやく『空間接続』『空間透過』を覚えたのだ!いやもうすっっごい苦労した!もう覚えた時の達成感たるや!


「って子爵級って何?」


「む?ちと古い言い方だったかの?しかしだからといって我が年寄りみたいな視線はやめい」


「いやしてないしてない、何その雑な絡み方。もしかして暇だった?」


「うむ……最近依頼ばかりでここに来ないからな。ちと遊んでみた」


 とまぁ他愛もない話をしつつ聞いてみると、子爵級とは現代で言うS級の中の階級らしい。


「そも、『王』級があるのにその下がないのはおかしかろ」


「や、なんか特別強いんだろうなぁくらいにしか気にならんかったわ」


「はっ、雑じゃのぉ。まぁ『王』級が特別なのは間違っておらぬがな。魂の壁をひとつ越えたのが『王』級じゃしの」


 いわく、ギリS級の男爵級から『王』を除いて最強の公爵級。つまりS級の中の階級らしい。

 そして途方もない時間と戦いによって極稀に魂の限界を超えて、生物としての格を昇華させた個体が『王』級なんだとさ。


「へー。ちなみに騎士爵とかはないの?」


「そこまで細かく分類するのが面倒だったんじゃないかの?そもこの分類を考えたのが過去の大国におった軍職の者じゃしの」


「へー。てかS級を細かく分類しなきゃいけないってなかなかハードな時代だな」


 それってつまりS級をそこまで分析するくらい戦ってたって事じゃん。

 S級、と雑にくくって匙を放り投げてる現代よりは苦労したんだろうな。


「まぁの。とはいえその理由は単純じゃ、魔王の軍勢との戦いが長期化したからよ」


 当時魔王軍にはちょくちょくS級が混じってて、その中でも危険度の差がありすぎた為にランク分けをして危険度を分類したのだそう。そうして適正な戦力の分配の目安を作ったんだとか。


「大変だったんだなぁ。いや現代も同じことになるかも知れないけどさ」


「他人事に言うが、長期化するかは割とルイ坊次第じゃぞ?ローズマリーだけでは勝てぬし、シンシアやクルル、『守護星』とやらの戦力を合算して拮抗するといったところじゃろ」


「つまり俺が加勢したら均衡を崩して有利になるって?」


「だの。早い話、その気になれば魔王の元に飛んで、魔王を討てば良い。そうすれば残党狩りくらいはお主抜きでも問題ないわ」


 いやぁ、いくらなんでもそれは無理じゃないですかね?敵さんの軍勢の最奥に飛ぶとか、魔王と戦ってる内に敵が集まって袋叩きにされるわ。


「てか今更だけど、魔王って『王』級とはいえ魔物だよね?ベヒモウスとかと違って軍とか組織するのね」


「知性ある魔物だしの。特に魔王は積極的に人と戦う好戦的な習性があるし、そうなれば徒党を組むくらいの策は弄する。ベヒモウスは……まぁ、特例と思え」


 ん?ベヒモウスに関して濁されたな。

 ふーむ、超越者のオッサンが言ってた「眠らせてやれ」ってとこも関係してるのかね。


 なんて小話をしつつ、魔力がキツくなってきたので休憩。だいぶ作業が進んできたぜぃ。


「お、休憩かの。お茶とおやつを用意せえ」


「ずっと座って見てるだけのシヴァ様じゃなくて俺がするのね。へいへいお待ち下さいませ」


 この人割と横着な性格してるからなぁ。まぁ長い年月を生きた超越者だしそんなもんだと割り切ってるけど。


「それにしてもだいぶ進んだの」


 俺がお茶やらを準備しているのを他所に、シヴァ様は秘密基地を見て呟く。


「おかげさまで。……てか今更思ったんだけど、シヴァ様ただの木製の家によくそこまで魔法を付与出来たよな。普通壊れるでしょ」


「そこは我の魔力を染み込ませた木じゃからの。そこらの素材よりは丈夫になっておる」


「え、は?!そんな技あんの?!それ教えてくれたらベヒモウスの素材とか要らなかったじゃん!」


「あほう、そんな簡単に出来る技術ではないわ。物体の持つ性質に合わせて微調整した魔力波長と、他者の魔力を弾く魔力性質が出ないよう絶妙なバランスで時間をかけて注ぐ集中力と魔力操作が必要での。我でも苦労する代物じゃぞ」


「え、シヴァ様が苦労……?んじゃ無理か」


 なんそれ考えたくもないレベルじゃん。はいはい解散。


「それよりもそろそろ家自体は完成じゃろう?家具やらも自作するのかの?」


「んー、既製品でも使い勝手が良いヤツは買うかな。こだわりたいのだけ作る」


 ベッドとか棚とかは別に買えばいいけど、シヴァ様の家にも作ったコンロとかは自作する。

 あとは水道関係とかも魔術具と現代知識使って自作しよっかな。井戸から汲み上げるのも魔法で水を生むのもしんどいし。


「そうか。完成したらお邪魔しに行くとしよう」


「おー、ぜひお越しくださいよお隣さん」


 ログハウスの隣に建てている秘密基地こと俺の拠点。

 柱はベヒモウスの骨を利用し、壁は毛皮と骨を錬金術で混ぜて作った。

 めちゃくちゃ頑丈な上に大量の付与にも耐えられる特製の家だ。


 しかも毛皮を使ったからか、魔力を弾く性質も多少付与されてるので下手な魔法なら傷ひとつつかない。

 骨を使ってるから色は白くて、しかし骨っぽさが無いように石材っぽく錬金で加工してるからほんのり城っぽい風情が出た。


 まぁ外観は城どころか現代家屋のイメージにする予定だけどね。まだ一階部分しか作ってないけど、二階建てにする予定だし。

 ふっふっふ、部屋もいくつか作って、お客さんを呼べるようにするのだよ。リビングにあたる部屋は広めに作って、友達呼んでパーティとかしてみたい。


 とか考えていざ一階部分を作り終えたら、多分この秘密基地でベヒモウスの素材はほぼ使い切りそうだと気付いた。

 それをシヴァ様に話すと、当たり前じゃろと呆れられたが。


 いやいや間取りやらなんかはシヴァ様と一緒に考えたんだけどね?

 やれ友人達と集まる部屋はいるじゃろとか、ならば寝泊まりする部屋はたくさんいるじゃろとか……あれ、むしろシヴァ様が積極的に素材使わせにきてない?


 いーじゃんそれ!とノリノリで設計図作ったけど、そりゃ素材も減るのは当然だよ。

 つまりシヴァ様も呆れられる立場じゃないだろっての。


「完成はこのペースだとあと半年もかからんの」


「そんなとこかな。家具に凝ればもうちょい伸びるかもだけど、家だけなら3ヶ月もかからないんじゃない?」


 ちなみに秘密基地作成だけに時間を費やせばもっと早い。 

 けど依頼だったりでデリンジャに行き来してるからそれくらいになるかな、って感じ。


「ふむ。うむうむ、楽しみじゃの。前にルイ坊が言っておったお隣さんには粗品を持ってく風習を真似て、我も何か用意しておこうかの」


「おっ、楽しみにしとくよシヴァ様。でも粗品だからね、あんま力入れたもんじゃなくていいよ?」


「分かっておる。まぁ我とお主らの感覚は違うかも知れぬがな」


 それやべーもんくれるフラグじゃん。

 まぁ害になる物なんかは渡さないだろうし、シヴァ様の好きにしてもらうけどさ。どうせ言っても聞かねえし。


「あ、そーいやひとつ考えてる事あってさ。シヴァ様ってどこかに無人島があるとか知ってたりしない?」


「……む?もしや第二拠点を作る気かの?」


「え、なんで睨むの。てか違うって。……いやアリだな、それアリだわ」


 言われて気付いたけど条件ばっちりじゃん。それ採用。


「ふん、知らぬ。無人島なんて知らぬわ」


「あ!今の絶対嘘じゃん!てか聞いてくれってばシヴァ様。その無人島にマーキングしとくじゃん?そんで空間接続を錬金付与した魔法具作るじゃん?そしたらいつでも海に行き来して海鮮が食える訳よ!どう?!」


「ほう!それは確かに名案だの!この前の酒蒸しとやら、色々な貝を使えばより味が複雑に美味くなると言っておったの?それを作れい!」


「だろだろ?!酒蒸しどころか刺身も寄せ鍋も色々作れるしな!」


 そんな話をきゃっきゃと盛り上がって話していると、シヴァ様はうむうむと納得したように頷いた。


「ふむ、であれば教えてーーいや探しておいてやろう」


「ありがとシヴァ様!俺が海まで行って無人島探してってなると年単位でも無理そうだしさ、助かるよ」


 なんせここ内陸部だし、空を移動するといっても『天盾』を使う擬似的なものだから魔力が絶対的に不足する。

 所詮一個人の俺にできるレベルじゃないんだよ、世界探索なんて。超越者のシヴァ様サマサマである。


「でもやっぱ第二拠点はアリだなぁ。海辺の別荘ってなんか憧れるし」


「む?まだ言うかの。というかベヒモウスの素材はもうなかろう」


「それシヴァ様も同罪だからな?いやまぁ無人島ならそこまで頑丈にしなくてもいいし、あくまで別荘だよ。まぁ緊急避難先ではあるけど、基本は遊びに行く時の宿感覚的なさ」


 地球で土地の所有権やらでそんな真似出来ないけど、こっちは未開の地がたくさんあるからね。そういう意味では異世界万歳だわ。


「つーかさ、シヴァ様の別荘も建てて無人島でもお隣さんにしよう!それで別荘の前で共同バーベキューの設備とか作ってさー」


「ほほう。……ふぅむ、まぁ一日程度なら離れてもいいかの」


「……あー、シヴァ様ってここにいなきゃダメな理由があるのか?今更だけどそのへん聞いてなかったな」


 頑なにここを離れないしね。

 実はデリンジャや王都にも遊びに誘ったりはしたんだけど、完全拒否だし。

 ベヒモウス戦の時くらいよ、離れたの。


「まぁの。だが理由を言うつもりはない」


「だと思ったよ、だから聞かなかったんだし。まぁ一日だけでも離れられるなら息抜きになるし、やっぱシヴァ様の別荘作りもアリじゃない?」


「そう、だの。……ふふ、やはりルイ坊とおると良い暇潰しになるの」


 暇潰して。まぁ寿命ないシヴァ様からしたらそんな扱いにもなるだろうけど。

 

「まぁ我の別荘となればそれなりの物を……いや待てルイ坊。普通にお主の別荘とやらに我も泊まれば良いのではないかの?」


「あっ、それもそーだな。だはははっ!でもそうなると超越者様が泊まる別荘かぁ。適当な造りでいいかと思ってたけど、それならちょっと豪勢な感じがいいかな?」


「当然じゃろ、我は寝心地にはうるさいぞ。……だがまぁ、我とお主の別荘になるんだしの、我も力を貸そう」


 おぉお?!めっずらしー!


「マジで?なんか俺の全力よりもすげぇのが出来そうだなそれ」


「当然だの……と言いたいが、そこは役割分担するのも面白そうじゃの。例えばルイ坊が集めた素材のレベルに合わせて我が魔法を付与するとかの」


「あー、俺の集めた素材次第で豪華な付与になるってパターンね。ふーん、いいねそれ、そういう感じだと素材集めもテンション上がりそうだわ」


 なんかゲームみたいなノリだし、報酬の魔法付与は間違いなく超一流な訳だしね。


「では海辺となるとやはりリヴァイアスかの?」


「ストップストーーップ!無茶振りやめて?あれは人間が相手しちゃダメでしょ」


「かっかっか!まぁそうだの、我でもあやつは骨が折れる。ではそうじゃのーー」


 などと無茶振りやら冗談やらを交えながら色々話したりして、いつか無人島で海辺の別荘を作る事になった。

 やっぱ釣竿とかも作りたいしね、久しぶりに釣りとかしたい。


 やば、楽しみになってきた!もう魔王軍とかどうでもいいや!


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