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054.魔王軍

 それから秘密基地作成の為の魔法訓練と、おまけでちまちま魔本作成をする日々を過ごした。

 本は結局作るのかって?やり出して放置するのも気持ち悪いし、やっぱ『魔本』ってかっこいいしね。


 黒の森ではシヴァ様に訓練を見てもらったり食事をふるまったりした。

 デリンジャでは『イクリプス』として依頼をこなしたり、時に『魔撃の射手』や『魔剣の乙女』と合同で依頼を受けることもあった。

 そして時折だが王都にいるローズマリーの訓練相手として、誰にもバレないように空間転移で行き来したりもした。


 そうして半年が過ぎて俺が17歳を過ぎた頃。



 魔王が復活した。







「……依頼、来てるね」


「だなぁ。まぁ受けるしかないのかねぇ」


 S級パーティ『イクリプス』への指名依頼。

 内容は魔王軍の将、ゴルドスの討伐依頼である。


「けどこれさぁ……俺達のパーティ単体で対応しろとか、もしかしてイジメ?」


「……イジメ、ダメ、絶対」


 だよなぁ。くっそぉ、王様とはそこまで悪い関係じゃないと思ってたのに……。


「あー、その依頼人ってロイロ総帥じゃない?イクリプスの事嫌いみたいだし」


 いやらしいよねぇ、と面倒そうに指摘するのは毎度よろしく我らが頭脳、シンシアさんだ。

 今俺たちは冒険者ギルドにいるのだが、たまにこうして鉢合ったりする。

 そして今日は、指名依頼の話を興味津々で混じって聞いていた訳だ。


「ロイロ総帥?っすか?」


「そ。軍部のトップについてる、武官を多く輩出するロールテール侯爵の当主ね。といってもブルーリッジ騎士団長と違って完全な後方から指示するタイプで、自分の利益を重視する傾向にあるわね。まぁ目立つ功績を持っていくイクリプスが目の上のたんこぶなんでしょうよ」


「……別に功績なんていらない」


「だなぁ。いらんもん押し付けられていらん因縁もらうとかタチ悪すぎませんかね」


 そして今回に至っては遠回しに戦死しろって言ってるようなもんじゃん。

 うーむ、どうしたもんかね。


「……シヴァ様にお願いしてみる?」


「いや、絶対拒否するからいいや。まぁ念の為にベヒモウス戦で使った爆撃作戦用の火薬は補充したし、やり方次第ではいけるか……?」


「……魔王軍の数は1500人いるらしいけど」


「ぶっちゃけいくらいようと後ろにクルルがいるならいける気がする……楽観視しすぎなんかな?でも不思議とそんな気がするんだよな」


 我ながら不思議だけどね。勘というべきか直感というべきか、そんな感じのヤツがそう言ってるんだよ。


 ちなみに魔力があるこの世界、個体差がありすぎてリアル一騎当千とかもあり得たりする。

 現に『護国卿』グレゴリーはかつてモンスターパレードを一人で蹴散らしたなんて逸話もあるし。


「……そう言ってくれるのは嬉しいけど、どうだろ」


「な、そう思うよな。俺も理性じゃそう考えてるんだけど、何故かいける気がするんだよ」


 と、クルルと顔を見合わせて2人して首を傾げてると、シンシアさんがふぅん、と微笑み、


「そう、ならそれでいってみましょうか」


 と楽しげに仰られた。


「わお、何を仰ってるので?シンシア様ともあろうお方がそのようなことを」


「何よその口調はー?いや、もしかしたらルイ君の『超感覚』の影響かなーと思ってさぁ?」


 にこにこと笑うシンシアさんは、その邪気すら感じさせない笑顔とは裏腹に黒さの滲む内容をツラツラと続ける。


「それにもし2人だけで撃破してもみなさい?ロイロ総帥なんてもうやっかむことすら出来なくなるわよ」


「えー、そうっすかね?また次もいけるだろってなりません?」


「可能性はゼロではないけど、今回だって恐らく周りには止めようとした者もいるはずよ。それこそ守護星ルークあたりとかね。

 そんな人達が、次からは『貴重な戦力なのは証明されたから、そんな使い捨てるような作戦は認められない』って止める材料になると思うの」


「お、おぉ、なるほど?」


「ええ。要は『使い捨て派』が今回は押し切ったのを、次からは『貴重な戦力として扱う派』が押し切られように力を見せるの」


 はー、そんな上手くいくもんかね?「やっぱり大丈夫だしどんどん使ってこうよ」ってなる気もするけど。

 まぁシンシアさんがいうなら俺の推測なんかよりも信頼できるんだけどさ。


「ま、他ならぬシンシアさんの言う事だしね。それなら試してみよっか」


 加えて言うなら、別に次も使い捨てるような指名依頼があっても実際問題ない。

 最悪他の国にさよならして、澪がくる時期に顔を出すようにするすればいいだけだ。


「んふふ、なぁにそれ?可愛い事言ってくれるじゃない」


「可愛いも何も、自分含めた中でも俺が知る人の中で一番信頼できる司令塔ですしね」


 ならば他の誰に従えというのか。下手に他の意見に従うより正解だと分かってるというのに。


「んんっ……君、言うようになったわね」


「え、ちょっ、何でそこで睨むんですか?」


 口ごもるようにように言葉を詰まらせて睨むシンシアさんに慌てる。

 え、待って?今これ以上なく褒めたよね俺。


「……はぁ、全く。貴方の妹さんが来たら、一度生い立ちを聞いてみたいものだわ」


「はぁ……超絶つまらない話しか出てきませんけどね?まぁとにかく、そのゴルドスとかいうヤツをしばいてきたらいいんすね」


「……千切りまくったる」


「ええ。ちなみにどうやら力自慢の軍勢らしくて、魔術に関しては拙いみたいよ。その代わり、どいつもオーガ種ばりのパワータイプ。ゴルドス自身もそのタイプね」


「了解っす、ばっちり俺の得意分野っすね。……いやほんとどこから情報集めてんだこの人」


「んふふ、君の信頼に応えるために司令塔としては情報は必須だからねー?」


 クスクスと笑ってはぐらかされた。……どうやって情報集めてるんだろ。


「っし、それなら行くかぁ。……ククク、ベヒモウスん時みたいに初手爆撃で一気に削ってやろ」


「……悪い笑い方」


「どっちが魔王軍かって話よねー。ほんとえげつない作戦考えたものよ」


 そう呆れたように言う2人だが、その後シンシアさんが「クルルちゃんは爆撃に合わせて出来るだけ土の壁でも作って相手を覆ってやりなさい?衝撃が逃げないからダメージが増すはずよ」とか、よく人の事言えたなって悪辣な作戦を伝えてたりしてた。


 ともあれ、そんな感じで依頼を受けて。


「だぁっははははははは!!大成功じゃぁい!!」


「……これがルイ自慢の初手爆撃…」



「ぬぅ、貴様が先程の闇討ちの犯人かぁ!しかしあんな攻撃した後では魔力も残っておるまい、覚悟せぇ!」


「っしゃかかってこいや!『流喰』ゥ!」



「ゴルドス様があの男を仕留めてる間に、俺達はあのチビを狙うぞ!」


「……『昇星』『昇星』『昇星』……まとめて潰れて。『堕星』」


 とまぁ、初手爆撃で半数近く削り、敵の大将は初見殺しである触れた者を空間ごと引きちぎる『流喰』で仕留めた。

 クルルにいたってはデカい岩を敵ごと地面から打ち上げまくったと思ったら、その岩ごと戦場に降らせて残兵を潰しまくってた。殲滅力がやばい。

 

 それから向かってくる残党をひたすらノクテムでしばき、たまに『空衝咆』で直線上に薙ぎ倒したりして倒した。

 トップはともかく、一般兵は黒の森の魔物より平均値は下っぽいし、ベヒモウスとの高速戦闘に比べたらこのレベルの乱戦なんて全然マシだしね。






「あっははは!すごーい、早すぎじゃない?」


「いぇーい、無事達成っす!いやー案外やれるもんだな、クルル!」


「……いぇい。ん、シヴァ様との手合わせに比べたら楽勝」


 と、なんと往復含めて1日で依頼達成。

 いや往路はシヴァ様が転移で送ってくれたんだけどね?あとはマーキングしてるから俺でも帰ってこれるし。

 今はギルドに報告に来ている。


「いやぁ、シヴァ様に敵の上空に転移してくれってお願いしたのが通って良かったですわ」


 人の歴史にも関わる戦いだし、こういう肩入れみたいなのはしてくれないと思ってたんだけどな。意外とあっさり頷いてくれた。


「いや、そりゃそーよ。だって肩入れどころかそれ、普通ならファンキーな自殺みたいなものよ?」


「……ん、私も最初聞いた時は耳と頭を疑った」


 あー、なるほど。そこらへんを考慮した結果お許しが出たって事か。

 ちなみに俺とクルルは爆撃が収まるまで上空で『天盾』の上に乗って待機してました。


「いきなり上空に現れて爆撃してくる敵かぁ……」


「……威力も、最上級広域火魔術くらいはあった」


「あっははは、司令塔としてはぜぇったい相手したくないわねー」


 ケラケラ笑うシンシアさんに、クルルと何故か集まってたギルド内の冒険者がうんうんと頷いていた。

 おお?と驚いて周りを見渡すと、さも新種の魔物を見るような目で俺を見ている。


「さすがは狂獣と名高いだけある。あの時と変わらずイカれてやがるぜ」

「あぁアレか。いや俺も見たかったぜ、あの血塗れになりながら敵に食いつく姿ってヤツをな」

「あぁ、ベヒモウス戦のか。見たって奴等は全員まるで獣が2匹いるみたいだって言ってたもんな」

「あの神獣に勝つくらいだしな、俺ぁむしろ魔王軍の方に同情しちまうぜ」


 ギルドにいる冒険者達が好き勝手言ってた。

 

「ちょ、先輩達ひどくないっすか?必死にデリンジャ守ろうと戦ってたのに獣扱いされてたの俺?」


「いやしかしアレはなぁ。騎士が1人で立ち向かって高潔な背中を見せるってより、イカれた魔物同士が仲間割れしてるようにしか見えなかったしよぉ」


「いやさっきより言い方悪くなってるからぁ!てかそうやって先輩らが変な事言うから王都の冒険者が俺の事『血染めの狂獣』とか呼ぶんすよ?!」


「がははは!良かったな坊主、二つ名に決まりそうだな!」


「嫌だぁああ!そんな名前を妹に知られてたくないぃいい!」


 結局、冒険者達にゲラゲラ笑われて、タイミングよく手渡された金を見て誰かが「血染めの狂獣サマがおごってくれるってよ!」とか言ったもんで、気付けば全員で大宴会みたいになってた。


「今更ながら、冒険者って自己中の集まりだよなぁ」


「……ん、今更。ルイだって同類」


 はいはい、分かりましたよもういいですよ。


 ちなみにさりげなく初飲酒だった俺は酔い潰れ、朝起きたら酔っ払いによる死屍累々の中で店主(ギルド直営酒場なのでギルド員)がお会計だからと報酬の半分近く持っていった。

 ……報酬、結構な額だったんだけどなぁ。飲み過ぎじゃないですかねこの人達。



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