051.負けとは?
「いやぁ、予想外のメンツだなぁ」
王都のダハーカ家に転移のマーキングをした俺は、デリンジャに向けて転移で帰った。
それから1日休み、依頼もめぼしいのがなかったので秘密基地作成の準備がてらシヴァ様に会いに行ったのだが。
『なに、勇者じゃと?知り合いか?』
世間話程度にローズマリーのギフトの話をしたら、えらく食いつかれた。
そしてなんと連れて来いという。
これまで妹以外は連れてくるのを嫌そうにしてたのに、どういう風の吹き回しだか。
で、また転移でダハーカ家に行って話をしたら、家族全員から許可が出た。
といっても、名目上は「ギフト開花に関する詳しい人がいる。多分発現させられる」というもの。
マリーと話して、『勇者』についてはしばらく伏せる事にしたのだ。
で、実際にそれを扱かってみて、その性質や強さを確認してから打ち明けるか判断しようとなった。
そしていざ戻ってきてみたら、何故かそこにはシヴァ様以外に2人の女性がいた。
『やっほー、来ちゃった』
『……パーティメンバーとして挨拶は必要』
シンシアさんとクルルだ。
どうやら2人だけで黒の森に来たらしい。
何故他のメンバーはいないのかと聞くと、俺の話を聞いた上でこのメンツでなければ追い返される事を考慮したのだとか。
2人だけなら追い返されない理由は教えてくれなかったが、確かに普段のシヴァ様なら転移で追い返しそうなのに現に2人は追い返されてない。
そうして、ここに俺とシヴァ様、ローズマリー、シンシアさん、クルルが居合わせる事になったのだ。
「あー、とりあえず紹介を。妹のローズマリーです」
「お初にお目にかかります、超越者シヴァ様、『魔剣の乙女』リーダーシンシア様。ルイお兄様の妹、ローズマリーと申します」
「ふむ……確かに『勇者』じゃの。久しぶりに見たわ」
「うわー、すっごい美少女だねー。ホントにルイ君と血が繋がってるのかなー?」
興味深そうなシヴァ様に対して、シンシアさんは揶揄うようにケラケラ笑った。
しかし冗談のつもりだろうけど良いとこ突くなぁ。さすがシンシアさん。
「さすが、鋭いっすね。色々あって戸籍上兄妹ですけど、本来ははとこですね」
「え?あ、そーなの?ご、ごめんね変な事聞いちゃって……」
「いやお気になさらず。どんな過程があっても、今はちゃんと兄妹ですから」
そう笑って見せるとシンシアさんはホッとした表情を見せた。
そんな彼女に、ローズマリーは一歩前に出て言う。
「不躾でしょうが父から聞きました。元マグノリア公爵家の才媛であるシンシア様、お会いできて光栄です」
「あー、バレちゃったかー」
そこでチラと俺を見たシンシアさんに肩をすくめて見せる。ここで言及したりはしませんよ、と。
シンシアさんにも通じたようで、すぐにローズマリーはと視線を戻した。
それにしてもあの目は……怯え、だよな。
ベヒモウスで一人突っ走ってた事もあるし……多分、想像通りだと思う。
やっぱり彼女と俺は変に似てる。
……このままじゃ良くないよなぁ。
うーむ、やっぱりどこで話をしておきたいな。二人きりじゃないとダメだろうし、タイミングは見計らわないといけないか。
「でも私も会えて嬉しいな。噂のダハーカ家の才媛ローズマリーちゃん。ギフトで悩んでたみたいだけど解決できて良かったね」
「はい。私の、ルイお兄様のおかげで無事に。私の、ルイお兄様は頼りになりますので。私の、ルイお兄様には感謝してます」
「………ふぅん……んふふふ、そーなんだぁ。うん、貴女のお兄様はすごいよね。私は、6年前からすっごく仲良くしてるし、今回も私を、頼りにしてくれてたし、私も、ルイ君は頼りにしてるしねー」
「ふ、ふふふ……そうですか。ふふ、ではお互い仲良く出来そうですね」
「んふふふふ、可愛いわねぇ。私も是非そうしたいかなー」
ニコニコと挨拶する2人に、仲良くやれそうだとホッと胸を撫で下ろす。
シンシアさんは人を試したり揶揄うところがあるし、ローズマリーは妙にに頑固だったり意外と子供っぽい所があるから心配だった。
けど、杞憂だったな。
「……それでいくと、私は唯一無二のパーティメンバー。よろしく、妹さん」
「先日ぶりです、クルル様。ええ、よろしくお願いします。ダハーカ家ではあまり話せませんでしたし、色々お話出来たら嬉しいです」
「……私も。ルイの私しか知らない話、してほしいならしてあげる」
「ふふ……では私も幼少期の頃のルイお兄様の話でもして差し上げますね」
クルルとも大丈夫そうだな。
まぁ話のネタが俺なのは恥ずかしいけど、共通の知り合いは俺になるし、話のきっかけになると思えば耐えられる。
仲間と妹は仲良くしてほしいしね。
「ふむ。なかなか面白い者達を揃えたの、ルイ坊」
「揃えたというか揃ってたというか……てかシヴァ様、この2人は来て良かったのか?あんま人連れてきて欲しくなさそうだったじゃん」
「そうだの。だがまぁこれで送り返しては我の負けになりそうでな、致し方ないから置いてやっておる」
「シヴァ様が負け?!え、なんそれ気になりすぎる……俺6年間ずっと一緒にいるのにシヴァ様に何一つ勝ててないのに」
マジかぁ、ちょっとショックだぞ。
小さくてもプライドってもんがあったんだけどなぁ。
「ふふ、安心せよ」
そう微笑み、シヴァ様はいつの間にかこちらを見ていた3人に向けてふっと笑ってから俺へと視線を戻す。
「6年以上毎日つききっきりだったしの。ルイ坊は気付いておらぬようだが、我はひとつだけお主に負けたよ」
そう言って微笑むシヴァ様は、さすが超越者と言いたくなるくらい……この世のものとは思えない程綺麗だった。
「え、マジ?何に勝ったんだ俺?!」
「かかか、お主が勝ったというより、我が負けたというべきかの。なぁそこの3人よ、その方が正しい表現だと思わぬか?」
なんかさっきの綺麗な笑顔といい、シヴァ様もしかして機嫌良い?
「うっわー、怖ぁ。私も笑顔で怒る方だけど、こんな綺麗な顔で凄まれるのは初めてかも」
「ふふ、シヴァ様。とても正しい表現かと思います。気持ちは分かりますとも」
「……私は、いずれ勝つけどね」
謎かけですか?分からん……てか今更だけどアレだね。女性ばっかに男1人ってすっごい肩身狭い。
あーあ、レオンハルトとか来てくれてたらなぁ。学園をローズと2人して休んだらダメだろって来れなかったし。
あとは本屋のおやっさんとかテッドさんとかいたら和ましてくれそう。
モーガンさんは頼りになるし。ルーク卿は……ダメだな、多分この辺を更地にするまで模擬戦しそう。
あ、そーいやポール達は元気にしてるのかな。
すれ違ってるんだかで会えてないしなぁ。今なら気持ちに余裕があるしまた臨時加入とかしても面白そうだけど。
「……何をぼうっとしてとる、ルイ坊」
とか考えてたらシヴァ様が呆れ混じりに睨んでた。
「あ、すんません。ほら、なんかシヴァ様と二人きりなら気にしなかったけど、こうも女性ばっかだと肩身狭いなって。あ、誰か男呼んできていい?」
「ダメに決まっとろう。この3人は特例じゃぞ」
「えー。いや俺も信頼してる3人をシヴァ様が気に入ってくれたのは嬉しいけどね?やっぱ女性は女性、ヤローはヤローで話盛り上がっちゃうじゃん。つまり俺除け者じゃん」
「ぐちぐち言うでない、馬鹿者。ほれ、お主は『空間接続』の練習でもしておれ。たまに見てやる。我は『勇者』のギフトの説明をしてやらんとな。最初が肝心だからの」
いわく、理解してしまえばどんどん成長するのが『勇者』らしい。
しかも剣にも魔法にも適応した能力で、どう鍛えるかで様々な戦闘スタイルにもなれるとか。
だが世界に1人いるかいないかのギフトの為、情報がなくて過去の勇者達は毎度バラバラの成長をするし、中には何故そうなったと言いたい者もいたとか。
だからこそ、せっかくだから今回の勇者は少し手を入れてやろうという事らしい。
「うす、ありがとうシヴァ様。よろしく頼むよ」
それからしばらく『空間接続』の発動に四苦八苦していた。
たまに集中しすぎて頭が疲れたら休憩をがてらシンシアさんとクルルとでA級魔物を狩ったりしていると、あっという間に夕方になった。
「『閃剣』ッ!」
「うむ、良いぞ。ほれ、いちいち止まるな。次に繋げ」
「くっ、『レイ』!『ライトボール』!『集中強化』!」
「うむ、それで良い。まだ甘いがの」
「は?やば」
ローズマリー、超強くなってた。




