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049.家族会議

「ではここに第一回大家族相談会の開催を宣言する」


 無駄なまでに威厳を込めた父上の重々しい宣言に、わぁっと部屋が湧く。まぁ主にリリーだが。

 わざわざこの相談会の為にと王宮での仕事を切り上げてきた父上の子煩悩には頭が下がる。


「議題は、第一王子をどうするかだ」


「父上」


 雰囲気を壊さないようにす、と俺が手を挙げて発言許可を求めると、父上はうむと頷く。


「暗殺であれば、私ならバレずに完遂出来ます」


「兄上?!」

「ルイ兄様ぁ?!」


 可愛い弟妹が騒いでるが鮮やかにスルー。

 そして父上がス、と目を細めた。


 それから鋭い視線そのままに、王国屈指の外交官として国に貢献している父上は呟く。


「第一候補だな」


「父上ぇっ?!」

「お父様ぁっ?!」


 またもかわいい弟妹が騒いでるが父も華麗にスルー。


「父上。問題とは、問題の原因が消えれば問題も消えます」


「同感だ。目的をスムーズに進める為には、時に何かを泣く泣く諦めなければならない時もある」


「兄上暴論じゃねぇかそれ?!」

「お父様ぁ泣く泣くどころか笑ってますぅ!」


 可愛い弟妹達が以下略。


「貴方様」


 ここでそっとリーリエが口を開いた。


「なんだ」


「第二王子派への顔つなぎはお任せください」


「助かる」


「す、すでに第一王子が亡き者として話が進んでるッ?!」

「お、お母様ぁ前向きすぎですぅ!」


 かわい以下略ですぅ。


「はぁ……お父様、お母様、あとルイお兄様。冗談がすぎますよ。そろそろ真面目に話しましょう」


 呆れたように進言するローズマリーに、俺と父上と母上は同時に首を傾げた。


「ふむ……冗談とは?」

「おいおい、マリーこそ冗談言ってないで真面目に話せよな?」

「マリー、あなた疲れてるのよ」


 俺達の言葉に、ローズマリーの顔がさぁと青くなっていく。


「え、ちょっ、家族会議で王子暗殺計画練るんですか?!どんな家族ですかそれ?!」

「そうですよ!なんか上3人と下3人で真っ二つじゃないですかこれ!」

「しかもまさかの上三人の方がやばい事言ってますぅ!」


 かわいい弟妹達が3人とも何か言ってる。


「ふ、ではそろそろ真面目に話すか」

「そうね貴方様」

「ですね。ここから先はお前達の協力も必要だしな。おーい、おふざけなしだぞ?」


「「「………」」」


「では暗殺完了後について詰めていこう」

「やはり今のうちに比較的自由なマリーだけでも第二王子とコンタクトをとるべきかしら?」

「セレウス錬金卿なら繋ぎがとれますし、中立派にもこっそりパイプを繋ぐのはどうですかね?」


「「「やっぱりぃ!」」」

 

 息ぴったりだね君たち。

 いやぁ、良い感じに空気も和んだかな。

 俺達三人はこくりと頷き合う。


「うむ、やはりうちの子達は可愛いな」

「うふふ、そうですね。マリーちゃんなんて顔を青くしちゃって」

「だはははっ!あーかわいい」


 はかったように同時にネタバラしすると、3人の顔が赤くなる。


「……いつかギャフンと言わせてやります…!」

「くっそ……いやアレ絶対半ば本気だったろ…!」

「ふぇえん、我が家が王族殺しになるかと思ったぁ〜」


 そんな訳で、改めて会議を始めまーす。





「さて、とある筋からの情報があります」


 俺はそうぼかして、いつか第一王子がパーティで婚約破棄と乗り換えをするつもりだと告げる。


「……マリー、リリー。まずはお前達の意思を聞きたい」


 俺の説明を聞いた父上は2人を見て問いかける。


 ここで独断や家の利益ではなく娘2人の意見を吸い上げるあたり、俺は父上を尊敬するよ。

 貴族は家を第一に考える。

 だが、例え貴族らしからぬと言われても俺はこの方が嬉しい。

 俺との約束を果たしてくれているのだと分かって、頬が緩む。


「私は婚約破棄が本当ならば嬉しく思いますね」


 へっ、とばかりに吐き捨てるローズマリーにレオンハルトが苦笑いしている。


「私は………」


 フラムリリーは言いにくそうにしているが、暗い表情から言いたい事はなんとなく分かる。


「……父上、やはり貴族として王族との婚姻はほしいものですかね?」


 俺の勘だが、恐らくフラムリリーの気掛かりの部分を質問してみた。


「ふむ、まぁそうだな。王族の覚えがよくなれば……まぁ王宮内でも煩わしさは減るし、発言力も増して優遇もされよう」


 そう父上がざっくりと一般論を説くように告げて、しかしと続ける。


「私は主に外交をしているからな。当然関わりはあるが、他の貴族よりはいくらかマシだ。それに貴族というのは王家に忠誠を誓っているが、忠誠を粗末に扱われてまで誓う事はしない」


 ……あぁ、意外と父上も怒ってたんだな。

 その言葉に気付いたレオンハルトも目を丸くしている。


「我がダハーカ家は武家ではない。国内で幅をきかせる豪商でもない。だが、いざとなればツテを使って他国に逃げる事くらいは出来よう」


 まぁそれだけ他国の様々な人相手にしてりゃ、外国のツテもあるのか。


「勿論そうしたい訳ではないが、最悪の場合でも死ぬ訳ではない。私は私なりに国に尽くしたつもりだ。それを足蹴にしてくるなら、踏みつけられたまま耐える事もないだろう」


 普段はパッと見ぼんやりしてるように見える無表情の父上だが、これまたどうして剛気だねぇ。


「ち、父上……」


「レオンハルト、お前も覚えておくといい。諌める事も臣下の務めである……我々は王家の玩具ではないのだ」


 うん、父上かっけぇわ。

 さすがだよなぁ、伊達に外交のトップ張ってないな。


「それとだ。このままこの国に仕えるのだとしても、私の後を継ぐ必要もない。騎士の道に行くもよし、やりたいようにやれ。私は外交しか教えてやれぬがな」


「は、はっ!その……ありがとうございます、父上」


「気にするな。……私もな、ルイを見ていてそう思ったんだ」


 え、ここで俺ですか?


「なにせ10歳で家を単身飛び出して7年もかからず歴史的偉業の達成だ。それまで外交を教えようと考えてた外交を担う家の子供がだぞ?こんなもの見せられれば、親のエゴより子供の意思や資質に任せようと思うだろう」


 ふ、と笑う父上に、あははと苦笑いのレオンハルト。

 

「……まぁ俺がこうしてベヒモウスを討てたのも、こうして家に顔を出せているのも、全て父上の度量あってこそですけどね。かっこいい父親を持てて俺は幸せですよ」


 せっかくだし思ってる事言ったら、父上はくすりと笑った。


「そうか、ならば良かった。どうせルイは籍を抜くつもりだろうが、お前が私の子である事は変わらない。いつでも頼れ」


「はは、かっこつけすぎじゃないですかね?キマりすぎてて頭下げるくらいしか出来ないじゃないですか」


「ベヒモウスに勝つ男に頭を下げられるか。私も来るところまで来たな」


 父上と顔を見合わせて笑い、それから自分の左手につけていた指輪を父上へ渡す。

 もうね、これで信用できないとか言えないって。

 ……俺も今世では、随分と家族に恵まれたみたいだ。


「あんまりかっこいいもんだから俺も少しかっこつけたくなりました。これをどうぞ」


「……これは?」


「要領は小さいですが、その分出し入れの魔力の少なさと扱いやすさに特化した、簡易空間収納の魔道具です」


 どうやらこれには驚いてくれたらしい。父上だけでなく全員が目を丸くしている。嬉しい反応だねぇ。


「……なんだと?完全に国宝級だぞ」


「お気になさらず。自作ですので」


 そう言いながら指輪に魔力を込めると、ずるりと核としている魔石から10個弱の魔石が転がり出る。


「あとこれは練習用で作った『天盾』……防御魔法を込めた魔法具、いえ神器です。弱い魔石に強い魔法を込めたものなんですぐ壊れる半ば使い捨てですが、いざという時に何かしら役に立つかと」


 咄嗟の防御方法が欲しくて試行錯誤したひとつだ。

 ただ空間魔法を込めるとなるとそれ相応の媒体じゃないと壊れるからな。

 これはA級魔物の魔石だけど、それでも数回使えば壊れてしまった。


「空間魔法、か……しかもまさか神器まで作れるようになっているとはな」


「はい、内緒ですよ?家族だから特別です」


 丸くしていた目をふ、と細めて父上は指輪と魔石を受け取った。


「ありがたくもらおう」


 ここでだらだら遠慮しないあたりが流石だよね。

 人の好意を受け止める度量って案外持てないもんだ。


「……俺も、籍を抜けても家族だと思ってます。何かあれば声をかけてください」


「あぁ、そうしよう。お互いにな」


 頷き合い、そして二人同時にフラムリリーを見やる。


「てな訳だリリー。皆んなそれぞれ力をつけて、お互いを守り合える。だから変に遠慮すんなよ」


「そういうことだ。婚約したければしてもいいし、嫌なら断っていい。好きにしなさい。ゆっくりと考えるといい」


 その言葉を受けて、フラムリリーは一瞬うるりと目を潤ませたが、ぐっと歯を食いしばってまっすぐ前を見据えた。


「ーーはい、ありがとうございます。ちゃんと考えてみます」


 ……ん、よし。

 まぁこんなところかな?

 俺はシヴァ様特製マジックバッグから肉を取り出して言う。


「んじゃ、会議は終了でドラゴン肉でも食べますかね?」


「ドラゴン肉……また高級なものを。まぁそれは頂くとして、会議の議題はまだある」


 あれ?なんかあったっけ?と父上を見やると、父上は使用人に指示をしてドラゴン肉を厨房に運ばせながら俺を見る。


「ルイ、今日お前と一緒にいた仲間だが、元サントーレ伯爵令嬢だろう。結婚するのか?」


 きゃっ、とフラムリリーが湧く。

 レオンハルトもクルルの正体を知ったからか目を丸くしていた。


「いやなんでそうなるんですかね。しませんよ、俺は妹……達の結婚を見届けるまで見守るつもりですから」


 あっぶな。

 言いかけたのは澪の事だったんだが、それを知らないから誤魔化した結果、なんかローズマリーとフラムリリーの事まで含めちゃった形になってしまったな……。


「……お前は存外下の子に甘いな。それは過保護だぞ」


「侯爵なのに娘の為に国を捨てる父上がいいますか?俺より余程でしょうよ」


「私は親だからな。兄という立場とは違う。まぁ親になった事のないお前には分からんだろうがな」


「あれ?まさかさっさと親になってみろって煽りですか?乗りませんよ?」


 ケラケラ笑っていると、レオンハルトが呟く。


「あの美少女でもダメって、兄上誰なら許せるんですか?」


「ふむ、しかも彼女はルイと同じ重複授与者なのにな。……あぁ、もしや元マグノリア公爵令嬢の方か?」


「「マグノリア公爵?!」」


 なんか当然のように父上がすごい名前を出してきたので俺とレオンハルトが声を上げた。

 マグノリア公爵家はさすがに俺でも知ってる。


 なにせ、この王国の宰相の家系だ。


「ってなんで兄上も驚いてんだよ?!兄上の話なんだろこれ?!」


「いやだってマグノリア公爵の令嬢とか知らないし!」


「む、そうなのか?随分と世話になってると聞いたが。『魔剣の乙女」のリーダーと仲良くしているのだろう?」


「シ、シンシアさんがァ?!」


 シンシアさんよ、あんた何かと底知れなかったけどさ……こんな隠し玉あったのかよ、びっくりだわ。


「知らなかったのか。クルル嬢は重複授与で口が不自由だから飛び出したらしいが、シンシア嬢は相続で揉めそうだから家を出たと聞く。恐らくだがルイ、お前と同じ理由だ」


 あー、つまり家を割る要因にになりそうだからその前に出て行ったと。

 まぁシンシアさんは女性だから普通継がないんだろうけど、あの優秀さなら担がれてもおかしくないしな。


「あの宰相の家系のマグノリア公爵から出奔した令嬢がいたとは……知らなかった…」


「領地で養生している体の弱い令嬢、という事になっているからか。他の子供も優秀でそちらに注目されているから話題に上がらないのだろう」


 レオンハルトにさらりと公爵家の内情を告げる父上はふんと鼻を鳴らす。


「凄まじく優秀らしいな。どうなんだルイ、どちらを選ぶ?それとも複婚か?リンデガルド王国は一夫多妻が認められているからな」


「おっと、かっこいい父上はどこに?酒場のおじさんみたいな絡みするじゃないですか」


「子の将来が気になるのが親だ。おっと、まだ親の気持ちは分からぬか」


「重ねて煽るゥ。そもそも結婚とか頭の片隅にすらなかったですよ。俺ベヒモウス討伐しに出たんですよ?」


 そんな事考える余裕があるとでも?

 それに言えないけど、澪のこともあるから俺の恋愛なんて後回しだよ。


「ふふふ、じゃあ討伐も済んだしこれからは考えるのね?楽しみだわ。……あぁ、そういえばマリーと貴方は結婚できるわね」


「へ?!ちょ、お母様?!」


「ふふふふふ、そうなったらそれはそれで嬉しいわぁ」


「えぇ〜?!ルイ兄様とマリー姉様が結婚?!素敵ですぅ!」


「なるほど、確かにはとこにあたるから可能だな。どれ、その時はダハーカ家の全力をもって祝おうじゃないか」


「あれ?なんでこんな話になったっけ?家族会議してなかった俺ら?」


 さっきまでのシリアスはどこに?俺間違えて空間転移させたっけ?


「ふふふ、まさに家族会議にふさわしい内容じゃない」


「……兄上、ドンマイ」


「……レオン、家族は助け合いだったよな。助けて?」


 収集つかねぇよこれ。

 おいレオンハルト、無言で首を横に振ってんじゃないよ。

 


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