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042.逃げ場

 現状の認識をがっつりさせられた話が終わり、とりあえず体を休めるように言われて解散した。


 といっても、クルルはいるけど。

 というより、ここがクルルが用意してくれていた『イクリプス』のパーティハウスだったらしい。


「いつの間にか稼いじゃってまぁ」


「……といっても、ルイがいなかったから、『魔撃の射手』や『魔剣の乙女』と合同依頼にしてもらってた」


 チクリと刺すような言い方に苦笑いしつつも、パーティを解散せずにこうして居場所を用意してくれていた事に喜びはある。


「ありがとな、クルル」


「……ん」


「てっきり解散してるかと思ったよ」


「……これは怒っても許される」


 軽口を叩くと物理的に叩いてきたが、例の如く痛くないあたりが懐かしい。


「いや、本気で申し訳ないとは思ってるんだよ。ただ転移で戻ると、また黒の森に戻るのが数日空くしさ」


「……結局6年も寝なかったなら、さっさと戻っておくべきだった」


「本当にな。いやだってまさかあんなに寝ないとは……」


 俺だって忘れていた訳じゃない。

 ベヒモウスの隙を狙っていたから離れにくかったのだ。


「……シヴァ様って人なら、簡単に往復できた」


「まぁなぁ。ただあの人、人里に行きたくないっていうし、離れたら長くなるだろーって言って自分の飯の心配ばっかするし」


 要するに帰してくれなかった。

 そこらへんは超越者だけあってか知らないが、人間の都合なんて知るかとばかりに我儘かつ頑なだったんだよね。


「……多分、それだけじゃない」


「え、そうなん?……俺としては特に理由も思いつかなかったけど」


「……ルイ、あの時踊ってた」


「踊ってた……?あぁ、ベヒモウス倒した後の喜びの舞か?あんなふざけ半分に何かあんの?」


「……嬉しそうだった」


「いやそりゃベヒモウスに勝ったら嬉しいだろ。めっちゃ喜んだっての」


「……違う」


 だから何がよ?と聞けば「もういい」と言われた。何その気になる終わり方……。訳が分からないよ。


「……それより、これで妹さんに会える?」


「あぁ、会える。といってもあと一年半後だけどな」


 実はベヒモウスを倒して気絶した後、夢に出てきたんだよね。……どういう魔法なら夢に出て来れるんだろ、超越者なんでもありだな。


 ーー半年後、魔王が誕生する。その一年後にリンデガルド王国で異世界召喚が行われるんだが、そこに現れるのがお前の妹だ


 やっと手に入れた情報は、案外身近なところに現れるというものだった。

 この国で会えるならラッキーと喜ぶべきか、だったらベヒモウス倒さなくても会えたんじゃね?と怒るべきか悩むが、まぁ今となってはどっちでもいいか。


 ちなみに異世界召喚の邪魔していい?と聞くとタイムパラドックスだか何だか知らないけど、下手したら澪がどこ行くか分からなくなるから辞めろと言われた。


ーーよくやってくれた。ありがとな。あの子を眠らせてやってくれて


 まぁよく分からんけど、超越者達にも色々あるんだろう……また澪に会える恩を返せたんなら良かったかな。


「……そか。なら、一年半後までどうするの?」


「んー、国から目をつけられても大丈夫な場所を作るつもりだ」


「……どゆこと?」


 実はこれはずっと考えてはいた事だ。

 そもそもが異世界人は国に取り上げられる存在なので、俺個人の話を抜きにしても澪の事もある。

 だから逃げ場は作っておくつもりだった。


 実はそれを見越した上でも便利そうだと選んだのが『空間魔法』だったりする。


「ベヒモウスの死体を使って隠れ家を作るつもりなんだよね。おまけに空間魔法と錬金付与術でいつでも行き来できる魔法具も用意する」


 これが俺の考えていた秘密基地作戦だ。

 だからシヴァ様のとこにいた時は内心テンション上がりまくったね。あのログハウスはまさに理想だったもん。


「……黒の森?」


「今となっては慣れ親しんだし、アリかなとは思うけど……ベヒモウスの抑止力がなくなった分、人が来る心配は増したよなぁ」


 ベヒモウスがいると言われていたのが黒の森だから、他の魔境よりも危険だと言われてた訳だし。

 ヤツがいなくなったら、普通にA級パーティがちらほら現れてもおかしくない。


「……そこまで増えないと思うけど、増える可能性はある」


「だよなぁ。となると……黒の森含めて複数用意するか、完全に人の来ない場所を探すか、だな」


 出来れば前者にしたい。

 黒の森は慣れてるから食材やらも含めて住みやすいし、拠点として確保はしておきたいんだよな。


 それも素材の量と相談になるか。

 ベヒモウスの素材ならたくさん魔法陣を組み込んでも壊れないだろうけど、使えばなくなるというのは間違いない訳で。


「……いっそ、国作る?」


「だはははっ!それは面白い案だな!」


 出来るかーい。クルルも冗談とか言うんだな。


「まぁシヴァ様にも相談してみるか。なんか良い案出してくれそうだし」


「……多分、黒の森に住めって言われるだけ」


「いやぁ甘いなクルル。あの人マジで色々知ってるからな、きっといくつか案を出してくれるって」


 そうドヤ顔して言ってみせると、何故か呆れたような視線をもらった。


「行くだけなら一瞬だし、明日にでも相談してくるわ。そこでもらった案を持ってまたすぐ戻ってくる」


「……日帰りね」


 はいはい、と頷いて横になる。

 体は痛いけどもう大きな戦いもないし、しばらくはのんびり休もっと。







「ここに住めば良いじゃろ。妹とやらも特別に歓迎してやろう」


「まぁ一番手っ取り早いけどさ、あんま迷惑かけたくないし。だから他にも何か良い案とか、人が来ない場所とかないかな?」


「ここに住むより良い案などないわ。ここより安全な土地なぞない」


「いやいや、そうだろうけどね?あー、だったら2番目に安心な場所とかは?」


「あとは似たり寄ったりじゃ。つまり、ない」


 あれぇ?なんか急に雑になるじゃんこの半神様。


「えー、どっか知らないのか?人の来ない秘境とかさ」


「あるとすれば『始祖竜王』バムバードの住処である霊峰か、『星覆海王』リヴァイアスの住む深海くらいじゃ」


「あー、それはとっても秘境ですね」


 それを引っ張り出すのはセコくない?人間じゃ住めねぇよ。


「多少魔物がいてもいいからさ、人が来ないとことかないの?魔物の領域とかこんだけ広いのに」


「……ルイ坊、ここに住みたくないのかの?」


 あれ?なんかシヴァ様がショック受けてる?

 珍しいな、何言ってもノッてくれる時以外はクールというか泰然自若としてるのに。


「いや、そうじゃなくてさ。ベヒモウスを倒すのにこんだけ世話になったのに、倒した後まで甘えてたら俺が申し訳なさすぎるし」


「くだらぬの。人を半ば超えた我につまらぬ遠慮なんぞいらぬわ」


「まぁシヴァ様はそう言ってくれるけどさ、俺の問題だっての。まぁゆーてどっちにしろここにはよく来るとは思うけどね」


「む、そうなのか?」


 ぴくりと片眉を跳ね上げるシヴァ様に頬をかきながら頷く。


「まぁこんだけ言っといてアレだけどさ……ほら、ここ住み慣れたしね。だから秘密基地を作るならまずここで、素材次第で緊急避難先としてもう一箇所、もしくは複数箇所の秘密基地を作りたいなーと」


「ほう、なるほどの」


「そ。で、黒の森の拠点の候補は2つあってさ、このログハウスのお隣さんってのも面白そうだしそれが1つ。あともう一つは最初にベヒモウスがいたとこあるじゃん。あそこ日当たりがいいし、そこがもう一個の候補かな」


「ルイ坊、間抜けじゃの。秘密基地なのに日当たりがよく目立つ場所に置いてどうする」


 まぁ当然それは考えた。

 けど、そこで出てくるのがベヒモウスの死体な訳で。


「いやそうなんだけど、ベヒモウスの骨とか錬金付与術とかを使えばうまいこと隠蔽したり、出来ないなら逆に要塞みたいにすればいいと思ってさ」


「まぁ地上で他の『二王』を除けば最も優れた素材じゃろうし、可能じゃろうな。で、その込める魔法陣はどこで調べるのじゃ?」


「おっ、やっぱりか!魔法陣の方は、そりゃシヴァ様に教えてもらえたらありがたいけど、無理なら色々試行錯誤かな」


「だと思ったわ。教えてやってもいいが、条件がある」


 お?ダメか良いの二択が基本なのに珍しいな。


「で、条件って?」


「隣に建てろ。お隣さんとやらになれ」


「……ん?そんだけ?全然いいけど」


 多分澪も仲良くやれるだろうし。コミュ力すごいからねアイツ。


「ふっ……では決まりじゃの」


 妙に勝ち誇った顔のシヴァ様に内心首を傾げつつ頷く。


「おう、悪いけどまた色々教えてくれ。ちゃんとお礼に新しいレシピ考えてご馳走するからさ」


「楽しみにしておこう。それと、他の候補地はベヒモウスの素材が足りた場合に教えてやろう」


「あー、まぁそれもそうだな。つか便利そうな素材がないかS級狩りするのもアリかもなぁ」






「ってな感じの話になった」


「……やっぱり」


 あぁ、言われてみたらそうだな。

 てかよく分かったな。クルルもシンシアさんみたいになったのか?成長したんだなぁ。

 先読みできるブレインの存在はパーティメンバーとして頼りになるかな、嬉しい限りだ。


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