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036.5年

 それからの毎日をダイジェストでお伝えしたい。

 細かく伝えろ?いや練習して倒れての繰り返しでしかないんだもん。


 1年目。

 『疾風迅雷』の痛みに耐えたり、『体内浄化』の難しさにイライラしながら練習した。

 ちなみに食材はシヴァ様がとってきてくれて、料理は俺がやりました。


 2年目。

 やっと『疾風迅雷』と『体内浄化』を覚えて、黒の森でも探索できるようになりました。

 習得に苦労した甲斐あって、A級下位くらいの魔物なら『空間魔法』なしで勝てるようになった。

 ただし複数で来られたらどうしようもなかったので、結局隠密メインではあったけど。

 この頃から食材は自分で探すようになったけど、地球とも人類生存圏とも違いすぎる動植物達に苦戦して、手探りの日々でした。

 何回か試しに食べた香草みたいなのが毒入ってて『体内浄化』したしね。


 3年目。

 ついに錬金付与術で簡単な魔法なら刻めるようになりました。

 ちなみに錬金付与術とはシヴァ様のアドバイスの元作り上げた錬金術と付与術を合わせた魔術ね。

 別々に使ってたから難しかったそれを例の如くシヴァ様が魔法具作成に向けてアジャストしてくれた合体技法です。いぇーいチートのおこぼれ万歳!

 これのおかげで魔法具はともかく魔術具なら結構ハイレベルなのも作れるようになった。ので、地球ばりの多機能システムキッチンを作った。やっぱ竈門じゃなくてコンロだよ。

 ちなみに食材はかなり種類が増えた。大豆に似たのを見つけてからは一気に幅が広がったね。錬金術で発酵じゃーい!醤油と味噌うまぁい!


 4年目。

 マジックバッグのあまりの難しさに苛立ちすぎて魔物狩りがメインの一年でした。

 この頃にはA級が多少群れても平気になってたから、S級にもケンカ売るようになった。

 けど、さすがに『空間魔法』がないと勝てなかった。てかS級ってピンキリにも程がある。弱いS級と強いS級じゃ体感でD級とA級くらいの差がある気がする。

 あとこの頃から少しずつ対ベヒモウスの準備を始めた。とある素材を日々集めたりね。くっくっく、楽しみにしとけよベヒモウスめ。


 5年目。

 なんと暇つぶしにシヴァ様が手合わせをしてくれるようになった。マジで勘弁して欲しかったです。

 実は結構強くなれたと思ってたので、いいぜ来いよと受けて立ったのが運の尽きでしたね。

 それから暇になれば付き合わされて、ものの数分で昏倒の日々ですよ。文字通り神の気まぐれでしばかれます。パワハラって超越者相手にでも適用できますか、教えてくださいえらい人。

 あとこの頃にシヴァ様が手作りの魔法具をくれました。指輪型で、なんとほぼ負担なくこのログハウスに転移できる代物です。一体どれだけ緻密な魔法陣を組めばここまで使用者の負担をなくせるのか見当もつきません。

 いわく、これだけの飯を手放すのは惜しいらしく。

 もう料理人でも雇えと言った後の手合わせは今も思い出したくありません。何故そんなに怒ったのだろうか。


 

 そして6年目。

 ここに来てから丸5年と少しが経ち、なんと今日でルイくん16歳。

 実は誕生日なんすよ、と言って去年もらった転移指輪に続き、今日もプレゼントをもらえた。


「ほれ、これをくれてやる。感謝して飯のレシピを増やすがよい」


「ははー!ありがたき幸せ! しかしレシピかぁ、あのエルダートレンドは使い方次第で使えそうな気がするんだけどなぁ」


「あの妙な匂いの木がかの?」


「あぁ、燻製とか藁焼きって調理法があってな。あの香り付きの木でやったら美味いと思うんだけど……ただそのまま燃やすと燃えすぎるんだよね」


 とか言いながら、プレゼントの箱を開けてみる。

 そこにはもやんとした黒い歪みがあった。


「え、なにこれ……?……?? あ、空間魔法か!」


「かかかっ、どうじゃ、さぷらいずじゃ!」


 あぁ、去年俺の誕生日の少し後にシヴァ様のお祝いしたんだっけね。誕生日が分からんとか言うから適当な日に。

 ちょっとしたサプライズ感覚で帰ってきたらパーティ会場、みたいな事をしてみたんだったか。

 こうしてサプライズを真似るあたり、意外と喜んでくれたのかも知れない。


「これまさか空間収納かよ……サプライズにしては豪華すぎません?」


「いいから早く見てみよ。わざわざ作ってやったのだからの」


「あ、中にまだあんのね。箱だけでも既にとんでもない価値なんだけど」


 普通ラッピングがこんな超豪華な事ある?やっぱ頭おかしいって超越者達は。


 言われるがままに手を黒い歪みに突っ込むと、ひとつだけ物が入っていることが伝わってくる。

 ただしわざわざ隠蔽してるのか、内容だけは分からないという手のこみよう。


「っとこれか。お、おっ?思ったより長っ!」


 取手らしき棒があったので引き抜くと、思ったより長くてズルズルと箱から伸びていく。

 あれだね、国旗のさげられた紐を伸ばすマジシャンにでもなった気分。


「抜けた……うわ、なんだこれすっげぇ…」


「かっかっか!ルイ坊のメイスも傷んでおったからの。頑丈なのを用意してやったわ」


 サイズ感や重さはデリンジャで買って愛用してたメイスと変わらないのだが、伝わる存在感や魔力の桁が違う。

 てかウソだろ、もしかしなくてもこの内包魔力……俺の全魔力と大差なくない?


「色々機能をつけてもかえって扱いにくいと思っての。メイスなんぞ力任せに敵を砕く武器じゃしな。だから頑丈で、魔法なども叩ける事、魔力を込めたら威力が増すくらいにしておいた」


「うっひゃー王国なら神器扱いだー」


 やってくれたなこのババア。目をつけられたら取り上げられちゃうわこんなもん。

 

「おいおい、これ国に目ぇつけられるヤツだわ」


「む?そうか。まぁルイ坊にくれてやったものじゃ、そこらへんは好きにせえ。献上すれば多大な金と名誉に代わるくらいの代物にはしとるぞ」


「いやそうはならんって。シヴァ様がわざわざ誕生日にくれたもんだぞ。とられるくらいなら王様脅すわ」


 俺が目をつけられると言ったのは没収される事じゃなく、没収を拒否するなら目をつけられるって意味だよ。


 てゆーかそもそもシヴァ様作だからね。どうせまたえげつない性能に決まってるし、ほいほい渡すと扱えずに自滅しかねない。……という内容で脅すか。

 単純に相手も可哀想だし、当然俺だって大事に使う。つまり渡さない事こそがウィンウィンなのだ。


「む、そ、そうか。そこまで気に入ってくれたのなら作った甲斐があったかの」


 いやごめん、危険すぎるから俺が持つって話なんよ。

 まぁそんな事を言うつもりはない。気に入ってるし嬉しいのは確かな訳だし。


「うん、ありがとう!これならベヒモウスの顔面も吹き飛ばせそうだわ」


「そうじゃの。あやつも大概硬いが、そのメイスなら打ち負ける事はあるまい」


 ちなみに長く生きてるだけあってシヴァ様は何度も

ベヒモウスと会ってるそうな。

 昔はともかく最近は色々あってあまり会ってないそうだが。

 ただ昔は普通にじゃれあったり雑談とかもしていたというから驚愕だ。ベヒモウスのイメージ変わるわ。


 そんなシヴァ様に聞くと、ベヒモウスの毛皮は魔力を弾く性質があり、逆に爪や牙、骨などはオリハルコンよりも魔力伝導率が良いから魔力運用も優れてる。

 だから魔力的スタミナはえげつなくて、『三王』でもトップだとか。つまり全生物トップだよそれ。


 てか毛皮の性能でデリンジャであれだけ魔法を受けても平気だったんだな。そう考えると直接じゃなくて足元を崩すよう指示したシンシアさんは大正解じゃん。

 本当にさすがだよあの人。


 ともかく、ベヒモウス自身の体力や魔力も桁違いなので、長期戦をしようものなら人間では確実に競り負けるらしい。しかも自己治癒も扱えるしねアイツ。


 つまり短期戦が大前提。

 その上で魔力を介さぬ攻撃で畳み込むか、魔力を弾く性能以上の魔法で仕留めるかの二択。


 あの時空間魔法が効きにくかったのは魔力密度じゃなくてヤツの性質のせいでもあったのかね。てかローザンヌ母上、集団戦とはいえよく追い払えたね。とんでもねぇママだよ。


「これで接近戦の選択肢も出来た訳か。くっくっく、これなら勝算があるぜェ!決戦の時は近い!」


「たまに出るその悪い笑みはどうにかならんかの……あぁ、ベヒモウスを眠らせに行くのはエルダートレンドの活用法を見つけてからにせよ」


「え、なんで?まさかベヒモウスの弱点とか?」


「いや、ルイ坊が負けて喰われでもしたら、我はずっとエルダートレンドを使った料理が気になったまま生きていかねばならんのじゃぞ?そんなの嫌じゃ」


「はあああ?!てめ、仮にも5年間一緒にいた相手が燻製以下かよ!あー決めた!書きかけのレシピばっか残して出発しよ!」


「なっ?!ル、ルイ坊よそれは卑怯じゃぞ!そ、そんなの我耐えられぬ!」


「俺が喰われるのは日常会話レベルのくせにレシピでこの反応なの?!逆に俺がびっくりだよ!」


 結局エルダートレンドの活用法にそれから1ヶ月時間がかかりました。

 ちなみに解決法は燃やす時に水魔術の併用。繊細な操作が必要だったのでシヴァ様にも手伝ってもらって2人で作ったよ。

 シヴァ様が藁焼き用にどこからか魚をとってきてくれたので、2人で美味しく食べました。


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