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034.新魔術

 シヴァ様に拾ってもらってから1ヶ月が経った。

 

 体調も戻り、今日は久しぶりに外に出る事となる。


「冷静に考えて、飯作るのって食材を集める必要あるんだよね」


「そりゃあの。まぁ安心せえ、調味料は揃えておる。我の自作じゃ」


 調味料も見せてもらったが、岩塩、胡椒といくつかの香草があった。

 いわく、黒の森で手に入るらしい。

 

「……色々探すかぁ…」


「うむ、頼んだぞ」


 ぶん投げやがったな。

 いやでも調味料全然足りないし、種類も少ないし。

 シヴァ様の為ってより、俺自身うまいもんは食べたい。


 という訳でまずは探索開始。


「しかし本当に黒いんだな」


 木々も草も、黒っぽく変色していて気味が悪い。


 まぁ幸いなのは俺の装備が黒の森に行くつもりだったのもあって黒い事か。

 これで割と隠れながら探し回れるんじゃないかと思う。


 久しぶりの戦闘にもなるだろうし、一度手持ちの手札の確認をしておくか。


「まず戦闘手段がーー」


 『空間魔法』と『身体魔術』、あとは『初級四元魔術』か。

 ただし、空間魔法は魔力蓄積ブレスレットとの併用が必須で、フルパワーで二発、通常発動くらいで6発分のみ。

 身体魔術は強化系が通常の身体強化、集中強化、自己治癒の3つ。まぁいまだに自己治癒は強化に分類すべきか悩むけど。

 あとは『気配制御』という隠密用の魔術と、『身体硬化』という肉体の硬度を高める魔術。

 四元魔法は相変わらず火球、水球、風弾、石弾のみ。


「で、補助能力が……」


 戦闘に有用な『超感覚』。

 これはギフトだな。


 で、非戦闘用なのが錬金術と付与術。

 戦闘手段の幅を広げる準備をする為の力とも言える。

 あとは魔術とかではないけどテッドさんの無音歩行術もあるな。


「で、装備がこれか」


 まず生命線の魔力蓄積ブレスレットだ。

 これは両手に3個ずつ装備してる。中身の魔力も休養中に全て満タンにした。


 そして黒のフード付きローブ。

 これはC級依頼で狩ったブラックウルフの皮と、購入したワイバーンの皮を、錬金術で混ぜ合わせて付与術で『気配制御』の魔術も付与している。

 魔力を込めたら隠密行動が出来る代物って訳だ。

 割とお気に入りで、便利な上にそれなりに防御力もある。


 インナーは普通の黒のロンTみたいなのと伸縮性に富んだズボン。鎧とかそういうのは、考えはしたけどやめた。どうせ一定以上の魔物ーー特にベヒモウスにとっては布の服も革鎧も変わらない。

 それなら速度を落とすだけだからと判断した。

 

 そしてレッグポーチが二つ、両脚についている。

 そう、マジックバック用に買ったやつだ。

 しかし残念な事にまだただのレッグポーチだ。『空間魔法』の付与術の難易度は、ただ『空間魔法』を使うより更に難易度が跳ね上がる。

 それでもちょっとした小物入れとしては重宝してたから身につけていたのだが、今となっては装備していて良かったと思う。


「っし、こんなとこか。んじゃ出発!」


 一通りチェックしたし、意気揚々と黒い世界へと踏み込んだ。





「なっさけないのぉ」


「う、うるへー……」


 30分待たずに撤退した。


「まさかその程度の力で空間魔法を使っておったとはの。随分工夫しておる……と言えば聞こえは良いが、身の丈に合っておらぬわ。反動も大きかろう」


「あい、その通りです」


 いやもうぐうの音も出ないわ。

 何なのここ、マジで魔境じゃん。


 現れる魔物がどれもこれもA級で、遠目にS級すら見えたぞ。

 一体だけでも苦戦は必須だというのに、それがゴブリン感覚で連続会敵ですよ。


 だから『気配操作』と無音歩行、おまけに『超感覚』まで駆使しての隠密ムーブをしてみた。

 しかし蔦が足を引きちぎる勢いで絡みついてきたり、花に無臭の毒性の花粉を撒き散らされたりと天然トラップがわんさかあったし、その気配に気付いて魔物は集まるし。


 どうにか『空間魔法・捻天渦』と身体強化をフルに使って逃げ切り、シヴァ様の拠点にヘトヘトの状態で帰ってきたところだ。

 この黒い世界の中でポツンと浮かぶように建つ普通の木の色のログハウスがどれだけ神聖に見えた事か。


「……はぁ、仕方ないのぉ。いくつか便利な魔法ーーは扱えぬか、魔術を教えてやろう。勝手に覚えて飯を用意せい」


「お、マジすか。ありがたやありがたや」


「雑に拝むでないわ、罰当たりじゃぞ」


 ふんと嫌そうに鼻を鳴らすシヴァ様だったが、すぐに切り替えて指を空中で振ると、地面が焼けたように焦げていく。

 それらが魔法陣を描き、焼印みたいに地面に刻まれていき、最終的に3つの魔法陣が描かれた。


「見たところお主は体内魔術に特化しておろう。これらなら扱いやすいじゃろうて」


 見ただけで分かるのかという感想は飲み込む。

 で、ざっくりと説明されていく内容を聞くと、確かに有用そうなものばかりだった。


 1つは体内の毒やら異物を吐き出す『体内浄化』の魔術。

 2つ目は声に意思や力を乗せて敵を怯ませる『王気咆哮』の魔術。

 3つ目は身体強化の上位版だという『疾風迅雷』の魔術だ。


「いやマジか、こんな魔術聞いた事ないぞ……」


「ふむ、まだ人はここまで至っておらぬのか。まぁ本来魔法の領域じゃ。これらもたった今魔法から魔術に落とし込んだものだしの」


「はぁ?!え、今?魔法を魔術に?思いつきで??」


 いや落ち着け俺、相手はほぼ神様であり超越者に片足突っ込んでる存在だ。

 おおよそあり得ないような事もやってのけても不思議はない。


「造作もない。まぁ当然魔法より劣化はしとるがの。そもそも、魔法とお主らのいう魔術の違いなんぞ些細なものじゃ」


 いわく、魔術は平面魔法陣で、魔法は立体魔法陣を用いた技法らしい。

 平面では落とし込めない多くの情報を立体にする事で詰め込み、膨大な情報量を詰め込んだのが魔法なのだという。


 ちなみに、その莫大な情報量に人間の処理能力では追いつかないから、魂と紐付けて直感的に操作できるよう個人個人にアジャストしているのがギフトだ。


「情報量を減らした分、性能も発動後の操作補助もないがの。精々精進せえ」


 そして削ぎ落とした情報の中には発動した魔術がオートである程度動く機能も含まれているんだとさ。

 だから発動後の扱いは魔力操作の能力に委ねられるという。


 つまり発動前に膨大な情報処理をすれば発動後が楽になる魔法と、発動にあたって情報処理が出来ないから最低限の発動した後に無理やり魔力操作で行使するのが魔術……という感じらしい。


「はー……なんか魔法の研究してる人達が聞いたら鼻血出して興奮しそうな情報だな」


「そんな変態みたいな反応する奴には教えたくないのう……あぁ、お主は錬金術と付与術も使うんじゃったの」


 平面魔法陣を付与術によって刻み、魔術具を作る。

 これを立体魔法陣に替える事で『魔法具』を作る事も出来るのだという。


「マ、マジすか。それって噂に聞く神器じゃんか……」


「大仰な。そも真に神が作った道具なぞ人間には扱えぬわ。内包する魔力の逆流に負けて肉体が四散するだけじゃぞ」


「えぇ……超危険物じゃないすか…」


 王国で神器と呼ばれているのは、魔術ではなく魔法が扱える道具だったんだが……どうやら厳密には違ったらしい。


「お主が先日練習していたまじっくばっぐ?も、立体魔法陣を刻む事で扱いやすくなるじゃろうの。それに情報量も多く詰め込めるから多くの機能を追加する事も出来ようぞ」


「え、マジか!それ教えてくださいよシヴァ様!」


 さらっと重要すぎる発言をする半神様にがばりと詰め寄って拝み倒す。


 てかどうでもいいけどさ。

 さっきからこの少女の言動が何かに似てるなぁと思ったら、俺つえーな主人公と割と近い感じなんだわ。

 同じ転生者なのにあちらは驚かす側で俺は驚かされる側かよ。世知辛いわぁ。


「ち、近い。なんか怖いぞお主……しかしお主は錬金魔法ではなく錬金魔術じゃろう?余程の魔力量と処理能力がないと作れぬぞ」


 あー、それがあったか。

 錬金術……つまり錬金魔術の略なのだが、やっぱ錬金魔法より性能は劣るそうな。例のごとく魔力操作で補うしかないらしい。

 セレウスさんなら刻めるのかねぇ。まぁあの人は空間魔法持ってないから刻むだけで発動出来ないんだけどさ。あ、魔力量も厳しいだろうな。


「やるだけやってみます!教えてください!」


「急に心からの敬語じゃの……まぁ構わんが、逐一レクチャーするのも面倒じゃ。一度だけゆっくりやってみせるから、それを記憶に刻め。あとは完成品を見て実践せよ。行き詰まった時のアドバイスは作る飯の美味さ次第でしてやろう」


 そう告げたシヴァ様は、次の瞬間には俺の脚につけていたはずのレッグポーチを持っていた。

 見えなかった……スリさせたら絶対バレねぇよこの人。


「機能は……『空間作成』『空間固定』で入口をバッグの口に合わせて……空間内は無重力に設定、『連鎖空間封印』を流用して物体同士がぶつからないよう簡易的空間仕分け機能、『封印内鑑定』をいじくって内包情報のリスト化を装備者に伝える機能に、おまけに『物質保存』を『連鎖空間封印』に組み込んで……あぁ『空間歪曲』がないと入口に引っかかるの」


 まるで設計図を書くように空間にメモ感覚でえげつない複雑な魔法陣をポンポンと浮かばせていく。

 ほえー、これがまほうじんかぁー、と退行しそうな脳でそれを眺めるしか出来ない。


「……ま、こんなものかの。あとはこれらの機能を組み合わせて…」


 すると複数の立体魔法陣の中の一部がそれぞれ抜き取られていき、彼女の手に集まっていく。

 手の上に浮かぶ魔法陣に集まるソレらは、時には魔法陣が合体して大きな魔法陣に変化し、時には魔法陣が重なるように複数の魔法陣になったりしてる。


 そして完成した大きな立体魔法陣。

 それをシヴァ様が指をくるりと回すときゅっと縮小化した。


「ほれ、これが立体魔法陣じゃ。今回のは複数の魔法から機能だけを抜き取って組み合わせた魔法陣に、補助機能やらを組み合わせたオーダーメイドの特製魔法陣じゃの」


 もはや何言ってんだこいつ感覚だが、要するに俺が練習中に愚痴っていた素敵機能を詰め込んだ一点物に仕立て上げてくれたらしい。

 いやはやあの時は無理だとか愚痴ってすみませんでした、出来る人には出来るんだね。


「まぁこれで容量を惑星サイズなんかにするとお主が新たに作る必要もなくなるしの。それではお主もつまらなかろう。この建物と同じくらいにしておいたぞ」


 このログハウスもそれなりにデカいからもういいかなって気分にはなってるけどね。さらっと惑星サイズとか言ってたのはスルーで。疲れるから。


「あとはこれをこのポーチに……ほい、出来たぞ。ついでにお主に合わせて黒く染めておいてやったわ」


 ぎゅるんと魔法陣とポーチが溶けて混ざり合い、黒い魔力の塊になり、そしてあっという間に物質化した。

 早業にも程があるぞ、俺とかポーション作るのにも1分近くかかるってのに……。

 それとシヴァ様が言うようにアラクネ糸で作られたポーチは当然白かったのだが、黒くなってる。

 

「どうだ坊主、難しそうじゃろ?お主にこれが出来るかの?」


「いや出来る気しねー……てかシヴァ様も空間魔法持ってるのね」


「お主はアホか。超越者はギフトを授ける側ぞ?お主らが技術としてどの属性でも魔術を扱うように、我らも技術としてどの属性の魔法を扱える。

ギフト頼り前提だから個々人の特化技能として「持つ持たない」という表現をしておるようじゃが、我らの場合は得意不得意という範囲でしかないわ」


 あ、そっか。俺らはギフトでのみ扱える魔法も、神様からしたら基本扱える前提で、あとは得意不得意になるのか。

 そーいやあの転生させてくれたオッサンも空間魔法を『得意』としか言ってなかったわな。


「おまけに言えば我らにとって空間魔法はほぼ必須じゃ。超越者の多くは自分で作った空間に住んでおるしの。だから人間は滅多に会わぬ。中にはカイロスのように世界を渡る程の空間魔法を扱うしの」


「え、神様ってそんな感じなのか。じゃあ天国やら地獄とかも神様が作った空間なのか?……てか待って、もしかして神様って引きこもり……?」


 そ、そんな神様なんか嫌だ!


「お主絶対それ他の超越者に言うなよ?」


 言う訳ねーだろ!てか言えるか!


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