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020.パーティ名

「いや〜、まさか少年があの神獣狙いだったとはねぇ」


「色々ありまして。必ず討ちますよ」



「そうか。クルルがいるよしみだ、私達の力になれることがあれば言ってくれ」


「ありがとうございます。もちろんその時は対価は払いますんで」



「大した少年じゃのぅ。生半可な道ではないぞ、精進せえ」


「うす、気張っていきます」



「ま、精々頑張りなさい。言っとくけど、今のアンタじゃ自殺と変わらないからね」


「お、意外と優しい。お礼に今度良い香水探しておきますね」


「一言……というか全部余計なのよ!」



 とまぁこんな感じで、クルルを引き取る以上はと『魔撃の射手』へと挨拶をしてきた。

 全員やっぱりA級の名に恥じず、貫禄すら感じるさっぱりとした、それでいて暖かい対応だった。


「良いパーティだったんだろうなぁ」


「……ん。好きだった」


「一応言っとくけど、戻りたくなったら言えよ。ちゃんと送り出すし、俺も向こうに頭も下げるからな」


「……もーみゃんたい」


「モーマンタイな。間違って覚えてるぞそれ」


 挨拶を済ませた足でそのままギルドへと向かう。

 さっさとパーティ登録したいというクルルの要望があったからだ。


「……あ、アンタ!ついに!」


「あー、うん、まぁね。心配かけたなおばちゃん」


「ついに女の子に手ぇ出して!あーもうこれだから思春期ってヤツは!」


「ちっげぇよ!!あと思春期に謝れ!」


 受付のおばちゃんとの暖かい一幕を経て、いざパーティ登録をする事に。

 だが、ここで事件が起きる事となった。


「……む、パーティ名は?」


「は?いるのそれ?ナシで良いんじゃない?」


「……ありえない。というか、登録上必要」


「マジか。別に何でもいいや。なんか希望ある?」


「……クルルと下僕」


「却下」


「……天使と悪魔」


「どっちがどっちかは聞かずにおいてやる。却下」


「……美少女と野獣」


「実はこれトリッキーにケンカ売られてる?」


 そう、パーティ名が全然決まる気がしない。


「……何でもいいって言った」


「うん、そこは謝るわ。そして撤回する」


「……女々しい童貞め。あ、美少女と童貞」


「仮にそれでオーケーしたら絶対自分も恥かくぞ」


 さて、パーティとは何なのか。

 協調性を持って力を合わせ、困難に立ち向かう。

 その協調性や信頼をもって、実力以上の力を連携で生み出して1人では乗り越えられない壁も越えられる。

 そういうものではなかったのだろうか。


「……じゃあルイが言え。代案を出さずに却下するのは無能」


「ベヒモウスぶっ潰す隊」


「……だっさ」


「紳士がクソガキの面倒を見る隊」


「……それ私と同じ手法。あと隊は拘り?却下」


「ふゅーじょんはぁ!」


「……それ友達も言ってたけど、意味分かんない」


 友達何歳だよ。仲良くなれそう。


「アンタらねぇ。いつまでやってんだい」


「「こいつが悪い」」


「はぁ、仲良しなんだか悪いんだか。とりあえず考えてからまたおいで。そろそろ人が増える時間帯だよ、ほら、どいたどいた」


 追い出されちゃった。

 いや、まさかこんなところで手間取るとは思いもしなかったな。


 ただ言われてみたらこういう名前つけるのってめっちゃ難しいんだよな。

 文化祭のクラスで出すお店の名前を決めようとかいう時も、意外と思いつかずに結局ふざけた名前が採用されてた記憶がある。


「名前ねぇ」


「……女神と教徒」


「え、まだそのパターンやるの?」


 もうこのパターンじゃなくて、普通ならなんでもいいのに。


「……仕方ない」


「あ、クルルもそう思った?」


「……ちょっと心苦しいけど、それしかない」


「だよなぁ。しゃーないか、気合い入れてくぞ」


「……おー」






「……早い再会だったな」


「頼りにしてくれって言ってくれたんで!頼りにしてます!」


「……ます」


 最終手段、クレアさんに丸投げだ。


「さすがの私も、パーティ名を決めてくれと頼まれたのは初めてだな」


「それがっすね、クルルがまとまな案を出さないもんですから」


「……ルイのチョイスはダサすぎ」


「はは……しかし参ったな。私もあまり得意じゃなくてね。結局『魔撃の射手』というのもカーラが決めてくれたんだ」


 え、意外。絶対クレアさんが決めたんだと思ってたわ。


「なぁカーラ?」


「そうね。ただ別にパーティ名なんか究極的には何でもいいのよ。その名に価値がつくかどうかはアンタ達次第なんだから」


「いやそれは分かってるんすけどね。こいつの一発目『クルルと奴隷』っすよ?」


「……ルイのは『ベヒモウスぶっ潰す隊』」


「……………いくつか考えてあげるわ。好きに選びなさい」


 なんか呆れやら哀れみの視線つきの優しさって痛いよね。傷口に消毒液を執拗に塗り込まれた気分。


「……『ミレニアムピリオド』、『王冠と騎士』……あー、『イクリプス』とか」


「なな、なっ」


「……くっ」


「な、なによ。何か言いなさいよ……」


「なんか、かっけぇ……!負けたっ…」

「……敗北。カーラ、まさかそんな特技が…」


 項垂れた2人に、カーラは呆れたように言う。


「あーもう、恥ずかしいわね。でもちゃんと考えたから、別に変でもないでしょ。好きなの選びなさいよ」


「お、おう。ありがとう。てか名前の意味とかあんの?」


「そりゃまぁ……」


 いわく順番に千年以上生きたベヒモウスを終わらせる者達。

 俺たちの名前の意味を並べた名前。

 あとは俺達を眺めててふと思いついた、太陽の金と夜空の黒を思わせる髪色から日蝕を意味する名前、との事。


「やっべぇ、俺らじゃ一生浮かばねぇ選択肢だわ」


「……きっとパーティ名を授ける仕事で儲けれる」


「ちょ、何よそれ。やめなさいよ恥ずかしいわね……もうっ」


「「……デレた」」


「ちょ、なによその言葉?!何故か不快なんだけど!」


 



 とまぁそんな訳で超強力な助っ人もあり、名前は決まった。


「おばちゃん、決まった!」


「……『イクリプス』。いぇい」


「おっ、やっと決まったかい!イクリプス……日蝕?あぁ、もしかしてアンタ達の髪色かい?あんなレベルの会話してたのによく思いついたね」


「……カーラのおかげ」


「あははは!A級パーティにそんな頼みをしたのかい!どんだ新人パーティだねぇ!」


 選ばれたのは、『イクリプス』でした。

 決め手はシンプルに、文字数が少ないからだ。


 いや、あの後『魔撃の射手』のメンバーと普通に雑談してたんだけどさ。

 そこでチラリと出た話に、あまり長い名前だと依頼完了書のパーティ名記入欄に書き込む時が面倒だって話を聞いたんだよ。


 その瞬間、俺とクルルは同時に視線を合わせて頷いたね。


「っしゃあ!やっと決まったな!えと、あれ、どんな意味なだっけ?さっきおばちゃんが言ってたよな」


「……。……パーティ名なんて究極なんでもいい。価値を持たせるのは私達次第」


「……だなっ!」


 やっべ、あとでおばちゃんに聞いとこ。

 さすがにカーラさんに失礼すぎだわこれ。


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