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014.超感覚

 朝から依頼を受けて適当な魔物の領域に出かけて、狩りをして、ついでに錬金術の素材を持ち帰り、人間生存圏に戻ってから(安全な場所じゃないと危ないから)錬金術の練習をして、ギルドに完了報告する。


 こんな生活を続ける事1ヶ月。


「おいおい、最近儲けてるらしいじゃねぇか?」

「俺たちに恵んでくれよォ?」


 コッテコテの展開に巻き込まれてしまった。


「あー、金は買い物してばっかだからあんまないのよ。ごめんねおじさん達」


「ウソつけやこのガキャあ!」

「いいから出すもん出せよ!」


 う、うーむ。リアクションに困るなぁ。

 いや普通にちょっち怖いし、呑気に構えてる訳でもないんどけどさ。

 ただいざこういう展開を前にすると、どうしてもよくある叩きのめすパターンが脳裏に過ぎる訳で。


 いやでも実際のとこ、いっそ叩き潰す方が早いのかな?

 ただ後からどんどん仲間が湧き出してくるのは勘弁だし、俺ソロだからあんま人数揃えられたら普通に負ける。

 あと最悪なのは暗殺の類ね。油断してたり寝てたりしたらあっさり死ぬ自信がある。


 んー……悩むなぁ。


「おらビビってんのか?出すもん出したら見逃してやるぜ?」


 いや逃しては捕まえて、という定期的なカモにするってだけだろうに。

 金かぁ。錬金術で欲しいものを作るまでには金もかかるし、あげるのは困るか。


 しゃーない、やるかぁ。


「却下ァ!かかってこいやおじさん達!」


「お、おぉ?なんだこいつ急にテンション上がりやがって!」

「情緒不安定なら教会に診てもらえやゴラァ!」


 心配してくれてんのか怒ってるのか悩む怒声を合図に、俺とチンピラが衝突した。





「いやぁ、勝てたよ。はードキドキしたぁー」


 おじさん4人組、討伐完了!

 いや殺してはないけどね。単に気絶してるだけです。一応端っこの方とはいえ人類生存圏だし放置しときます。


「あ、でも戦利品くらいは良いよね?」


 懐をガサゴソ。

 うわ、お、俺より持ってるよこの人達……なんで俺なんかに絡んできたんだよ。

 まぁいいや、臨時収入だぜぇヴェハハハハァ!!


「しっかし、正直勝てるとは思わなかったな」


 だってこの人達ってD級4人だしね。

 同ランクで1対4。単純計算で不利。


「案外あの話も嘘じゃないのかもなぁ」


 その話とは、ギルドを創設した人が残した言葉のひとつだ。

 『魔物を倒すと、倒した魔物の魂が散る。その時に僅かだが魂をその身に宿す事で、冒険者の魂はより大きく強靭になり、実力を増していく』というもの。


 いやそれレベルアップとか経験値のシステムやないかい。とか思って鼻で笑ってたけど、あながち嘘ではないのかも。

 もしそんなシステムーーというか性質があるなら、数人より1人で魂をもらう方が多くもらえるだろうし。

 まぁゲームみたいに分配システムじゃなく、個人の受け取れる量の上限があるなら何人いてもそんなに変わらないのかも知れないけど。


 俺はほぼ毎日魔物を1人で狩ってるとはいえ、戦闘技術が洗練された訳でもない。

 なんせ指導してくれる師匠がいる訳でもないし。俺なりに工夫はしてるけど、独学の戦法の域を出ないのだ。


 ただし、より速く、より力強くなってはいると思う。


 錬金術や身体強化を毎日繰り返して、少しずつ魔力操作の精度が増してきている感覚はあるのだ。

 それにより以前より身体強化の効果が増してきている気はしている。

 まぁ思う、とか気はしている、といったように、個人で動いてるから確信はないけどね。気のせいってだけかもだし。


「明確に分かりやすい基準としては、以前行けなかったエリアに行くか、『超感覚』を使えるか試すか、だよなぁ」


 D級に上がって少し経った時に、一度ゴブリンの群れに囲まれた事があった。

 ゴブリンは俊敏さに欠けるし、いざとなったら逃げれるだろうと思って挑んだ結果、敗走。

 10匹くらいまではいけたんだけどね。だんだん物量を捌けなくなって、もうやばいと思って渾身の身体強化で逃げ出してきたって顛末だ。

 

 そこで以前よりも多く捌ければ成長したと判断しやすい。


 そしてもうひとつの『超感覚』を使う事。

 以前嗅覚だけ試して鼻をやられてから怖くて封印しっぱなしのギフト。

 実際、『万斛把握』ほどじゃないにせよ、察知系として役立つギフトではある。

 使いこなせたら確実に俺の戦力は増すし、安全性も跳ね上がるだろう。


 これまでずっと身体強化一本でやってきた。

 サブの戦法を模索する一環で錬金術にも手を出しているが、現在はまだ練習中で形になっていない。

 ……やってみるか?


「すぅ……はぁ……すぅ……」


 やっべ怖ぇー。

 あー世界の匂いが鼻から脳を直撃する感覚、臭くてたまらず込み上げる吐き気、ガンガン痛む頭としばらく効かなくなる鼻の恐怖が蘇るぅ……!


「落ち着け。集中しろ。魔力を丁寧に、ゆっくり……」


ーーギフト『超感覚』発動。


 ゆっくりと、少しずつ、雑にならないよう丁寧に、ギフトの……身体魔法系統の一端である『超感覚』の魔法の核に魔力を流す。


 ここで、詠唱やらがいらないのがギフトの良いところ。

 発動の補助機能がギフトに組み込まれてるからね。念じて魔力を通せば発動はする。

 問題はその後の操作だ。ここにも多少の補助機能は働いているらしいが、どうやら強弱は完全に手動らしい。


 例えばレオンハルトの『炎熱付与』なら発動して剣に炎を纏わせる事までは補助機能が働く。が、その強弱はレオンハルトのマニュアル操作で、そこで強い炎を作って、かつ操作が甘ければ剣は燃えてしまう。

 その威力の強弱と、発動した後の細かい調整は手動な訳だな。


 俺の場合、発動してどの感覚を強化するか選ぶ所までは補助が働く。

 全ての感覚でもいいし、嗅覚だけでもいい。ここの調整がある程度楽に出来るだけでかなり助かっている。なんせうっかり全身強化して操作ミスをしたら廃人になりかねない。

 そしていざ発動してからの感覚の強化具合は俺のマニュアルだ。うっかり強くしすぎると前回と同じ結果になる。

 また、感覚器官という繊細な部位に負担がかからないように優しぃーーく魔力を浸透させるという調整も自前である。


「お、おぉ?おおぉお?」


 細かい匂いが嗅ぎ分けられる。

 それでも匂いすぎて鼻や脳が痛むまではない。


「せ、」


 成功だァああああっ!!


「あ゛ッ!」


 うおぇえっくっっさぁ!!


「うっぷ……!」


 あー……危ない危ない。油断したわ。まぁ吐きまではしなかったし、最初は出来てた。

 そうか、あんな感じでやればいいんだな。

 

 よしよし、だいぶ掴めたぞこれ。

 これからは『超感覚』の練習もしていかないとな。


 さてと、そうと決まれば早く帰ろっと。

 チンピラのおっさん達の報告ってするべきなのかな。


 ちなみにちゃんと報告したところ、注意はしておくが、どうしても自己責任の域を出ない程度にしか力になれないとの事。

 まぁそうだろうね、管理する側の人数が明らかに管理される側と比べて少ないし。

 

 




 そして一週間程かけて『超感覚』が感覚ひとつずつなら維持できるようになってきた時だった。


「大変だ!モンスターパレードが起きたぞ!」


 なにやら異常事態が起こったらしいです。



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