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機械制民主主義  作者: 志賀 謙
連座 - Implication
61/110

マーサット社 5号棟 開発本部長室 『在室』

「松宮くーん、もう週刊██読んだ?」と挨拶もなく、唐突に入室してきている三沢専務。

「就業時間中なんですが」

「あなただってこないだ就業時間中に、(みんな)を集めたじゃない?」

「あれは、取材対応の関係者には情報共有を急いだ(ほう)()いかと……」

「で、読んだの?」

「読みましたよ。PPCの浅間さんが見せてくれましたので」

「どう思った?」

「特に曲解されることもなく、取材通りの内容だと思いましたが?」

 三沢専務はゆっくりと首を二度横に振った。

「相変わらず自分が興味のないことは深く考えないのね。巻き込まれた以上、そんなんじゃダメよ」

 それだけ言うと、来たとき同様、唐突に去っていった。


 あんたがそれを言うか?という気もするが、考えてみるか。

 週刊██にまず普通の紹介記事が載って何が悪い?載らなかった背景の『あんな話』は、週刊██への情報提供者から始まっている。提供された情報は、川島の評判を落とす内容だ。情報提供は川島の新党が立ち上がった直後、あるいは川島が██党を離党した(のち)に行われた。

 ここで、情報提供者は川島の動きを快く思わない勢力の差し金で動いた、と仮定してみよう。

 すると、情報提供を受けたはずの週刊██が、提供された情報をネタにせず、ごく普通に新党の紹介記事を載せたことは、情報提供者とその背後に居る何者かの思惑を外したことになる。

 ――なるほど、背後に居る何者かが動き出すかもしれないってことか――

 春川記者はその動きを(つか)もうとしているのかもしれない。


 それはともかく、その背後の何者かが人を派遣して、川島の動きを見張ってたりしないと()いなあ。私、川島の居るところまで直接出向いてしまったからなあ。あの(あと)自宅に帰ったが、()()はごく普通の一戸建てで、表札も掲げてある。尾行していれば名前まで把握できることになる。翌朝出社する私を尾行していれば、会社名も把握できる。人名と勤務先が判ってしまえば、私がどういう人間かも調べが付くだろう。(なに)せあの伊藤さんも似たようなことやったらしいからな。

 ――三沢専務の言う『巻き込まれた』ってそういう意味か?――

 拉致とか始末とかされるなんてことはないだろうな……。そういうリスクがあるのは、春川記者の(ほう)であって、私の(ほう)には……。


 ああ、私がきっかけになって色々動いてしまっているな、事態が。見方によっては邪魔な存在だ。()(ゆう)で済めば(あと)で笑い飛ばすとして、今は慎重に構えておくべきか……。

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