マーサット社 本館 M705会議室 『会議中』
「――以上が今までの経緯です。ここまではお解りいただけましたか?」
プレゼンの表示を背中に私が問いかけると、小林常務は目を瞬かせてから答えた。
「正直、解ったような、解らなかったような……」
「だから昨夜呑み過ぎないように言ったんです」
小林常務にも手伝ってもらうようにとの大石社長の進言で、まずは状況説明から始めたのだが、港北大学の教授達にした説明とは異なり、これが『政治判断の機械化実験』の一過程であることも正直に話している。
「つまり、AIを学習させている最中に、あなたがバカな質問をしたからバカな答えが返ってきて、今、それで大騒ぎになっているってことでしょ?」
こちらは『悪巧み』の気配を察して自ら殴り込んできた河合経営本部長。社長に直談判してきたらしい。基本こういう話には向かない事務方トップの二人だが、河合の方はまあまあ状況を理解してくれたようだ。この辺の理解力と判断力、さすが『ルーラー』と呼ばれるだけの……
「バカみたい」
……無視して続けよう。というかこいつも昨夜の酒が残ってるクチか?
「で、河合経営本部長の言うところの大騒ぎの一環として、大石社長の言う『産学連携』の体制が組まれた結果、この件は先ほどの四教授との間でC項まで情報共有されています。NDAの締結がまだ済んでいないこともあり、この先については開示していません」
「NDAでもたついているんですか?じゃあ、とっとと済ませましょう」
と小林さんが、自分の取り分を見つけたかのように応じた。
「あと、教授達には当社から、型落ち品や戻入品などの余剰機材を提供する約束になっています」
「タダで?」
「できれば」
「税法上、問題のないようなやり方を考えるべきですね。分かりました」
と、こちらも自分の仕事として引き取っていく小林常務。ああ、昔もこんなだったなあ、この人。さっきと違って何か生き生きして見える。こういう展開も久しぶりなのかな。
「ちょっと待って、あのお歴々って、そんな機材を使いこなせるの?」
「一応先方には村井さんが……」
「アテになるわけないでしょ。下手すると玲奈ちゃんに雑用が押し付けられるわよ。あの子はあの子で忙しいんだから」
「テクニカルサポートを付けても良いと社長は言ってたな。『隊長』に乗り込んでもらうか」




