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機械制民主主義  作者: 志賀 謙
連携 - Collaboration
18/110

マーサット社 本館 M117応接室 『使用中』

 C.国土を保持できない。


 1.インフラを維持できず、人口分布の偏りを止められない。(B項3参照)

 2.空いた土地を████に██████される。

 3.██████について、████は██████████する。

 4.日本政府の統治は、事実上国土の一部に限定される。

 5.以上のフローが多発する。


 というスライドを横に見ながら、私はオリエンテイション代わりの状況説明を終えた。説明の相手はロウテイブルの向かい側に座る港北大学の教授達、左から


 ()(たに)(あつ)()教授(経済学)

 (ます)()(たか)(ゆき)教授(法学)

 (さわ)()(こう)(いち)教授(政治学)

 (むら)()(よし)(ゆき)教授(理工学)


 の四人、かたやこちらは私と大石社長の二人。なんとなく力負けしそうな布陣であり、全員が黙りこくっているのだから雰囲気も重い。


「以上は『大半の政治関係者は政治より(おの)が利益を優先する』というのが前提の計算結果ですので、いわば極論の(たぐい)です。専門家の方々から見て『ありえない』と判断される、その根拠をご教示いただけると大変助かります、気持ち的に」

 と、なんとなく言い訳じみて聞こえる言い草で水を向けてみた。

「要するに、『地方を大事にしろ』ということですかね、C項については」

 とまとめた(のち)、村井教授は身を乗り出して他の三人の顔を見渡す。『誰か(なん)か言えよ』ということだろう。

「この前提となっているB項の少子化による経済規模の縮小ですが――」

 と、小谷教授が軽く手を挙げて応じた。

「――()(はや)我々の間では定説となっているものです。理論的な補強をいただいてありがたく思います」

 それだけ?A項の『国家財政は改善しない』についてはノーコメント?言うまでもないとか?

「少なくとも、今の日本にはC項の2を網羅的に防止する法律は、存在しませんね」

 と増田教授が続いた。

「類似の法律がないことはないのですが、適用範囲が非常に限定されているのです」

 少しの間が空き、沢田教授が息を()いてから口を開いた。

「今、画面に出ているC項の2から3ですが、意図的に、いや戦略的に実行される(おそ)れはあります」

「戦略的に?」

「██学的に見て、████が██████████というのがありますからね」

「あー……」

「████の██を████れば███に████ことになり、████なら██に████られます」

「つまり、否定できない、と?」

「少なくともこの場で一笑に()せるようなものには見えません。具体的にどう実現するのかは、今後の検討ですが」

 しばしの重い静寂。発言が一巡したところで、専門家達は沈黙に戻った。

「つまり、皆さんの目から見ても、この『予想』は絵空事には見えないということですか?」

 沈黙を破って大石社長が問いかける。

(なん)と申しましょうか、『政治家がマトモな政治をしない』という前提は、我々も考えていなかった軸なのです」と沢田教授が応えた。

「『政治家は常に(おの)が利益のために動く』ということですよね。その原理を組み込んで考え直すことになります」と小谷教授も言い添えた。

「いずれもいくつかの国で現実に起きていること、または既に始まっていることですが、なぜそれらに対して政治家が無力だったのか、という点に対して、有力な仮説をいただいたように思います」と増田教授がありがたくもなさそうな口調で言った。

 そしてまた、沈黙が降りる。

「この場で即答を迫られても困りますよね。持ち帰って検討ということでいかがでしょう?」

 と村井教授が助け舟を出した。この場の全員がその船に乗っかろうと(うなず)く。

「ついては、本学でも独自のシミュレーションを組んでみたいので、その方面のサポートをよろしくお願いしたいですね」

 と(なに)やら楽しそうに付け加えた。

 さすがだな、村井さん。この場のこの雰囲気であくまで自分の要求を押し通すか。

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