↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
機械制民主主義  作者: 志賀 謙
連携 - Collaboration
PR
13/110

港北大学 西山キャンパス 1号ホール

「――以上で関係各方面から話せと言われたことは、概ね網羅しましたので、この辺りで締め括りとさせていただきます。退屈な話を我慢強く最後まで聴いてくださったことに、感謝申し上げます」

 と私が壇上で述べ、一礼すると、驚くほど大きな拍手が沸き起こった。思わず少しのけぞってしまったくらいだ。何度やっても慣れないものだ。

「では、質疑応答のお時間を少々いただいておりますので、質問のある方(かた)はどうぞ」

 と司会者の方(かた)が呼びかける。え?そんな時間上げたっけ?と私は思ったが、そういえば前回もそんな流れだった。

「はい、そちらの青いジャケットに赤い蝶(ちょう)ネクタイを締めた、大きなメガネの男性の方(かた)」

 司会者が言った通りの人物が立ち上がった。指名されようと目立つ格好で来たな。そういえば去年の質疑応答の終わりに『指名されるコツ』としてそんなこと言ったような気がする。

「本日は貴重なお話をありがとうございました、松宮本部長。ところで質問なのですが、御社の『サークル』というのは、社員の参加率は如(い)何(か)ほどなのでしょうか?」

 予想していた質問だ。私はタブレットを一(いち)瞥(べつ)し、調べてきた数字を確認してから答えた。

「実際に活動しているのは、年平均にすると二十%ほどです。皆さん仕事がありますからね。各々の状況に応じて増減があります。名義上なにがしかのサークルに属している比率は……、七十五%?ホントか?これ」

 会場が笑いに包まれる中、どこか感心したように頷(うなず)く者も多く居た。

「あ、あと、弊社では人に呼びかけるとき、役職名は使わず、『さん付け』で呼ぶのが一般的です。例外は、何(な)故(ぜ)か同期の間でのみ、お互いを呼び捨てにするケースが多いところですね。逆にあえて役職名で人を呼ぶときは、『役職にふさわしい振舞いをしろ』との皮肉が込められている場合が多いような気がします。弊社の営業本部長が、ちょくちょく私のことを『松宮開発本部長』と呼ぶので」

 また笑われた。どうも余計な事を言ってしまった気がする。

「よろしいですか?では、次は、そちらの緑色の髪に角(つの)が二本の方(かた)」

「ええと、松宮さん、御社ではリモートワークが定着しているとのことですが、リモートとサークル活動は両立しているのでしょうか?」

「サークルによりますね。模型でジオラマを作っているサークルでは、皆さん社内に作業場を作って籠っていましたが、そこから派生したバーチャル3Dでジオラマを作るサークルは、会社に来ることに拘(こだわ)りはないようです。ただ、業務はリモートで可能なのに、サークルのために出社してくる人間は多いようですね。何(なん)のためにリモートワークの環境を整えたのか、解らなくなっています」

 また笑いが起きる中、当社のリモートワークの柔軟な運用のお陰で、介護離職に陥らずに済んだ自身の過去を思い出す。まあ、そういう話はこの場には似つかわしくないかな。人事部に任せとこう。

「次は……、そちらの白い猫耳の女性の方(かた)」

「先ほど『ネームド』を認定する委員会が設置されている、というお話でしたが、何(な)故(ぜ)なんでしょう?」

「社内で同じ二つ名がカブらないように管理するためです。基本的に『ネイムド』は、多くの部署で名前が取り沙汰される活動範囲の広い人達なので、取り違えることがないように、と定められたルールですね」

「はい、そちらの顔と服が迷彩の方(かた)」

「『ルール』と言えば、実例として『ルーラー』という方(かた)を挙げられていましたが、『ruler』とはルールを決める人というより、『支配者』という意味の方(ほう)が一般的だと思うのですが」

「その通りです。彼女は場のルールを定めることにより、その場の雰囲気を支配してしまう名人なんです。『ルーラー』とはその辺を意味するネイミングですね。あ」

「どうされました?」と司会者。

「いや、『ルーラー』について言及したことが後(あと)で本人にバレたら、どういう目に遭うかと思っただけで……」

 また会場は笑いに包まれた。楽しそうだなあ、皆さん。私は辛(つら)いばかりなんだが……。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。