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第11話「協力者」

 (しずり)小蜜(こみち)がひとまず打ち解けてから、数十分。なんやかんやで2人は話に花を咲かせており、俺はその横でただぼーっとして過ごしていた。やはり男の俺より同性同士の方が話しやすいのだろう。2人とも俺と話しているときよりも、屈託がなく楽しそうに見える。


「――初月くん?」


 ふと垂が俺に声を掛けてきた。


「ん?」

「ごめんね、ずっと私達だけで話し込んでて。よかったら初月くんも一緒に話さない?」


 俺だけ蚊帳の外だったことを申し訳なく思ったのか、俺も輪に入るよう誘ってきてくれたようだ。しかし……正直、女子2人に話を合わせられる自信はないし、2人が楽しいのならそこに俺が加わらなくても別にいいと考えていた。特に、今日は俺が2人を繋げたわけだし。


「2人で話してていいよ。正直、俺じゃ女子の話題に付いて行けそうにないからさ」

「そう? 別にそんないまどきの女子みたいな話をしてるわけでもないと思うけど……」


 そう言う垂はベッドに腰掛けながら、小蜜の独特な色の髪を弄んでいる。どうやら彼女の髪を結っているらしい。うん、まさにそういうのが男の俺にはよくわからない領域だ。


挿絵(By みてみん)


「ふふ、別に男性でも女性の話題に詳しい方もいますよ。だって、窓辺先生はいつも――」


 小蜜も俺を説得するようなことを言ってくるが、ふと言葉を止めてしまった。


「? どうしたのよ」

「あ、いえ……私が看護師さんの話に付いていけないときでも、窓辺先生はいつも看護師さんと仲良くお話ししていたので……」


 そう言って俯いてしまう小蜜。その窓辺という人物の話は前にも少し聞いたが、いまの彼女の様子を見るに、何かあったのだろうか。


「窓辺先生って? ここのお医者さん?」


 垂もこの病院にお世話になって長いはずだが、流石に医者の名前までは把握していないらしい。


「はい、窓辺先生はこの病院のお医者さんです。よく病室に来て私とお話ししてくれていたのですが……最近はずっと体調を崩しているらしくて、病院に出勤できていないそうなんです。確か私と陽司(ようじ)くんが出会ったときくらいからでしょうか……」


 俺と小蜜が出会ったときとなると……もう2週間くらい前になるか。医者がそんな長い期間体調を崩しているとは、余程の病気に罹ってしまったのだろうか。どうやら小蜜も懐いているようだし、なるべく早く復帰してやってほしいところだ。


(……というか、もう2週間か)


「そういえば陽司くん。あのペンダントの持ち主は、見つかりそうですか……?」


 小蜜と出会って、2週間。つまりペンダントの持ち主を探し始めてからも2週間が経ったということだ。彼女もちょうど同じことを思い出したようで、俺に進捗を尋ねてきた。


「ごめん、まだなんの手掛かりもないよ。もしかしたら、あの住宅街にはいないのかもしれない」

「そうですか……。でも、陽司くんが謝ることじゃないですよ。私が無理を言って頼んでるんですから」


 俺も小蜜も、そのまま黙り込んでしまう。いまの調子では、探し人を見つけることができるのはいつになるかわからない。行き詰まるどころか、まだ最初の一歩目すら踏み出せてはいないのだから。


「…………」


 ついさっきまで和気藹々としていたはずなのに、病室内には気まずい沈黙が満ちていた。


「ね、ねぇ」


 しかし、それを最初に破ったのは意外にも垂だった。


「ん、何?」

「その……2人とも何の話してるのかなぁと思って。私に関係ない話なら、聞かない方がいい……?」


 もじもじしながらこちらの様子を窺ってくる。そういえば、垂には人探しのことは黙っていたのだった。手伝わせることになったら悪いと思ってのことだったが、いまの垂の様子を見るに、どうやらが興味あるらしい。


「……小蜜、垂に人探しのこと話してもいいと思う?」


 とりあえず小蜜に確認してみる。そもそも俺だって小蜜の頼みを聞いているだけなのだから、垂に話すかどうかは小蜜が決めるべきことだろう。


「はい、私は構いませんよ。どのみち私には何もお手伝いできませんから……陽司くんに任せます」


 そうきたか。小蜜のプライベートに関わる事柄だろうに、俺に任せられてもなぁ……。しかしここで話さないことにするのも、なんだか隠し事をするようで垂が可哀そうな気もする。それなら、とりあえず話すだけ話してみても構わないだろうか。


「……わかった。垂にも話しておこうか。別に聞いたからといって、何かに巻き込まれるわけでもないんだし」

「はい、陽司くんがそう言うのなら」


 小蜜の同意も得られたため、俺は小蜜との出会いやペンダントのこと、探し人について垂に話していった。



 *



「――それなら、私も協力する」


 俺の話を全て聞き終えた垂が最初に発した言葉は、それだった。


「人手は多いほうがいいだろうし、私なら車も使えるから初月くん1人で探すよりずっと効率がいいと思う」


 それは確かにその通りだろう。しかし……。


「本当にいいの? いまのところ、どれだけ時間を掛けても見つけられるかどうか怪しいレベルだけど……」


 手掛かりもなく捜索範囲も茫洋としているいま、人数を増やして車という足を得たところで、どのみち終着点は見えてこない。最終的に見つけることができずに諦めることになる可能性だって十分ある。もちろん、小蜜のために見つけてやりたいとは思っているが……。


「それでも手伝うわ。だって、せっかく友達になれたんだもん……。私にできることはしてあげたいの」

「……そっか」


 彼女が手伝うかどうかは彼女が決めることであり、俺に止める権利はない。これ以上渋るのもいい加減くどいだろう。


「垂ちゃん、ありがとうございます。私、何かお返しをすることもできないのに……」

「お返しなんていいのよ。でも、そうね……。見返りを要求するつもりなんてないけれど……よかったら、明日からも私と友達でいてくれる?」

「はい、もちろんです。私ももっと、垂ちゃんとお話ししたいですから」


 そう言ってまた手を握り合う2人。今日会ったばかりだというのに、随分と打ち解けるのが早い。単純に年の近い女子同士だからというのもあるのだろうが……もしかしたら、病院という一般社会とは隔てられた環境で育ってきた者同士、シンパシーのようなものもあるのかもしれない。……まあ何にしても、どうやら明日からは垂と2人でペンダントの持ち主を探していくことになるようだった。

読んでくれてありがとうございます!

拙いですが、イラストも入れました。今後もちまちま入れていきます。


これでようやく初期メンバーが揃い、次回からはストーリーが動きます!

12話以降もよろしくお願いします!

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