35.総帥
アースウィン王国王城、第一王子であり王位継承権第一位のヘヴンフォール・アースウィンの執務室。アースウィンの王族の特徴である気品のある茶髪を掻き上げながら、ヘヴンフォールは訪れた人物を歓待していた。
「空崩の対応、ご苦労だったね。ロウリー」
労いの言葉を受けて、机を挟みヘヴンフォールの正面に立つ初老の男は軽く一礼して返す。
「今回の空崩の規模は予想以上でした。他の者では指揮を取れますまい。俺に頼んで正解でした」
次期国王を前にしても、その自信に満ちた態度はそのままだ。
ギルド総帥ロウリー・セアダズル。彼はここ最近、『空崩』と呼ばれる、天の裂け目から魔物が降り注ぐ現象に対応する部隊の総指揮に出向いていた。それを頼んだのはヘヴンフォールであり、こうして事後報告にやって来ているのである。
「その物言いだと、未だに後継者は見つかっていないようだね」
「有望な冒険者は先のコルヴァの龍災で失われてしまいました。今の腑抜けばかりからは選べません。いっそのこと、冒険者ではなくギルド職員から次の総帥を選ぶのも宜しいかと」
総帥ももう歳だ。次の総帥を選定して引退を考える時期だった。
総帥の地位は通例冒険者が就くものだ。名声のある冒険者が総帥であれば、その威名だけでギルドが冒険者を纏める助けになるからである。だが、通例なだけで、ギルド職員が総帥になることも可能だ。職務内容も事務的なものが多いため、本来であればギルド職員が就任すべき職である。しかし、今では冒険者が総帥になり、有能なギルド職員を秘書に置き、業務を丸投げするのが主流になっている。ロウリーはまだ自力で事務処理もこなす方であり、秘書も秘書として扱っているため、その真面目さもまたロウリーが冒険者から羨望を集める要因になっていた。
「龍災、か。そういえば、空崩制圧の指揮と引き換えにあなたが要求した案件はつつがなく進んでいるよ」
「おお、本当ですか。それはありがたい。周期的な大龍災ではない小さな龍災の存在の公表と対策、そして脱地龍化の推進。正しく地龍の恩恵でここまで成り上がった俺が提言しても、誰も耳を貸すはずがないですから、ヘヴンフォール殿下に聞き入れて頂けて幸いでございます」
「コルヴァの大龍災で世論も地龍排斥派と地龍擁護派に二分している。僕が王として民衆の支持を得る良い機会だ。もうすぐこの国は変わる。あなたの言う通り、これまで地龍に依存してきた分の負債はそろそろ支払われるべきだよ」
「いやはや心強い。殿下が王となられる日が楽しみですな」
優しく微笑むヘヴンフォールに、ロウリーは膝をついて敬意を表す。ロウリーはヘヴンフォールの瞳を見た。その瞳はどこまでも続く深淵。冒険者として人間を見る目を養ってきたロウリーにも、ヘヴンフォールの腹の底が読めなかった。一見優しげに見える風貌に、隠された闇が飼われている。ロウリーが直感出来たのはそこまでだ。
「この後は盛大な凱旋パーティー、と言いたいところだが、生憎今回の作戦は秘密裏だ」
「コルヴァの龍災があってすぐに空崩までとなれば国民が不安になる、ということでしたな。何、パーティーなぞ不要。俺は最初の要求が受け入れられれば十分です。そちらはくれぐれも頼……」
「ヘヴンフォール殿下!総帥殿!至急、いや大至急の報告が!」
二人の会話を遮り、近衛兵の慌てた声が扉の外から響く。本来であれば無礼極まりないが、優秀な近衛兵が礼を欠くということは、それだけ急ぎの用であることの表れだ。
「入りなさい。……何があったんだい?」
「し、失礼します!只今申し上げます!ギルド総帥秘書、カトレア・ファスモダンが魔族に連れ去られたとの報告が!」
「カトレアが!?それは本当なのか!?」
ロウリーは目を見開いた。秘書である以上に、ロウリーは身寄りが無いカトレアを娘のように気に掛けていた。そんなカトレアの身が危ういとなれば、狼狽えるのも当然だ。
「はい!報告書には大冒険者レックス・アスター殿の印章付きです!」
「それは一大事だけど、少し取り乱しすぎではないかな?ここは僕の執務室だよ」
「も、申し訳ございません。ですが、それだけではなく、魔族の目的が地龍を地上に呼び起こすことにある、とも報告書には書かれており……」
「地龍を呼び起こす?いくらかの有名なレックスの印章があるにしても、それはデマだろう。荒唐無稽が過ぎるよ」
「ご、ご報告申し上げます!たった今、コルヴァの調査に向かっていた者からの信号が確認されました!地龍が……、地龍が顕現致しました!」
ヘヴンフォールが澄ました表情で否定しようとするも、立て続けにやって来た衛兵の血の気の引いた口から、それが真実であるのを裏付ける恐ろしい報告が飛び出した。
ヘヴンフォールは小さく舌打ちをした。温厚な彼にしては珍しいと思うも、国の一大事に王子が焦るのは当然だとロウリーは思い直した。
「これは、急を要する一大事ですね。俺はすぐに冒険者を纏め、コルヴァ方面へ向かいましょう」
「……それは賢明ではないね。地龍相手に冒険者が束になったところで勝ち目はないよ」
「まあ、龍災の規模から察するにとてつもなく強大な存在なのでしょう。であればこそ、立ち向かわなければこの国の滅亡は避けられません。故国の滅亡を黙って見ているわけにはいきますまい」
「コルヴァで力ある冒険者全員が為す統べなく呑み込まれたというのに、それでも抗えると思うのかな?この王城はエイデアス大陸でも最硬の防御力を誇る建造物だ。引っ込んでいれば無駄に命を散らさずに済むんだよ」
ヘヴンフォールに無駄だと引き留められるも、ロウリーの意志は変わらなかった。
地龍が目覚めたことが正式に公表されれば、王都は大混乱に陥るだろう。そんな中で地龍に対抗するための戦力・物資を集めるのは容易ではない。
それでも、ロウリーは持ち前のカリスマ性で、準備出来る最大の戦力を纏めてみせた。
* * * * * * *
≪エイデアス 530/4/22(木)12:40≫
≪日本 2020/7/23(木)3:25≫
そうして決死の思いでコルヴァへと向かったのだが……。道中、どこまで行っても地龍の姿は無い。近隣の町村を調査させても全く被害が確認されない。
そのままコルヴァの近くまで進み、ようやく見つけたのは、地面を何か巨大な物が通ったような抉れた痕跡。それを辿って確認すると、一度急激に方向転換した後、途切れてしまっていた。
普通に考えれば、地龍の動いた跡だ。しかし、これを地龍の痕跡とするなら、地龍はどこへ行ったと言うのか?全てが異常だ。
考えても仕方がなく、今はカトレアを救出しに向かったというレックスを探して事情を聞き出す位しか出来ることがない。途中の町では出会わなかったため、コルヴァに居なければどこかで行き違いになった可能性が高い。最悪のシナリオとしてどこかで命を落とした可能性もあるが、レックスに限ってそれはないと思い直す。
(魔力障害の起こるコルヴァに滞在しているとは考えにくいが、人海戦術で手早く捜索しよう。それにしても、かつて稼がせてもらったコルヴァも、今では見る影も無いのだろうな)
冒険者として最前線で戦っていた頃を思い出しながら、森を抜け、コルヴァを囲む草原地帯に出た。
その時、コルヴァの南上空に、謎の飛行物体があるのに気が付いた。それはコルヴァに入ろうとしていたようだが、突然進路を変えてロウリー達の方へと向かってきた。冒険者たちは即座に武器を手に握り、身構える。王都の冒険者は前線から退いているとはいえ、元精鋭揃いであり、しっかりしていた。
ロウリーも最初は最大限の警戒をしていた。しかし、それが近づくと、警戒の必要は無いと判断するに至った。それは、天竜馬に跨るレックスだったのだ。地に舞い降りた天竜馬の背からレックスが降りる。
「総帥。久しぶりだな」
「レックス。良かった、生きていたか。お前の報告書を読んでここへ来たのだが、今はどのような状況だ?カトレアは?地龍は?」
「ああ、新たな報告をしに王都へ戻るべきか迷ったが、総帥であれば駆けつけると信じてコルヴァに滞在していて良かった」
「何か進捗があったようだな。だがその前に、今コルヴァに滞在していたと言ったな?いくらお前が理不尽に強くても魔力障害防げまい。大丈夫なのか?」
「その辺りの説明は別の適任者が居る。まあ、端的に言えば魔力障害はもう気にする必要は無い。だから、こんな草原でお喋りしてないで、まずはコルヴァへ入ろうじゃないか」
親指をコルヴァへと向けながらキザに笑うレックス。ロウリーの後ろで何人かの女性冒険者が倒れた。ギルド本部でよくある光景だ。全員幸せそうな安らかな寝顔をしているため、問題は無いだろう。
ロウリーはレックスに連れられコルヴァに入った。コルヴァで最も使用頻度の高い東門には赤い髪の門兵が待機していた。この時点でおかしい。どうしてコルヴァに門兵がいるのか?疑問を抱きながら門を通り、ギルドへと案内される。
「総帥……?」
「カトレア!」
受付カウンターの奥にいたカトレアと目が合う。飛び付きそうな勢いでロウリーはカトレアに詰め寄り、安堵から相好を崩した。
「良かった……。魔族に連れ去られたと聞いて肝を冷やしたが、無事のようだな」
その声色は我が子を慈しむようだった。
対するカトレアは、硬直している。総帥の第一声が予想外のもので、それがカトレアの罪悪感を搔き立てた。しかし、頭を横に振って意を固め、ロウリーと目を合わせる。
「総帥、私はあなたに心配されるべきではありません。今回のことは、全て私が引き起こしたことなのです」
「レックスからある程度聞いている。弑龍会に与していたようだな」
「……聞いているのでしたら、どうしてお怒りにならないのですか。私はあなたとフィリを利用し、自分の野望を達成しようとしたのですよ」
カトレアのその唸るような低い声は、罵倒され断罪されるのを覚悟しているようだった。
しかし、ロウリーは怒りを全く顔に出さず、首を横に振って見せた。
「俺もこの国の在り方には疑問を抱いていた。コルヴァの龍災が起きてからは特にな。地龍の恩恵にあやかって生きてきた俺がそう思うのだから、地龍に故郷を奪われたお前はさぞかし世の中を恨んでいたのだろう。俺がもっと早く動けていれば、お前にこのような選択をさせることもなかったのかもしれない」
「気付いておられたのですか、私の過去に」
「総帥の地位であれば、闇に葬られた龍災についても調べられるのでな。まあ、そこから地龍を恨んでいることまでは推測できても、まさか弑龍会の手まで借りようとするとは思わなんだ。だが、もう思い詰める必要は無い。お前が役所に突き返された頃とは違い、今は国も地龍頼りの国政を見直そうとしている。お前の故郷の復興も行われるだろう」
「え?あの、えっと……」
先程まで裁かれる覚悟で固い表情をしていたカトレアは、一瞬素の表情に戻って戸惑いだした。
「言いたいことはあるだろう。もちろん過去が戻るわけではない。お前の悲しみが癒されるわけでもない。しかし、もう暫くは矛を収めて、これからのアースウィン王国の進む道を見てやってくれないか?」
「そうではなくて。もう私の目的は達成されているので、矛も何も……。レックス様、最も重要な情報を伝えていないようですね」
「目的は達成されている?どういうことだ?」
「にわかには信じがたいことなのですが、地龍は……。あの天災に等しい化け物は、火の光の巫女の支配下になりました。もうこの世界が地龍に脅かされることはありません」
「……は?」
理解不能の言葉に、ロウリーは長年培ってきたカリスマの風格を崩さずにはいられなかった。
そうなるのも仕形がない、とカトレアも同情する。
地龍の目覚めの報告を受けてロウリーがコルヴァに至るまで、五日。カトレアは五日前に起きた衝撃の出来事を、ロウリーに説明した――。
ギルドコルヴァ支部二階、当直室。ロウリーはカトレアに促されてそこへ向かった。
地龍は確かに目覚めた。そして、神に定められた光の巫女なる少女の手により鎮められた。まるで、400年前にエルフの聖女が天龍を討ったという御伽噺のように。
ノックしてから扉を開けると、部屋には赤い髪の少女アンナが、ベッドに横たわる金髪の少年エヴァンを見守るように座っていた。
「えっ!?ギルド総帥様!?」
アンナは部屋に入ってきた人物を見るな否や、椅子から飛び上がって服の乱れが無いかをチェックしだした。前触れ無しに組織のトップが挨拶しに来たのだから慌てるのも仕方がない。それだけでなく、最初は総帥を疑っていたものの、総帥の権限は一時的にカトレアに移っており、今回の件に総帥は全く関与していないと判明し、少しばかり負い目を感じているのも慌てる要因の一つだ。
そしてロウリーの方は、エヴァンをチラッと見て一瞬瞠目する。昔フィリが最も懐いていた子であり、今もフィリが想い続けているのを知っている。しかし運命は残酷で、エヴァンはフィリではなくアンナを選んだ。フィリが悲しみに暮れることが確定したのは残念だが、若者の恋愛に口を挟むつもりはなく、再びアンナへと視線を戻した。
「君がアンナ・ガーネットだな。畏まらなくていい。話は大体カトレアから聞いている。どうせ俺はすぐに総帥の座を退く。秘書と孫がこれほどの事件を引き起こしたのだ。分かるだろう?」
「えっ、ああ、まあ……」
「そして、その被害を最も被ったのは、紛れもなく君だ。龍災の町コルヴァに配属など、さぞかし俺を憎んだことだろう。なのに、その無茶な指令を投げ出さなかったどころか、地龍を鎮めてこの国を救ってしまうとは。己の使命を全うし大事を成し遂げるその実直さ、俺は君ほどの人物を未だかつて見たことが無い」
ロウリーの熱の籠った視線がアンナを貫く。アンナはとんでもなくロウリーに買われてしまっていることに気が付いた。このままだと嫌な予感がするので、大げさに手を振りながら否定しようとする。
「あ、あの。それは買いかぶりすぎです。こんなこと、私一人では到底成し得ませんでした。殆どが異世界からの来訪者たちのお陰で、褒めるなら彼らを……」
「その者たちの話も聞いている。もちろん彼らにもそしてそこのイ、ではなくエヴァン君にも国から大きな褒章が与えられるだろう。だが、君は特別だ。聞いたところによると、地龍を意のままに操れるようになったとか」
「い、意のままにという程では……。供物となる肉を大量に用意すれば、多少は言うことを聞かせれますが、過信されると困ります」
「なるほど、にわかには信じがたいが、それが事実でなければ今頃、町がいくつか地龍に踏み潰されていただろうな。君には地龍を操れる武力も備わっている、と。ならば気荒い冒険者も認めることだろう」
否定してもロウリーの熱意が冷めることは無かった。
「えーっと、総帥様?私には《熱操作》がありますので、一度頭を冷やしてもらいたく……」
「必要ない!アンナ・ガーネット、君を次期ギルド総帥に任命する!」
「えぇぇえぇぇぇぇぇぇ!!?」
嫌な予感がそのまま的中した。
「いやー、ちょうど後継者探しに難航していたところにこんな最適な人材が見つかるとは、僥倖僥倖」
「待って!本当に落ち着いてください!私、まだ学校を卒業したばかりの小娘ですよ!?総帥なんて務まるわけないでしょう!」
「そうだろうか?君、本当は今年のギルド職員科卒業生の中で抜群のトップ成績だったのだろう?総帥の業務なんて冒険者上がりの俺にでも務まるのだから、勉学に秀でた君なら何の問題も無いはずだ」
「能力の問題ではありません!実績とか年齢とか、その辺りが積み重なっていないと絶対に反感を覚える人が出てきます!」
「実績ならこれ以上ないものが既にあると思うが。年齢に関しても、冒険者は良くも悪くも実力主義、地龍をチラつかせれば年齢で君を舐めて掛かる者も居まいよ」
「ですから、地龍はそんなに使い勝手のいい存在ではありません!冒険者に襲われたら普通にボコボコにされちゃいますよ!」
何とかロウリーを言い包めようと必死になるアンナ。そんなアンナを見て、ロウリーは、ふぅむ、と唸って考え込む。
「……もしかして、総帥、なりたくない?」
「えっと、その……」
「高い給金、平民でも貴族並みの権力を振るえ、人々の尊敬の眼差しを一身に受けられるのに?」
「ま、まだ何も言ってないじゃないですか」
「その態度は肯定しているようなものだよ。理由を聞いてもいいかな?」
アンナはロウリーの物腰が軟化したように感じた。普段の威厳のある口調はロウリーの権力者としての仮面であり、今は孫に接するお爺ちゃんのように目線の高さを合わせている。
遥か雲の上の人だと思っていた人間にそのような態度で接されれば、アンナも一歩進み出て答える気にさせられてしまう。
「……その、誤解の無いように先に言っておくと、総帥の地位に全く興味が無いわけではないんです。学校で勉強を頑張っていたのも、できるだけ出世して家族を安心させたいからでしたし」
「ほう、だったら君の望みはすぐに叶うはずだが?」
「ですが。ここまで来たのなら、この町の復興を最後まで見届けたくて。コルヴァの現状を最も理解しているのは私だと自負していますし、最後まで責任を持ちたいんです」
「ふむ、なんと素晴らしい心持ちだ……。やはり私の見立てに間違いは無かったようだな。それなら、復興が済んでから総帥になれるよう手筈を整えて……」
「それだけでなく、来訪者達の対応も、私が適任です。この異世界と繋がる現象は未だに謎だらけで、何も知らない者にコルヴァのギルドは任せられません。この現象に収束が見られるまでは、起きた事象を全て知っている私が担当する他ないかと」
「それは……、うん、確かに」
アンナの主張は理に適っていた。地龍の件は解決したが、その裏で巻き起こっていた異世界人の来訪については、ロウリーも今まで聞いたことが無い、純然たる未知の現象だ。今回は上手くはたらき大いに助けられたが、今後それが問題を引き起こさない保証はどこにもない。
「……優秀な人材は、総帥などよりも、その才を生かせる座に就くべきか。では、今度は正式に、君をコルヴァ復興の総責任者に任命しよう」
「ご理解いただけて、何よりです」
結局ロウリーが折れる形となった。説得が成功し、アンナはホッと息を吐く。
「だが、総帥の座を譲るのには詫びの意味もあった。それが受け取られなかった以上、別のものを用意しなければな。欲しい物、困ったことがあればいつでも俺を頼ってもらいたい。まあ、その時には俺は何の権力も持たないただのじーさんになってるかもしれないがな」
「そういうことなら、権力のあるうちに利用させてもらいますね。今、コルヴァは絶賛冒険者、後はその他住民を募集中ですので、是非お力添えを願いたいと」
「ははは、そんなものはこちらから願おうとしていたところだ。今日連れてきたのは王都では選りすぐりの強者達、奴らも地龍討伐に参加できなくて力を持て余しているはずだ。扱き使ってくれて構わないよ」
ロウリーの目には、アンナがギルド職員という職務にどこまでも忠実で誠実な少女に映っただろう。
だが、アンナはちょっぴりロウリーを騙していた。アンナがコルヴァに残りたがった本当の理由は、ユウ達来訪者と別れたくないからだ。現象を解き明かすだのなんだのよりも、もっと彼らと話をしたい。そして、助けられた分の恩返しをしたい。何せ、彼らの抱える問題は未だに何一つ解決されていないままなのだから。
三章終了。次から最終章です。
伸びなさすぎて第二部以降の存在は恐らく無かったことになりますが、第一部はきちんと終わらせますので、ここまで読んでくださっている方は是非最後まで楽しんでいってください。




