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第六話 手がかりへの足掛け

 私達は、神様の過去最大の尻拭いのために異世界から来たこと、この世界で果たすべき役目、後二人同じ世界から来た異世界人がいる事。それらを話した。言っていなかったことも多少あったので、フレイノールさんも驚いていたが、最後には「これも人生かねぇ。」とため息をついて納得していた。

 ガッシュさんは、話を聞きながら外の情報と合わせて考えてくださっていた。

 ミューラちゃんは静かに聞いていた。


 「異世界人ねぇ…」

 ガッシュさんが少し考え込んでいた。

 「ガッシュ、なんか知ってるなら言いな。」

 フレイノールさんが問いかける。

 「いや、知ってるってほどじゃねえんだけどよ、3年前にも異世界人が来て、その異世界人がたったの10日で魔王を討伐したって言う話を行商人から聞いたことがあってよ。」

 3年前!?10日!?2つも合致する!

 「すみません、その異世界人の方の話をもう少し詳しく聞くことはできますか!?」

 今まで不動だった野原くんが身を乗り出して聞いていた。

 「あ、あぁ、あくまで噂だが、その行商人が言うには、バケモンより5倍はバケモンって呼ばれてたらしい。その戦闘を見たやつらからついた二つ名が『究極狂戦士(アルティメットバーサーカー)』すまんがそれ以上のことはわからねえ。すまん。」

 ガッシュさんも急な野原くんの変容に驚いてはいたが、本当に知ってることは少ないようだ。

 「・・・わかりました。ちなみに魔王討伐の後からの3年間で、何かすごい大きな出来事ってありましたか?」

 野原くんが質問を続ける、そこまで聞くっていうことは、神様が言ってたその人と面識があるっていうことなのかな?後で聞いてみることにしよう。

 「・・・そうだな、一番でかい話だと思うのは、ここからずっと向こう側の東に新しい街が出来たって話だ、普通の街じゃあここまで話が届くわけがねえから、よっぽどの街なんだと俺は思ってる。そんぐらいだ。」

 街ができた話ぐらいか・・・

 「わかりました、僕からの質問は以上です。答えていただきありがとうございます。」

 野原くんがペコリと頭をしっかり下げると再び椅子に座り直した。

 「他の質問はなさそうだね。そしたらミューラはこいつらと旅を同行するよ。いいねガッシュ?」

 またフレイノールさんが途轍もない営業スマイルでガッシュさんに圧をかける。

 「・・・ここまできて断れる訳がねえからな、良いだろう。ただし条件をもう一つ付けさせてもらう。」

 真剣な顔つきでガッシュさんが人差し指を立ててこちらを見る。

 「ミューラが帰ってきて、同行が嫌だと言ったら、その時点で同行は終わりだ。守れるならもう俺からは何も言えることはねえ。」

 ガッシュさんがミューラちゃんのことで初めてまともな事を言った。ような気がする。

 「ふん、そのくらいのことは当たり前さ。あたしが絞めてでも守らせてやるよ。」

 私も野原くんもしっかり頷いた。

 「そうかい、姐さん、お二人さん、ミューラを頼む。」

 ガッシュさんは一気に老け込んだ感じに見えたが、スルーしておこう。そのほうが良い。

 「お父、・・・あんがと。」

 ミューラちゃんがそっぽを向きつつお礼を言って少し離れた。お礼を言えるって良いことだと思う。いい感じにお話が纏まっててちょっと涙腺に来てる。まだ若いと思いたい。

 「ミューラ、冒険は危険が付き物だ、仲間を頼っても良いが、甘えてはダメだ。支え合えるように頑張るんだぞ。」

 急にこの人親バカからしっかりしたお父さんになるじゃん。ベクトル変換早すぎ・・・切り替えが良くて良いとは思うけど。

 「後寂しくなったらすぐにパパの所に帰ってきてねぇぇぇ!!!」

 前言撤回させて頂きます。

 そんなこんなで、諸々の手続きが終わり最低ランクのHランクパーティとして組むことが決まった。

 パーティー名は同郷の異世界人に少しでも認知されることを目的に「ドリンクバー」にした、明らかにレストランとかにあるアレの名前だし、同郷ならビビッと来そうだと思ったからだ。

ちなみに他の候補に「焼肉定食」や「ラーメンセットライス大」等があったが、とある女性メンバーが強く拒んだ。主に私である。

ラーメンセットライス大は流石にきつかった。女の子二人いるパーティだからと言ったら確かにと納得して「すみません」と謝罪までさせてしまった。人見知り感はあるけど多分良い子だ。男は一人しかいないから誰とは言わなくてもわかるだろう。

 これからは依頼を受けながら街を転々とし、目的の人物を探そうと言うある程度の目処も立った。

それらが全て済んだ頃には、日が沈んでしまっていたので、今日は宿に泊まって、明日の朝、旅立つことが決まった。


ーーーーー


 宿で二部屋取り私とフレイノールさんと野原くんは、夕食を食べるために宿屋の食堂に集まっていた。ミューラちゃんは今日は自宅で荷造りなどに勤しんでいるらしい。


 「やっぱこっちに米はないよね〜」

 パンとサラダとステーキと、豪華なメニューだったが、やはり異世界、白米がなかった。

 「流石にここに米があったらこの街に同郷の可能性を感じてしまいますよ。」 

 野原くんは基本的に黙々と食べながらも会話は繋げようとしてくれる。

 「確かにね、それで、答えられたらで良いんだけど、神様に言われた目的の人って、野原くん知り合いなの?」

 そう尋ねたら野原くんの手が止まる。

 「答えづらかったら良いんだ!ごめんね。」

 彼に悪いことをしてしまっただろうか。そんな一抹の不安をすぐに切り開いてくる。

 「いえ、まだわかりません。僕の希望的観測の中の予想の範疇でしかありませんから。」

 しっかり答えてくれたけど、やっぱり悪いこと聞いたかな・・・

 「あ、すみません、考え事やしっかり話すときはいつもこんな風に手が止まるんです。癖のようなものだと思っていただけると。」

 そういうと自信なさげな笑みを浮かべ、再びステーキを食べ始めた。

 「わかった、これから旅で一緒に過ごす仲間だから、知れるところは知っていくね。」

 私も目的のために精一杯頑張ろうと思った。

 食事を終えてフレイノールさんが書き留めたメモを野原くんに渡った後、フレイノールさんと部屋に戻った。

 「フレイノールさん、本当に何から何まで、ありがとうございました。この御恩は、いつか絶対に返します。」

 私はフレイノールさんに御礼を言った。本当にこの世界に来てからフレイノールさんにはお世話になりっぱなしだった。この人がいなければ何一つ始まらなかっただろう。

 「御礼は沢山もらってるよ。あたしにとっては異世界転生してきた子たちに遭遇できたこと、新しい魔法の存在、それらを知れただけでも丸儲けさ。だから、今から渡すものは餞別だ。恩は感じてもいいけど、返しに来なくても良いからね。」

 そう言ってフレイノールさんは数枚の紙を束ねた冊子みたいなものと杖や鎧、ナイフ等の装備品だった。

 「装備は低ランクの安物だよ、その紙束にはあんたや坊やのスキルをあたしがわかる範囲で解説してある。時間のあるときに読んどくと良いよ。」

 フレイノールさん、本当に、本当に、感謝の気持ちが溢れかえってくる。

 「フレイノールさん、いえ、フレイノール先生。これから私はあなたのことを心の師として尊敬させて頂きます。本当にっ、お世話になりましたっ!!」

 召喚された瞬間に気絶して、拾ってくださったフレイノールさん、今日の朝からの付き合いだけど、それ以上に濃く、温かい心の関係を確かに感じた。私はこれからもフレイノール先生を尊敬し続けるだろう。

 「そうかい、じゃあ心の先生として一つ、あんたにアドバイスさ。『己を信じて見極めよ』自分自身の想いを信じて、自分自身を見極めてたら、あんたは充分に大丈夫だよ。」

 己を信じて、見極める。すごい短いのに、沢山の意味が凝縮されたような言葉、ありがとうございます。心の芯に置きます。

 「ありがとうございます。明日からしっかり頑張ります!」

 フレイノール先生は私を見たあと、ホッとしたような落ち着きで瞬きをした。

 「あぁ、あんた達なら大丈夫だよ。それじゃそろそろ寝るとするかね。」

 そう言って部屋の燭台の火を消し、私と先生は眠りについた。

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