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第三話 お婆さん、飛ばさないで

 私はお婆さんが示した部屋に向かい、己の姿を確認した。

 (若くなるどころかちょっと姿も変わってる・・・)

 以前は黒髪黒目だったのが、ブロンドの碧眼に、それに合わせて少し雰囲気も変わっていた。

 「とりあえず白っぽい服あるかな。」

 タンスとクローゼットの中には、服が物凄く沢山入っており、お婆さんが何者か一瞬考えた。けどわからないのでとりあえず黒のインナーと白のローブ、ピンクのスカートを穿いて部屋を出た。

 「お婆さん、着替えてきました。服までありがとうございます!」

 お婆さんは「ほうほう」と言いながら値踏みをするように私を見た。

 「あんた中々に悪くないセンスしてるね。あたしのことをお婆さんじゃなくて『フレイノール』と呼んだらその服と他の服も付けてプレゼントしてあげるよ。どうだい?」

 すごく意外な答えだった。確かに一着じゃどうにもならないし、服は沢山ある方が絶対いいから・・・

 「わかりました。フレイノールさん!」

 もちろん名前呼びするよね。後スマイルも忘れずに。すぐにフレイノールさんはニコニコしだした、絶対お婆さんって呼ばれて気にしてたなぁ、今までごめんなさい。

 「あんたノリ良いね、そういう女は好きだよ。服を荷物に詰めてくるから待ってな。」

 そう言ってスキップしながらさっき私が服を貰った部屋に入って、1分もしない内に出てきた。

 「詰めたよ、行こうか。」

 フレイノールさんはギランギランのサングラスを着けてた。フレイノールさんちょっと心躍ってない?もうワンサービスする?

 「はい。お願いします!フレイノールさん!」

 もちろんスマイルも忘れずに。

 やはりフレイノールさんはワクワクしたような足並みで外に出た。私は背中を追ってついていった。


ーーーーーー


 外を見渡すと、一面草原で、すごく向こうに森が見える、そんな場所だった。

 フレイノールさんはまたどこからか見えないところから大きな板のようなモノを出して、その板に乗った。

 「乗りな!すぐ行っちまうよ!」

 ・・・板だよね?

 「は、はい!」

 まあどうなるかわかんないけど、フレイノールさん悪い人の感じがしないし、乗るだけ乗ってみよう。

 私は板に乗り込んだ。この手触り知ってる、プールとかにある巨大ビート板だなぁ・・・浮島だっけ・・・

 「気にはかけるけど、落ちないようにしなよ。」

 フレイノールさんがいつもの悪そうな笑みを浮かべて杖を出した。嘘、まさか。そんなことは。

 「モートフライ」

 フレイノールさんが呪文(?)を唱えると浮島が空に浮いた。ガチじゃん。このまま飛ぶでしょ、私でもわかる。

 「飛ばすよ!しっかり掴まってな!」

 「フ、フレイノールさん!?は、はいぃ!お願いしますぅ!」

 私は急いでフレイノールさんにしがみつき、浮島はとにかくすごい速さで進んだ。これはもう車乗れない。心が震えた。

 「風を感じるねぇ!これこそハイってやつだよ!」

 フレイノールさんはもう止まらない。私の心臓は多分もうすぐ止まると思う。

 森を抜けて山を越えたしばらく先に街の外壁らしきものが見えた。

 浮島は空中なのにドリフトっぽい動きをして止まった。どうして。

 「着いたよ。いい風だった。」

 アクティブ過ぎる。

 「ありがとうございます。」

 半ば足取りがおぼつかない。

 「大丈夫かい。門までゆっくり歩きながらいくよ。」

 「は、はひぃ。」

 フレイノールさん、徒歩になったら優しい。私、浮島、もう乗らない。

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