プロローグ
・・・暖かい。もう朝か・・・。
「って暖房付けっぱなしで寝ちゃった!?・・・あれ?知らない天井。」
理解が追い付かない。昨日は約束のために電車に乗って、乗って・・・どうしたんだっけ。
・・・とりあえず部屋を出てこの家の人に事情を伺おう。わからないことが多すぎる。
(ログハウスのような内装でドアノブどころか、どこにも金属や電化製品が見当たらない。布以外は全部木製に見える。この家の人の拘りなのかな・・・?)
扉を開け、廊下を渡り、階段を下りると、黒い三角帽子を被ったいかにも魔女っぽい雰囲気のお婆さんがロッキングチェアに座りながら煙草をふかしている。・・・今日ってハロウィンだっけ?
「起きたかい。」
「あっ、はいっ!おはようございます!!」
お婆さん後ろ向いたままなのに何?エスパー??
お婆さんは吸い終えた煙草の火を消して吸い殻そのものを消した後、どういう原理か座られているままのロッキングチェアがお婆さんごとこっちに180度くるりと回転した。
(なに!?ハロウィンもここまで進んだの!?)
「あんた名前は?」
「はい!私の名前は・・・あれ・・・?」
どうして?思い出せない・・・苗字だけ思い出せない・・・
「どうしたんだい?名前を思い出せないのかい?」
お婆さんはじれったい私に目を細めてすごい圧をかけてくる。
このまま待たせたら間違いなく怒らせてしまうので、正直に話そう。
「はい、私の名前はレオナと言います、しかし、苗字を思い出せず困惑してしまい、すぐに答えられなかったことはすみません。」
正直に答えるとお婆さんは落ち着いたように一息つき、椅子に腰を掛けなおす。
「そうかい、それであんた、苗字って何だい?」
「・・・え?」
苗字の存在知らない人ってこの世にいたの!?言葉が通じてるから尚更驚愕だわ。
「家族みんなのファミリーネームみたいなやつなんですけど・・・知りませんか??」
私がそう言うと、お婆さんの眉が少しヒクついた。
「あんた家名持ちかい!?ってことは貴族かい、こりゃまた面倒くさい拾い物しちゃったねぇ・・・」
お婆さんはそう言うと額に手をつき、ため息を吐いた。貴族?
「あのー、すみませんが私、貴族なんてものではないんですけど・・・」
「じゃあ一体何だってんだい?」
「一般的な日本人です、すごくノーマルなジャパニーズピープルです。」
「すまないがそのニホンってのは知らない国だね・・・このアタシでも知らない国なんて・・・ん?ちょっとあんた、この世界の名前を言ってみな。」
唐突な常識!?何!?そんなの決まってるじゃん!
「・・・地球ですよね?」
「・・・こりゃ驚いたよ。」
お婆さんが物凄い諦めフェイスで少し俯いた。何?ジアースって言えばよかったの??
「レオナだっけか、よくお聞き、この世の名前はアレンドラン。多分古い文献で言うところのイセカイってやつだね。」
「イセカイ?・・・異世界!?うっ!!」
私が異世界を認識した瞬間、とんでもない情報が頭の中を駆け巡る。
「そうじゃん、私死んだじゃん。」