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第四章【託された希望】城の現状

 城へ到着すると、間近に魔の者を見る事が出来た。

 だが、城からは魔の者を出さない為に、城を囲む形で結界が張られているのが判る。


「手遅れだったみたいだが、王様にとっては想定内なのか? この中を抜けて王の待つ場所まで辿り着けと」


「尊様、幾つか『未来予知』で知った内容には対策を打っていたのでしょう。レミアノさん、どうでしょう間違ってますか?」


「私にも詳しい事は······ザリヲン様が城の最上階、王の間に居る事ぐらいしか判らなくて」


 ザリヲン王が施していた町への通達や、城を囲む結界は、最悪の未来が訪れてしまった場合、少しでも時間を稼ぐ事と、被害を減らした状態で良い未来を手にする為の処置であった。

 王自身でやれる事はやった、残る障害は皆で乗り越え、私の元へと辿り着いて欲しい、そう願い王の間で到着を待つ。


 ザリヲン王の考えを理解しなくとも、王の元へと黒街彰を連れていく。

 やるべき事は一つであった。


「最上階までは、空を行くか、外壁をつたって行くか、城内を行くか、迷う所だな。未知瑠、良い案はあるか?」


「先程結界に触れてみましたが、私達なら自由に出入り出来そうなので、最上階に近い結界を抜けるのが最短かと。ですが、パッと見ですけど、空に多くの魔の者を配置してる様に見えますね」


 魔の者にも、幾らか情報は流れている。

 ザリヲン王の元へと何者かが現れた時、魔の者の計画が破綻する事は理解していた。


「こっちは空を自由に動けないしな、そうすると城内を行くしかないか······」


 結界の直ぐ側で、作戦を話し合っている本城尊と郷倉未知瑠。

 そこへ近づく魔の者が現れる。


「初めまして、人間さん。大勢で何をしに来られたのかしら?」


「普通に話せるのか、城の人間に会いたいんだが······貴女は魔の者でいいんだよな?」


「魔の者? 私はアルビアですが、まぁ世界が違うだけで分かり合えないものですものね。此処に人間はおりませんわよ、お帰りください」


 魔の者と呼んでいた者の名は、アルビア。

 この世界とは違う、別の世界から来た事は理解出来る。

 だが、会話が成立する事と、見た目が人型な事で人間と何が違うのかと疑問が生じていた。


「アルビアか、俺は本城、本城尊だ。ちょっと聞きたいんだが、お前等は人間ではないのか?」


「どうなのでしょうね。見た目は近くとも、身体を創り上げる物が違う気がしますわ。なんだか貴方達を見ていると、可愛がってあげたくなりますもの······」


 身体を創り上げる物の違いとは、人間の身体が大半を水分で構成しているのに対して、魔の者は、魔力で身体を構成していた。

 ザリヲン王が『魔の者』と呼んでいた理由もそこからきているのだった。


 そして、「可愛がってあげたくなる」の意味だが、人間を支配し、魔の者が生物の頂点に立つ存在だと疑っていない、そんな感情を自然と持ち合わせている事が窺える言葉であった。


(此方を見下した目をしやがって、それに結界越しでも嫌な圧を放ちやがる)


 本城尊が会話をしている間、後ろでは何やら企んでいた水元茜が動き出そうとしていた。


「先手必勝じゃ、悪く思うのでないぞ」


 水元茜が風を操り出すと、他の者も動き出した。魔法に自信がある者は、魔法を。ダ・ビャヌや菊本十三などは投擲で攻撃を仕掛ける。


 ダ・ビャヌが投げた槍は、魔の者に弾かれていた。そして肝心の魔法は、結界に阻まれ魔の者に届く前に消滅する。


「あら、随分と好戦的なのね。私としては、楽しそうで何よりですわ」


 結界は、魔力を元に制限をかけている事が予想出来た。

 魔の者を城へ封じこめる為、魔力の量や、質の高さで通さない設定で結界を創ったのであろう。

 それが、此方の戦力を低下させる原因にもなってしまう、クレイス・ファーナ、ディガルド・フィオル、フォンス・カーリルの3人も結界の中へ入れないのだ。


「くっ、魔法は駄目であったか。結界の外から攻撃するのは、良い案じゃと思うたのにのう」


 もう一度、作戦の練り直しかと思っていた瞬間、結界に亀裂が走る。

 内側からは、魔の者が常に結界を破壊しようと攻撃していたのだ、其処に外側からの魔法で、結界へのダメージが大きくなる。


「おいおい、結界が壊れそうだぞ。こりゃ不味いんじゃねぇか?」


 本城尊が叫ぶと、そこへ銅谷京之介が何かを提案しに近づいて来た。


「本城さん、一つ提案です。先程話していた魔の者、あれの相手をお願いできますか? 周りの雑魚は僕が減らします、数を減らしてから黒街彰くんを突入させましょう」


「大物は譲るって、いい心掛けじゃねぇか。俺様に任せろよ」


 結界が破壊される前に、行動を起こさなければならなくなった。

 考える間もなく、銅谷京之介の案に乗る事にする。遂に、魔の者との闘いが始まる。


 結界の中へと入ったのは、銅谷京之介が率いる西の人間と、本城尊が率いる十傑の面々だ。

 水元茜や中央の人間は様子を見る、黒街彰は敵の動きを観察するのと、一つはっきりとさせたい問題を確かめる。


「なぁフィオル、結界に触ってみてくれるか?」


 ディガルド・フィオルが結界に触れる。すると、黒街彰が予想した通りで、結界をすり抜ける事が出来ない。


「なっ、俺も結界を越えられないのかっ」


「やっぱりか、魔法が駄目なら魔力から生まれた存在のフィオルは無理かもしれないって思ったんだ······ファーナさんが参加出来ないのは大きいな」


 黒街彰が冷静に現状を分析していると、本城尊がアルビアとの戦闘を開始していた。

 一対一での闘いが始まったが、本城尊の後ろでは郷倉未知瑠が控え、万が一に備える。

 他の十傑も1人にはならずに、連携しての闘いを始めていた。


 唯一、1人で暴れ回っているのは銅谷京之介だ。速度を活かして、言葉通り雑魚の数を減らす。

 それと、佐久間仁も活躍する。桜井小夜と創真晴人に護りを任せ、高火力の炎で敵を殲滅していくのであった。


 黒街彰が全体を見ていると、魔の者でも動きにばらつきがあるのがよく判る。

 フォンス・カーリルが言っていた通り、モンスターの様に動きが単調ではないのだ、特に本城尊と闘うアルビアの動きは目で追えない程、速く、他の魔の者より実力が高い。


「やるじゃない人間、私ってその辺の奴よりずっと強いのよ」


「あぁ、その様だな。俺様が防戦一方になるとは思わなかったぞ」


 闘いが始まって、まだそんなに時間は立っていないが、本城尊の鉱物生成のスキルを防御に使っていなければ、危険な場面が何度もあった。

 そう、反撃に移る余裕がないのが今の現状だ。


「尊様、私も参戦しますね」


「ちょっと待て、俺の闘いを見るのは久しぶりだろ。良いところがない内に参戦するんじゃねぇよ」


 格好つけている場面ではなかったが、郷倉未知瑠は本城尊の言葉を尊重する。

 それが、これまで共にした2人の関係であった。


 闘いが再開されると、またしてもアルビアが押し始め、本城尊が鉱物を生成して受け止める。

 アルビアが、硬い鉱物を砕き、鋭い爪で斬り裂こうと手を広げようとすると、違和感が襲う。

 違和感の正体とは、手に鉱石が纏わりつき、開く事が出来なくなっていたのだ。


 その隙を本城尊は見逃さない、拳に鉱物を纏い、アルビアの腹部に強烈なパンチをめり込ませ、吹き飛ばした。


「一発入ったな。どうだ未知瑠、最初の決定打は俺だったぜ」


「流石です。でも、油断しないでください、直ぐに来ますよ」


 怒りの形相でアルビアが向かって来る。

 先程よりも素速い動きと、両手両足に鋭い爪を光らせる。


 本城尊と衝突する瞬間、横合いから郷倉未知瑠が斬り掛かった。

 アルビアも反応して、郷倉未知瑠の双剣を受け止めるが、またしても腹部に激痛が走る。


「二発目も俺だったな。未知瑠、こいつを片付けるぞ」


 一方、順調に魔の者を倒していた銅谷京之介の元へ、王の間がある最上階から現れ、襲い掛かかってくる存在がいる。


 高速で近づき、強烈な蹴りを放つ。

 それは、速さに自信を持つ銅谷京之介でも、気付くのがギリギリであった。何とか腕で防御するが、吹き飛び城の壁を壊していく。


「雑兵の数が減っていると思ったら、此れはどうゆう事だアルビア」


「ジュール······」


「人間など直ぐに片付けて、この忌々しい結界を早く破壊しろ。でなければ我らが王を呼ぶ事が出来ぬだろう」


 現在、ザリヲン王が集めた膨大な魔力を元にして、魔の者の世界から此方の世界へと来る事が出来たアルビアやジュール。

 だが、結界に閉じ込められた状態では偵察の結果を報告するにも格好がつかない為、結界を破壊する事を最優先にしているのだった。


「私に命令しないでくれる······やりたいなら自分でやりなさいよ」


 追撃せずに喋っているジュールに気付かれない様に、桜井小夜の元へ向かった銅谷京之介。

 ジュールの蹴りの一撃は強烈で、腕の骨が折れたのを治すチャンスが貰えたのは幸いであった。


「小夜、自然と回復する魔法もお願いできるかな? あいつは、かなり強いよ」


「オッケー、1人で大丈夫? もしも厳しかったら声を掛けてね。そしたら、晴人をそっちに向かわせるよ」


「厳しかったら声を掛けるけど、限界までは1人でやるよ。こいつが一番強い訳じゃないみたいだし、負けられないでしょ」


 傷が癒えると、銅谷京之介はジュールへ向かって行く。


 そんな時、ガラスが割れる様な音を響かせ、結界に出来た亀裂が広がる。

 見た目では、結界がいつ破壊されてもおかしくない状態だ。


「水元さん、俺と一緒に城内から王の間を目指してくれませんか?」


 黒街彰が水元茜へと願い出る、結界が保たないのもあるが、ジュールとゆう実力者が外へ出て来たのをチャンスだと捉え、行動に移す。

 それと、闘いを見て思った事が他にもある。


「動くなら今か······戦場を見ての判断、わかっておるのう。私も同じ事を考えておったわ」


「有難うございます。でも、少しだけ待っててください」


 水元茜の了承を得て、黒街彰が向かったのは仲間の所だ。


「喜助、翔太、愛ちゃん、それとビャヌさんの4人はフィオルと一緒に残って欲しい。結界はもう少しで破壊されると思う、そしたら魔の者を自由にさせる訳にはいかないからな」


 フィオルを含め、5人にはこの世界を守る役割をお願いする。でも、ダ・ビャヌだけには、皆を守って欲しいと事前に本当の気持ちを伝えていた。

 他の3人には、魔の者が闘っているのを見て、実力的に無理がある為、戦場に連れていけない。そう言う事が出来ずに、黒街彰は気を遣ったのであった。


「分かったよ、彰も無理しないで。僕達で外に出て来た魔の者は止めてみせるから」


「彰兄、世界を救って戻って来てくれよ。まだ沢山探索するんだからな」


「彰さん、絶対にまた会いましょうね。結菜さんお願いします」


「うん。彰くんは私が必ず守るから、皆は安心して待っててください」


「こっちの3人はファーナ様と俺で、必ず守るからよ。心配しないで世界を救ってくれ」


「うん、皆も無事でな。絶対に生きてまた会おう。良しっ、結菜行こうか」


 仲間達も、実力が足りていない事は理解している。それは、黒街彰も同じだったが、選ばれてしまった運命から逃げたりは出来ない。

 だから、お互いの無事だけを祈り黒街彰を送り出した。


「水元さん、お待たせしました。俺と結菜は何時でも行けます」


 此れから城内へ侵入するのは、黒街彰、海野結菜、水元茜、更井賢人、戸倉芙美、菊本十三、清水司、大膳忠行の8人、それと案内役でファリアンス・レミアノ、どうしても着いて行くと言ったビグラウト・テラネウスの合計10人。

 中央の精鋭で、攻略する。黒街彰は、無事にザリヲン王へと辿り着く事が出来るのであろうか······

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