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第四章【託された希望】王の待つ城へ

 黒街彰と海野結菜が探索者協会から出ると、集合場所である広場は直ぐ目の前だ。

 2人が外へ出た時には、既に多くの人が集まっていた。その中に、郷倉未知瑠とダ・ビャヌを見つけて声を掛ける。


「もしかして、俺達が最後でしたか?」


「どうでしょう、北の人間は揃っていますが、中央の人間は拠点に戻ってる人も居るみたいです、まだ来てない人も居るんじゃないてすか」


 少し離れた位置に、仲間達も集まっているのが見える。

 黒街彰を見つけると、リーダーの元へと集まって来た。他にも、本城尊や水元茜、ファリアンス・レミアノや異世界人達も黒街彰の元へとやって来るのであった。


「鑑定の結果はどうであった、それらしいスキルは手に入れておったのか?」


 水元茜も今回の鍵になるであろう、黒街彰のスキルを気にしていた。それは、他の者達も同じだ。


「『無限の器』ってスキルが表示されていました。このスキルで魔力を肩代わりするんだと思います」


「まぁ、それで確定だな。第1段階はクリアって所か」


 ファリアンス・レミアノの言葉を信用していない訳ではなかったが、全員が全てを鵜呑みにする程、素直な性格ではないのだ。

 黒街彰のステータスが載ったプレートも確認していく。手に入る情報と照らし合わせながら、信憑性を高めていくのであった。


「もう少し時間があればのう、他にも出来る事があったのだがな······」


 水元茜が考えていたのは、大膳忠行のスキルで主力の装備だけでも強化するとゆうものであった。

 その考えは、時間がない事から実行は断念した。ファリアンス・レミアノが「手遅れかも」と言っていたが、時間が立つにつれて手遅れになる可能性も上がっていく事は理解している。


 スキルの話が終わり、少しだけ黒街彰に絡むと、水元茜は水元家が集まった場所へと戻って行った。

 其処で、清水司へと指示を出す。水元家のメンバーが集まり次第、行動を開始すると。


 まだ全員集まっていない状況を察した黒街彰は、何か出来る事がないかと考えていた。


(魔の者、何でもいいから情報が欲しいよな)


 此処に居る人間で一番魔の者に詳しいのは、フォンス・カーリルであった。

 話し掛けるのを躊躇する相手だったが、黒街彰は最善を考えて行動に移す。


「あの、聞きたい事があるんですけど、今いいですか?」


「ん、あぁ別に大丈夫だけど······」


 急に話し掛けられフォンス・カーリルは戸惑ってしまった。

 黒街彰とゆう男には、始めて会った時に酷い目に合わせてしまったからだ。


「魔の者、『アリスフール』では悪魔でしたっけ? 少しでも情報が欲しいと思いまして」


 フォンス・カーリルは、最近闘った魔の者は強くない相手だったと話す。

 近くに居た銅谷京之介は、十分強敵であったと会話に混ざってきた。


「えぇと、銅谷さんが強敵って言うって事は、かなり強いですよね。どれぐらい強かったんですか?」


「僕が万全の態勢で、2体は大丈夫かな。正直ね、君じゃ厳しい相手だと思うよ」


「京之介が闘った奴はそんなに強かったのかよ、俺が闘ったのはそうでもなかったけどな······まぁ悪魔もピンキリか」


 銅谷京之介の話を聞いて、黒街彰の不安が大きくなる。

 仲間達を置いて行った方が良いのではないかと、頭を過ぎっていた。


「もう少し聞かせてください、『アリスフール』に居た悪魔はどんな感じだったんですか?」


 先程ピンキリかと言った通りで、強い悪魔なら自分以上、弱い悪魔なら黒街彰でも少しは闘えるとフォンス・カーリルは説明する。


「俺も闘ってる姿は見てないけどよ、悪魔の王は更に強いんじゃねぇかな」


 悪魔の王、フォンス・カーリルから出た単語に黒街彰が反応する。


「悪魔ってモンスターみたいな感じじゃないんですか?」


「モンスターっていうより人間に近い感じだ、王も居れば、その家臣が居る。強い奴が居れば弱い奴も居る、人間と同じだよ」


 フォンス・カーリルから聞けた情報は、黒街彰にとって不安を掻き立てる内容であった。

 知性の低いモンスターであれば、能力値に差があったとしても、闘い方次第でどうにかなるのに······そんな事を考えている内に、全員が揃った様で、集合の合図が聞こえてきた。


 水元茜が仕切り、準備が整ったのかと確認している。北は本城尊が、西は銅谷京之介が準備完了だと伝えていた。


「あのっ、出発前に魔の者の情報を共有してもいいですか?」


 黒街彰がフォンス・カーリルから聞いたと伝え、つい今しがた聞いた話を皆に共有する。

 不安を煽る形になってしまうかと黒街彰は考えていたが、周囲の反応は様々であった。

 闘いになれば、一筋縄ではいかないと面倒がる者もいれば、強敵との戦闘を楽しみにしている者も居る。良くも悪くも、自分の力に自信を持った人間が集まっていた。


(地球の人間で不安に思ってるのは、俺達ぐらいなのかな······)


 話が終わると、大勢の人間達が階段を降りていく。先頭では本城尊と十傑の面々が楽しそうに騒いでいた。

 黒街彰は仲間達と、集団の真ん中辺りで階段を降りていた。隣に居る海野結菜を見ると、少し感傷的になってしまう······


 思い出に浸っていると、一番下、十ノ扉まではあっという間に到着してしまった。


「よっしゃ、扉を開けてくれ。お前等、準備はいいか?」


 本城尊の大声が響き、ファリアンス・レミアノが人混みを掻き分けて前に出て来た。


「はいっ、扉の鍵を開けます。時間は掛かりませんから······開けますよ」


 見ている分だと十ノ扉に変化は見られない、ファリアンス・レミアノが「開きました」と言うからには、本当に開いたという事だろう。


「ちょっといいかな? 先陣は僕に担当させてくれないか、開けたら直ぐに魔の者が襲ってくる可能性もあるからね。僕が傷を負っても、小夜が居れば何とかなるから」


 銅谷京之介が前に出て来て提案する、この集団で浮いたままでは、いざという時に困る事になる、少しでも信頼を勝ち取るのが目的であった。


「まぁよかろう、銅谷殿に任せようではないか」


 一番乗りを期待していたのか、本城尊が不満気にしていると、水元茜が助け舟を出す。

 だが、水元茜も優しさで言った訳ではなく、危険があるならばと、西の人間に先陣を任せてリスクを減らそうと思い発言しただけであった。


「それじゃ、開けるよ······」


 十ノ扉がゆっくりと開いていく、待っているのは魔の者なのか、どんな世界が広がっているのか、此処に居る全員が固唾をのんで見守っていた。


「悪い気配はなさそうだね、どう?」


「はい······見た感じ変わってない、と思う」


 異世界、他の扉から行く事が出来る世界と、何ら変わり映えのない世界が広がっている。

 危惧していた問題は起きていないのか、魔の者が潜んでいる様には感じない。


「カディさん、探索術で周辺を確認出来ますか?」


 何も気配は感じなかったが、念には念を入れ、ビグラウト・テラネウスがプロテラス・ガディに探索するように願い出る。


「大丈夫そうだ、この辺には誰も居ないよ」


 扉の位置は、王が居るであろう城から少し離れた場所に創られていた。

 ある程度歩くと、城下町があり、それを越えると城が建っている。全員が先ず目指す場所、それは城下町だ。


「1時間ぐらい歩くと町が見えてきます。町で情報を入手しましょう、何だか静か過ぎるのも恐いですよね」


 ファリアンス・レミアノが皆を誘導する。

 先頭を歩こうと前に出るが、それを止めたのは銅谷京之介であった。


「安心するのは早いんじゃないかな、僕が前を歩くよ。キミは黒街彰くんと共に、中心に居たほうがいい」


 黒街彰は自然と中心に配置されていた、世界を救う役割が与えられたのは黒街彰なのだ。

 水元茜や本城尊も、守れる陣形を維持しながら辺りを見回している。


 歩き出すと、モンスターの姿もなく見かけるのは虫や小動物だけであった。

 この世界は、地球と同様に危険が少ない。人々にとっては、暮らしやすい世界であった。


「拍子抜けだな、モンスターの1体もいねぇのかよ。所で、町はまだなのか?」


「もうすぐ着きます。そうだっ、町に着いたら私のお客様って事にするんで、あまり勝手な行動は控えて欲しいんです」


 遠目に町が見えてくる、今は視力が優れた者にしか見えないが、直に全員の視界に映るだろう。

 町に到着したら、情報収集をしてから城へと向おうと、ファリアンス・レミアノは考えていた。


 町に到着すると、町の人間が突然大勢で現れた人間に警戒を強めているのが判る。

 だが、ファリアンス・レミアノが共に居るのを見つけると、近寄って来る者がいるのだった。


「星渡りの巫女様。巫女様がお連れになっているって事は、この大勢の方達はもしかして、別世界の人々でしょうか?」


 この世界でファリアンス・レミアノは、『星渡りの巫女』と呼ばれ、王家に継ぐ格式の高い家柄の出であった。


「そうなんです。私の客人として連れて来ました。でも詳しく話す時間がないので、皆さんへの説明は後日にさせてください。それよりも聞きたい事があるんです、最近町や城で異変は起きていませんか?」


 町の住人は、異変と聞いてピンとこない様子であった。

 だが、城とゆう単語には思い当たる事があるのだった。


「あっ、お城と言えば、巫女様に関係した通達が町の全員へと伝わってます」


 通達の内容は、城へ近づく事を禁ずる、唯一『星渡りの巫女』のみは例外とし、町の住人は、『星渡りの巫女』へこの通達を報せる事。


「こんな通達があったんですよ、もう二ヶ月程前だったので、直ぐに思い出せなくてすいません」


「いえいえ、教えてくださって有難うございます。また今度、色々とお話しましょう」


 予め王が何かを手配していたのが判ったが、此れが何を意味しているかまでは理解する事が出来なかった。

 町に異変が起きていない事に安堵はしたが、起きている事を調べるには、やはり城へ向うしかないのだと、ファリアンス・レミアノを含め全員が考えるのだった。


「城に行くのが手っ取り早いみたいだな、時間は掛けない方がいいんだろ? 覚悟を決めて城に向かおうじゃねぇか」


 全員の考えを代表する様に、本城尊が次の行動へ移る事を進言する。

 王からの通達には、気味の悪い物を感じていたが、答えを求めて進んで行く。


 城下町から城へ向う道中は、流石に騒がしい雰囲気も鳴りを潜めていた。

 全員が緊張を高めているが、ザリヲン王と黒街彰が何事もなく出会う事が出来、すんなりと世界が救われる可能性もある。

 だが、不安と期待で口数を減らす者達の頭の中は、『決戦』という単語が相応しい位に危険が待ち受けていると確信している。


「見えてきましたよ······でも、あれは何?」


 ファリアンス・レミアノが今迄見てきた、城の風景とは全くの別物と言ってもよい程、禍々しい雰囲気を放つ城が確認出来た。

 城壁の中、無数に飛び回る黒い影、何とも理解出来ない邪悪な圧が城から放たれる。


「やはりこうなるか、全員気を引き締めろよ。黒街、とりあえずお前は最後尾まで下がってろ」


 邪悪な雰囲気が放たれようとも、足を止める事はしない。全員が覚悟を決め、王の待つ城へと到着する。

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