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第四章【託された希望】弄られたもの

 自身で創り出した扉へと入ったファリアンス・レミアノは、扉の先に黒街彰の姿があると疑いもせずに移動する。

 だが、目の前に広がる世界には、1人として人間の姿がなく、見覚えのある風景だけが広がっていた。


「あれ? 彰さんは······」


 扉の先に設定していたのは、間違いなく黒街彰が居る場所にした筈だ。人の場所に設定した筈が、誰の姿も無いのは明らかにおかしな出来事であった。


「な、何で? あれっ、何か苦しい······」


 急に胸が苦しくなり、身体から黒い靄が溢れ出して来る。

 これは、ガルビナル・ザリヲンから出ていた現象と同じ物だ。そして、黒い靄が全て出尽くすと、ファリアンス・レミアノの目の前に、魔の者が現れるのであった。


「がっはっはっ、気付かなかった様だな。貴様の様な隙だらけの娘ならと、身体の中に潜ませて貰ったが、正確だったぞ」


「なっ、何でそんな事。おかしな場所に来たのも貴方の仕業ですか?」


「そうだ、我らにかかれば、能力や記憶を弄るのも簡単な事だ。先程の話は聞いていたぞ、貴様が失敗すれば、もう我らの邪魔は出来ないのだろう? 残念だったな」


 嬉しそうに喋る魔の者は、とても嫌な笑みをファリアンス・レミアノへ向ける。


「後は、貴様の命を奪って終わりだ。まぁどの道世界は滅ぶ運命だからな、気にせず死んでいけ」


 この場には、ファリアンス・レミアノと魔の者の話を聞いている者が潜んで居た。

 魔の者が弄れたのは、ファリアンス・レミアノの能力の全てではなく、正常に操作が出来ないという物であった。

 それは、人を指定した扉の、人の部分が別の人にすり替わる程度のものであったのだ。


(突然あいつの扉が現れたから隠れたけどよ、まさか悪魔が現れるとは思わなかったぜ。しかも、昔から疑問に思っていた事の答えが貰えるとはな······)


 この場に居たのは、クレイス・ファーナによって倒された筈のフォンス・カーリルだ。

 クレイス・ファーナは消滅させたと思っていたが、本当にギリギリの所で逃げる事に成功したのだ、身体を全て精霊化出来るフォンス・カーリルだからこそ助かったのであった。


 魔の者も、フォンス・カーリルが聞いている事に気が付かなかったのは大きな誤算になる。

 フォンス・カーリルの疑問とは、幼少期から理由も判らず憎んでいた人間に対しての感情であったのだ。

 その感情に気付いた時には、既に悪魔と行動を共にしていたのだ、聞いた話と照らし合わせれば、魔の者が感情、もしくは記憶を弄ったのが答えとなるのであった。


「おらっ、てめぇに聞きてぇ事がある」


 魔の者がファリアンス・レミアノに向け、大きな爪を振り下ろすと、寸前の所で爪は黒い鎌によって弾き飛ばされた。


「なっ、誰だ貴様。俺の邪魔をして、ただで済むと思うんじゃないぞ」


「俺の知ってる悪魔よりも、何だか馬鹿そうだな。なぁ、記憶を弄る事が出来るってのは本当かよ?」


「な、な、貴様に教える事など何もないわっ、俺を馬鹿呼ばわりした事を後悔して、死でいけっ」


 フォンス・カーリルの目の前にいる魔の者は、『アリスフール』では悪魔と呼ばれていた。

 魔の者と悪魔は、間違いなく同種の存在であり、『アリスフール』では一度悪魔の侵略を受けたとゆう事実は、フォンス・カーリルが戦闘するのには優位になる。


 魔の者がフォンス・カーリルに襲いかかっていくが、攻撃は鎌で簡単に捌いてみせる。

 何度か爪を弾くと、鋭い一撃で魔の者の腕を斬り飛ばした。


「俺の質問に答えれば、見逃してやってもいいんだぜ」


 フォンス・カーリルの挑発には応える事なく、苦悶の表情を浮かべながら魔の者が地面へと潜る様に消えていった。


(クソっ、舐めやがって。体内から操ってくれる)


 消えた様に見えても、フォンス・カーリルには解っていた。地面に薄っすらと見えている影が素早く近づいてくるのを、しっかりと見定めているのであった。


(俺が同じ事を出来る何て、考えもしねぇだろうな)


 フォンス・カーリルが影に潜れるのは、精霊種の力があってこそだが、共に行動をしていた悪魔から盗んだ技でもあったのだ。


 近づく影を地面ごと鎌で突き刺すと、引っ張りあげる様に上へと持ち上げる。

 すると、魔の者が姿を露わにした。


「クソっ、クソっ。何なんだお前は、クソっ、離しやがれっ」


「離して欲しければ俺の質問に応えろよ、もう一度言うぞ、記憶を弄れるのは本当か?」


「あぁ、出来るさっ······」


「じゃぁ、どれぐらい弄れるんだ?」


「自我が発達してない者なら大きく弄れるが、精神的に強い者だと難しいって所だ。おいっ俺は話したぞ、約束通り離すんだよな」


「やっぱり、お前らの仕業って事だな······はぁ、判った、それじゃぁ鎌を動かすぞ」


 身体の中心辺りに突き刺さった鎌を、フォンス・カーリルが動かし始める。

 だが、引き抜くのではなく、下に向かって斬り裂きながら動かすと、魔の者は苦痛の声を叫ぶ。そして、鎌が身体から抜け出すと、細切りにする勢いで鎌が振るわれるのであった。


「はぁはぁ、ふぅ~。おい、何で悪魔が居るんだ。それと、今はどんな状況なんだよ?」


 フォンス・カーリルの問に、ファリアンス・レミアノは知る限りの情報を全て話して聞かせる。

 今は一刻を争う状況なのだ、どんな事をしてでも力を貸して貰いたかった。


「さっきの話······貴方は悪い人じゃないんだよね? お願い、力を貸して」


「悪い人かどうか、か。今となったら判りゃしねぇよ。でもな、悪魔のせいで人生が変えられたのは確かだよなぁ」


 フォンス・カーリルは、悪魔への復讐をするという理由で、力を貸す。


「なぁ、とりあえず能力が使えるのか試してみろよ。駄目だったら他にも手はあるからよ」


「うん、やってみるよ」


 ファリアンス・レミアノは、窓の能力で試してみる事にした。

 人を指定して覗いてみるが、全く別の人間が映し出される。見覚えのない人間が映し出されるのを見ると、記憶の隅に残る、すれ違った人間までもが対象になっているのではないかと考える事が出来た。


「駄目だっ、これじゃ上手く使えないよ······」


 これだけ、記憶に残る人間をランダムに選ばれ、その中から、フォンス・カーリルが選ばれたのは運が良かったのかもしれない。


「因みによ、黒街彰って奴は生きてるのか、あの場に居たんだろ?」


「詳しくは判らないけど、ザリヲン様が連れて来てって言うんだからさ、生きてると思う。うん、絶対生きてるよ」


「それなら、一度地球って世界に行こうじゃねぇか。あの小僧に聞くのが早いだろ、悪魔が敵だって分かったんなら、力を貸してくれそうだしな」


✩✫✩✫✩


(あれ? 鎖が消えた······)


 銅谷権兵衛が魔の者に殺された事で、ファリアンス・レミアノだけではなく、銅谷京之介の拘束も解けていた。


(何だか騒がしいね、僕も行った方が良さそうだな)


 騒がしいと思っている間も、魔の者4体と唐代一心の闘いは激しさを増し、屋敷がどんどんと壊れていく。

 長らく拘束された身体をほぐすと、激しい音がしている場所へと向かって動き出す、唐代一心と魔の者は、中庭で激しく闘いを繰り広げているのだった。


「一心さん、これはどんな状況なんですかね、 魔物? 地球にも現れる様になったのかな」


「京之介、呑気な事を言ってないで、こいつら2体を相手にしろっ」


 魔の者を4体相手に、唐代一心は苦戦していた。

 魔の者にも能力の差があり、ファリアンス・レミアノの身体に侵入した魔の者は、精神攻撃を得意としており、身体能力は魔の者の中では低い。

 対して、今唐代一心と闘う魔の者は、4体共に身体能力が高いタイプであった。


(結構強そうだな、まずい武器が無いのはよろしく無いぞ······)


 戦闘態勢に入ると、魔の者の方から2体、銅谷京之介へと狙いを変えて向かってくる。

 銅谷京之介は危険を感じとり、早速特殊スキルを発動して迎え撃つ。


 速さは銅谷京之介の方が上の様で、攻撃を躱しては電撃をくらわせる。だが、電撃は効いていないのか、攻撃が止む事はなかった。

 それよりも、躱した攻撃が地面を抉っているのを見ると、爪の鋭さや力の強さが窺えるのであった。


(こいつら本当に強いじゃないか、一心さんが僕に任せたくなったのが判ったよ)


 魔の者は休む事を知らないのか、攻撃の手を一切緩めない。

 そのせいで、銅谷京之介と唐代一心は逆方向に押され、街中の人間が恐怖する事態へと発展してしまった。


(騒ぎにするのは本意じゃないけどさ、此処は僕達の世界だって判ってるのかな? このまま人に知れ渡れば、キミ達の敵が集まってくるんだよ)


 銅谷京之介は、冷静に攻撃を躱す事に集中する。時間稼ぎで、勝負が決まる事を選択していた。


「京ちゃんっ」


 そして、銅谷京之介が信じていた通り、仲間達が駆けつけて来てくれる。

 拘束される前に誓った言葉が、1年立った今も、褪せることなく心に残っていた。


「京之介、ほれっ。これを使いなよ」


 桜井小夜が最初に駆け寄り、創真晴人が刀を渡す、もう一人、佐久間仁は攻撃態勢に入っていた。


「京之介、俺が1体貰っていいか?」


 両腕を超高温の炎へと変化させ、魔の者へと対峙する。

 魔の者が佐久間仁に狙いを定めるのを見て、佐久間仁は腰に差していた刀に手を掛けた。


 以前の佐久間仁は、身体を炎へ変化させると物を持つ事が出来ないとゆう欠点があったが、この1年でそれは克服していた。

 更に、武器とスキルを上手く連携させる闘い方を身に着けているのだ。


「強くなった所を見せるのに、丁度良いのがいて助かるぜ。京之介、どっちが先に倒すか勝負だな」


 魔の者が素早く近づき、爪を振るう。その攻撃を刀で受けると、もう一本の腕が襲い掛かってくる。

 その腕を佐久間仁は片方の手で掴んでみせる、すると、魔の者の腕が炎に包まれる。それと同時に刀からも炎があがり両腕に焼かれる事になるのだった。


 銅谷京之介も、刀を手にした事で本来の闘い方が出来る様になった。

 1年の間、振るえなかった刀の感触を試しながら、魔の者に少しずつ傷を与えていった。


 剣術が衰えていないことに安堵すると、スキルを発動して電気を纏う。

 ウォーミングアップは終わりだと、全力で闘う銅谷京之介の前では、魔の者も相手にはならないのであった。


 銅谷京之介の相手は、細切れになり消滅する。佐久間仁の相手をしていた魔の者も、胴体に大きな穴を空け、直に消滅していく様子であった。


「ほぼ同時かな。こいつ等結構強かったのに、仁は強くなったんだね」


「あぁ、何をするにも力は必要だからな」


 強く成れたのは、銅谷京之介を助け出す日が来るのを信じて、毎日努力した成果であった。

 努力した成果を見せる事に執着してか、考えが追いついてなかったが、落ち着いてくると、思わぬ形で再会した経緯が気になり始める。


「僕にもよく分かってないんだ、拘束が解けたと思ったら、一心さんとこいつ等が闘っていてね······」


 銅谷京之介は仲間達と共に屋敷へと戻り、事の成り行きを確認する事にした。

 そして知らされる事になる。長い人生の中で、最も苦手とした人間が、もうこの世に居なくなったとゆう事実を······

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