第四章【託された希望】隠された真実
やっと銅谷家の者から逃れ、王の間へと移動する事が出来たファリアンス・レミアノ。隣には、苦しそうに息をするガルビナル・ザリヲンが姿があった。
「ザリヲン様······あの、どうなっているのでしょうか?」
「レミアノよ、嫌な思いをさせてしまってすまなかった。話しておきたい事があるのだが、少しだけ待ってくれるか?」
ガルビナル・ザリヲンが息を整えていると、同時に身体から出ていた黒い靄も治まってくる。
この王の間には、《結界術》と《魔力補完》とゆう術が同時かけられているのだ。
「はぁはぁ、私には残された時間がもう僅かになってしまった。昔、きみの先祖、ファリアンス・カーラと交わした約束。そして、託したい未来の話を聞いてくれるか」
ガルビナル・ザリヲンが過去と未来を語り出した。
まだガルビナル・ザリヲンが狂王と呼ばれる前、ずっとずっと昔の話。
彼が扱う事が出来た術は《解析術》、王家の血筋であったが、この術は家系で引き継いだ訳ではなく、特異体質持ちとしてこの世に生を受けた。
そして、《解析術》が優れている事が判ったのは、ガルビナル・ザリヲンが他者の扱う術を初めて見た時であった。
他者の術を見て、全ての解析が完了すると、ガルビナル・ザリヲンもその術を使える様になったのだ。
王家としては、天才児が産まれてきたと喜び、国中から珍しい術者を呼んできてはガルビナル・ザリヲンに解析させていった。
幾つもの術を手に入れる、その中でも《未来予知》や《魔力補完》などは、もう術者が存在していない。この術が世界を救うと同時にガルビナル・ザリヲンを苦しめる事になっていくのだった。
《未来予知》は完璧とは言えず、欠陥だらけの術と言っても仕方のない術であった。
何故なら、未来を予知する度に結果が変わってしまう様な術だったからだ。
それでも、変わらない未来がある事を知った時から、ガルビナル・ザリヲンの使命が決まってしまったのだ。
その変わらない未来とは、滅びの未来。魔の者が住む世界との繋がりが出来た時、滅びが始まっていく。
未来を変える為には、繋がりを断つしかないのだ、そして何百年にも渡って、ザリヲンは繋がる未来を阻止してみせた。
だが、阻止する方法に無理があったのだ。
魔の者が住む世界と繋がる要因が、此方の世界で溢れかえった魔力にあり、それを《魔力補完》でガルビナル・ザリヲンの体内に吸収する。その様にして、繋がりは阻止されていた。
それと、《未来予知》で見た、滅ぶ世界の住人を救う事が出来なかったは、救ってしまうと、繋がり事態の阻止が失敗する未来へと向かってしまうからであった。
その結果が、ガルビナル・ザリヲンを狂王と呼ばせる原因となってしまったのだ。
「やっぱり、ザリヲン様は悪い人じゃなかったんですね。でも、お会いした時、優しいと恐いを同時に感じたんです」
「そうか、レミアノと初めて会った時には、もう既に私の中から魔の者が覗いていたのだろうな······」
この後の話が本題だと告げ、ガルビナル・ザリヲンが続きを語り出す。
悪い予兆が見え始めたのは、今から220年程前からであった。自身に溜め込んだ魔力が利用され、自身を通じて魔の者が此方の世界に出現してしまうのだ。
抑えておく方法は、《魔力補完》の術に集中する事。その為、他の術を使う度に魔の者が侵入を試みて来るのであった。
この時、ガルビナル・ザリヲンが想いを寄せる女性がファリアンス・カーラであり、事情を知る唯一の人間であった。
ファリアンス・カーラは、明るく前向きな意見を言ってくれる。ガルビナル・ザリヲンにとって、心の支えになってくれる女性だったのだ。
ある日、ファリアンス・カーラが見つけた世界、地球の話をガルビナル・ザリヲンにすると、《未来予知》に新たな可能性が映し出される。
その可能性は2つ、地球の人間が力を手に入れる事により、魔の者と闘ってくれる未来。もう1つが、地球の人間が魔力を補完する能力を手に入れて、自身の代わりを務めてくれる未来であった。
2つの未来、その何方かに辿り着く為に、ガルビナル・ザリヲンとファリアンス・カーラが協力して、滅んだ世界に術を施していく。
様々な術を何度も使用するガルビナル・ザリヲンは、どんどんと身体を蝕まれ、悪い未来が訪れる時間を縮めてしまっていた。
これ以上術を使う事は、逆に2つの可能性も潰してしまう。それに気が付いた2人が、次に行ったのが、術を施した世界の維持を別の人間に任せるというものであった。
必要な術を使える家系を巻き込み、秘密裏に維持する役目があるのだと擦り込んでいく。
こうして、ファリアンス・レミアノ達が異世界に施された術の調査や保全を行う事になったのだ。
祖先達が有能だと思っていたのは、全てガルビナル・ザリヲンの術であり、使える術事態が違う物だという理由でもあった。
「騙していた事を、申し訳なく思っているよ。ここまでは信じて貰えたか?」
「信じますけど、騙す必要何てなかったじゃないですかっ。私達は幾らでも協力しますよ」
「解っている、私の民達が優しい者である事は。だからこそ、真実を話せば未来が変わってしまうのだ、私を救おうとする未来へとな」
そして、過去の話が終わり、未来への話へと移っていく。
「地球の人間が、魔の者と闘う力を手に入れるには、時間が足りなくなってしまったと思う。《未来予知》が使えないので正確ではないが、大凡当たっているであろう。だが、もう1つの可能性には辿り着く事が出来た筈だ」
「もう1つの可能性、魔力を補完する能力でしたよね······」
「そうだ、レミアノにはその人物を此処へ連れて来て貰いたいのだ」
「その人物って、誰だか判ってるんですか?」
「あぁ、レミアノ。《未来予知》が変わっていなければ、君が初めて出会った地球人が手に入れた筈だ」
「初めて出会った人······彰さん、それは黒街彰さんですっ」
「思い当たる人物が居て良かったよ、その黒街彰さんを連れて来てくれるか」
この時、ガルビナル・ザリヲンは1つ嘘をついていた。
本当は黒街彰が能力を手に入れる所までは知っていたのだ。だが、黒街彰の元へ向う事ではなく、ファリアンス・レミアノを助ける事に最後の力を使ってしまった。
理由は、《未来予知》ではなく、単なる予感であった。黒街彰の元へ向う事に、危険を感じたのだ。
ならばと、違う選択をする。愛した女性、ファリアンス・カーラに性格も見た目もうり二つのファリアンス・レミアノを助ける。それは、助けると同時に逢いたいという想いからでもあった。
「解りました。絶対に、彰さんを連れて来ます。任せてくださいっ」
ファリアンス・レミアノが自身の能力で扉を出現させる。
向う先は勿論、黒街彰が居る場所だ。
「では、行ってきます。ザリヲン様は安静にして、待っててくださいね」
捕らわれていた所から助け出され、少しの時間しか立っていないとゆうのに、元気に前を向く姿が、ガルビナル・ザリヲンにとっては大きな希望として映っていた。
(もう自分の事より、他人を心配しているのか。本当にカーラによく似ているよ、私は君に明るい未来が待っている事を、願う事しか出来ないのか······)
こうして、過去に起きた真実と、未来に残された希望を知ったファリアンス・レミアノが、黒街彰の元へと向かって行く。
ファリアンス・レミアノの使命は、黒街彰をガルビナル・ザリヲンの元へと連れて来る事となる。
それは、世界を救う為に、必ず成し遂げなければならない重要な役割であった。




