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第四章【託された希望】予想外の来訪者

 地球へ戻った黒街彰は、海野結菜に先ず仲間を紹介する事にした。


 同じアカデミー出身で、過去に海野結菜に助けられた事もある、舘浦喜助。

 異世界人と地球人のハーフで最年少、弟の様に思っているのが、時坂翔太。

 北の地で新たに出会った少女、人見知りだったが、人一倍優しい、三日月愛。

 『アリスフール』で蘇り、最大の脅威を共に乗り越えた、ディガルド・フィオル。


 簡単に出会った状況も話しながら、自分に協力してくれる、素晴らしい仲間に巡り会えた幸せを海野結菜にも伝えていく。


「素敵な友達が出来たんだね、私も友達になれるかな? それと私からも紹介したい子が居るんだ、ちょっと代わるから、びっくりしないでね」


 海野結菜の喋り方が変わったのは、黒街彰と再会してから心掛けている事があるからだ。記憶に頼らずに自分を取り戻す、それは、脳ではなく心に従って行動する様な感覚であった。


 次は朱菜が自己紹介する番だが、海野結菜の想い人に自己紹介するのは、他の人と違った緊張がある。


「え〜と、私は朱菜。この身体に元々宿っていた意思って感じかなぁ、結菜とは親友だから此れから宜しくねっ」


 皆が皆、お互いを受け入れられた。離れていた時間を取り戻すかの様に、昔から仲間であったかの様に打ち解けていく。その様子は、平和そのものと言っても良い。そんな時間が流れていた。


 一方、水元家に一度集合していたのは、水元家の面々と、本城尊や郷倉未知瑠、そしてクレイス・ファーナ、ビグラウト・テラネウス、プロテラス・ガディ、ミクレリア・ピグの異世界人だ。


 そして、ビグラウト・テラネウスの知る限りの、扉が創られた過去が水元家と本城尊にも伝えられ、現在の世界中で起きている異変が銅谷京之介、もしくは銅谷権兵衛の仕業だという事が全員の認識となっていった。

 それと同時に、ファリアンス・レミアノの救出に、力を貸す約束も成立していた。


「おいおい、すげぇ情報だな。俺も直ぐに受け入れる事は出来ないぞ」


「そうじゃな、考える時間が欲しいのう」


 本城尊と水元茜の2人も、流石に受け入れるには時間が必要であった。

 それでも、知った情報と現在の状況を合わせれば、段々と見えてくるものもある。


「世界中の扉が閉じているのは、銅谷権兵衛の仕業であろう。では、最近起きた西での騒動はなんであったのか?」


 西での騒動。ひと月程前に、街が破壊される程の争いがあったと情報が入っていた。

 長引く事はなく、騒ぎは収まった事から詳細までは判っていない、詳細を知る事が出来ないのは、西には簡単に手を出せないのも理由であった。


「まぁ何にせよ、近い内に銅谷権兵衛って奴には痛い目にあって貰うぞ。殺しに、人攫い、そんな奴は許せるもんじゃねぇ」


「有難うございます。急かす様で申し訳ないんですが、いつ頃救出に向かえそうですか?」


 ビグラウト・テラネウスは、ファリアンス・レミアノを攫われた頃の様に焦ってはいなかった。

 もう既に1年間も待っている、急いで向うよりも、万全の体制で救出に向かいたいと考えているのであった。


「今や戦力は此方の方が高いと思うが、何も情報がないのは危険過ぎるであろう。少し水元家で情報を探る時間を貰おうか。まぁ、その間に祝言でもあげておれ」


 複雑な心境ではあったが、時間が有るのならば、本城尊も結婚式はあげたいと思っていた。

 この日の会合を終えてからも、数日どうするのが良いかと考えた結果、水元茜の気遣いを受け入れて、西へと行く前に結婚式をあげる事にするのであった。


 地球へ戻ってから、二週間の時が経過した。

 この日は、本城尊と郷倉未知瑠の結婚式が執り行われる。


 黒街彰や海野結菜、他の仲間達も招待され、初めての結婚式に少し緊張した面持ちで向かっていく。

 他にも、結婚式には今後協力体制を取っていく事になる水元家と、異世界人も招待されている、北からは大勢の人間が駆けつけ、盛大な結婚式になる予定であった。


「凄い人だね、後ろの方だと未知瑠さんが見えないよっ」


 大きな神社であったが、あまりの人の多さに少し離れた位置で集まっていたのだが、三日月愛は郷倉未知瑠の近くに行きたくてしかたがない様だ。


「愛、未知瑠の所、行く」


 三日月愛の気持ちを汲んで、ダ・ビャヌが花嫁の元へ行こうと誘う。

 それにミクレリア・ピグも賛成して、女性陣は花嫁の元へと行こうと考える。郷倉未知瑠とは、1年を共に過ごした事で、結婚式の前に会うぐらいの絆は深まっているのだ。


 だが、女性陣の中で2人、この場に残っている人物がいた。一人はクレイス・ファーナ、もう一人は海野結菜だ。


「結菜は行かないの?」


「私は行かないよ。朱菜は興味津々みたいだけど、私はまだ、皆と打ち解けられてはないしさ。それに、彰くんと一緒に居たいからね」


 海野結菜の言葉に、黒街彰が顔を赤くして微笑んでいる。

 幸せを絵に描いた様な2人を、周りの皆も微笑ましく見守っていた。 


 そんな中、ビグラウト・テラネウスは、女性陣が歩き出した背中見送り、時間が来るまでどうしようかと考えていた。

 とりあえず、地球の景色でも眺めようかと遠くを眺めていると、此処に居る筈のない人物が、こちらに向かって歩いて来るのに気がつく。


「レ、レミアノっ? レミアノが居る······」


 黒街彰や此処に居る仲間達が、ビグラウト・テラネウスの言葉に驚き一斉に同じ方角を向く。

 そこには本当にファリアンス・レミアノの存在と、共に行動している筈のない人物達の姿が、確認出来るのであった。


✩✫✩✫✩


 時間は、銅谷京之介が『アリスフール』から地球へと戻った瞬間まで遡る。


 父親である銅谷権兵衛の手口は判っていると、仲間と作戦を立て、地球へ戻った銅谷京之介であったが、智謀の面では銅谷権兵衛の方が一枚上手であった。


 扉から出ると、唐代一心の指示で配下の者が待ち受けていた。銅谷権兵衛から、戻ったら銅谷家の屋敷へと来る様に言伝を預かっているのだと言う。

 避けて通る訳にもいかない為、銅谷京之介は屋敷へと向う事にする。


 屋敷へと到着し、客間まで案内される。すると、父親の他には唐代一心と、何時も暗躍している配下の者達が揃っていた。


「只今戻りました。父さん、あの少女は何処へやったのでしょうか?」


 銅谷京之介は、自分は解っていると言うように、先に話題を振る。

 その言葉に対して返ってきたのは、銅谷権兵衛らしくない行動であった。


「拘束せよ」


 行き成り力技で来たかと、銅谷京之介は唐代一心を注力していた。

 父親は言葉で人を掌握する、実力行使するのであれば唐代一心が動くのが銅谷京之介の知る2人の関係だ。


 油断した訳ではなかったが、注意の外から現れた鎖を躱す事が出来ない。手足や胴体、首にも鎖が絡みつき、身動が取れなくなってしまった。


「私の奥の手だ。京之介、言っておくが私がお前を甘く見ることはない。計画が成し遂げられるまで大人しくしていろ」


 拘束の特殊スキルを銅谷権兵衛は取得していたのだ、この日まで唐代一心しか知らない奥の手であった。

 そして、特殊スキルの拘束を受けた銅谷京之介は抜け出す事が出来なかった。無駄に暴れる事なく、今は拘束される。まだ父親に劣る結果になってしまった事を悔やむしか出来ないのであった。


 他のメンバーは、お咎めもなく解散する事になり、争う事なく息子を跳ね除けるのは、流石銅谷権兵衛といった所だ。


 この日から、本格的に銅谷権兵衛の計画が動き出していく。

 ファリアンス・レミアノの能力を使い、日本以外の扉を閉じていき、日本だけが特別な国だとする。

 長く年月が過ぎる程に力の差が増し、そして、日本が世界の頂点に立つ。此れが銅谷権兵衛の計画であった。


 そして、扉を閉じ始めて1年という時間が経過する。


 この1年間は、銅谷権兵衛の拘束スキルと、常に複数の人間に見張られていたファリアンス・レミアノは、逃げる事は叶わなかったが、抵抗している事もあった。

 自身の能力を不便な物として、時間稼ぎだけは行っていたのだ。

 飛行機で国を行き来するのも、時間を使う事になるのだが、時間稼ぎの効果が高かったのは、能力を連続で使えない、そんな嘘の成約があるという事にしたのであった。


 そのお陰で、1年がたった今も世界中の扉が閉じていないのだが、ファリアンス・レミアノの心は、等に限界を迎えている。


(何時までこんな事を続ければいいんだろ、私が協力してたら、この先はどうなっちゃうの?)


 今は、ヨーロッパ中の国々にある扉を全て閉じ、一度日本へと帰国して来た所であった。

 日本から出国する時は、唐代一心と他に数名が共に行動しているのだが、銅谷権兵衛への報告や、日本の情勢を話し合う為に、きりの良いタイミングで銅谷家の屋敷へと戻ったのだ。


「大分進んだな、何も問題はなかったか?」


「今回も、大きな問題はなかったな。お前の方はどうなんだ、京之介は大人しいままか?」


「あぁ、この1年大人しくしている。言うことは聞かず、自分の意思で動き出すかと思っておったのだがな、私の予想が外れたか······」


 実力者である息子の銅谷京之介。銅谷権兵衛は、その反乱を予期して拘束していた。

 1年間大人しくしているのは良い事なのだが、予想通りの動きをみせない事が、逆に不安を誘う。


 そんな時であった、ファリアンス・レミアノと銅谷権兵衛の間に、突如として扉が現れたのだ。


「何をしておる?」


 銅谷権兵衛は、扉を創り出したのはファリアンス・レミアノだと勝手に思う。その勘違いが、動く事が出来ないファリアンス・レミアノなら大丈夫だと、油断する原因になっていた。


 扉が音を立て、少しずつ開いていく。

 そして、中から現れたのは、黒い靄を身体から放つ、怪しい男であった。


「レミアノ、王の間に扉を繋げ」


「えっ、ザ、ザリヲン様」


 怪しい男の正体は、ファリアンス・レミアノが居た世界の王、ガルビナル・ザリヲンであった。

 なぜ今になってこの場に現れたのか、ファリアンス・レミアノにも判らない。銅谷権兵衛達にとっては、誰とも判らない相手が突然襲撃を仕掛けて来たと考えるしかない、判断材料はなにもないのだ。


「一心っ」


 それでも、銅谷権兵衛が何をしに来たのかをいち早く察知し、声を放つ。

 その声に理解を示す唐代一心は、直ぐに行動に出るのだった。


「此方に寄るでない、下がっておれっ」


 ガルビナル・ザリヲンが発した言葉は、誰の動きも止める事は叶わなかった、銅谷権兵衛がファリアンス・レミアノの元へ動き、唐代一心がガルビナル・ザリヲンに攻撃を仕掛ける。


 そんな刹那であった、この世界に来てはならない者が唸り声と共にこの場へ現れる。

 それはガルビナル・ザリヲンの身体の内から出現し、全てに敵意を向けて襲いかかるのだった。


 出現した者の数は4体、人型だが大きな腕に大きな爪が印象的で、人間とは思えない見た目をしている。

 それが、此処に居る人数と同じ数が飛び出すと、それぞれに襲いかかっていた。


 ファリアンス・レミアノとガルビナル・ザリヲンへ襲いかかった大きな爪は、見えない何かに防がれる。

 唐代一心は刀で防ぎ、逆に反撃に転じていた。


 そんな中で1人、反応が遅れてしまったのは銅谷権兵衛だ、能力値の差が反応出来なかった原因であった。

 左手の大きな爪が身体を貫き、次の瞬間には右手の爪に頭を吹き飛ばされてしまった。


「権兵衛っ」


 銅谷権兵衛が命を失った事で、ファリアンス・レミアノの拘束が解除される。


 唐代一心が銅谷権兵衛へと注意を向けていると、この部屋にもう一つの扉が現れた。

 ガルビナル・ザリヲンがファリアンス・レミアノを抱え、その扉へと手を掛ける。


 そして、4体の悪しき者を残したまま、扉の中へと入り、扉は消えていくのであった。



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