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第四章【託された希望】私の手で

 招集をかけた日から、実に一年近い日々が過ぎ去ろうとしている。

 大切な人の居場所が判明したあの時は、皆がこれで手掛かりが掴めると勢いづいていたのだが、結果としては前進出来ない日々が続くとゆう苦しいものであった。


 それでも諦めない者達は、この一年ずっと探しているのだ、鍵の守護者を。


「茜様、気になる情報が一つ上がりました」


 水元茜の元に寄せられた情報は、探索者が消息を断ったというものであった。

 直ぐ様、担当していた区画を特定して、代わりの誰かを向かわせる。


「本城には悪いが、結菜に報せてやるとしようか」


 一年の月日が経過する中で、一番実力を上げたのは、間違いなく『成長型オートマタ』の身体を持つ海野結菜だ。

 水元茜が人選した理由も、海野結菜ならば守護者を見つけ出し、鍵を手に入れて帰って来る可能性が高いと判断しての事であった。

 その他にも、感情で判断している部分もある、海野結菜とククノの会話を水元茜は聞いていたのだから。


 現在、海野結菜は山岸徹と四ノ扉の中で探索の最中であった。

 そこへ、情報を伝えに行くのは、流水の上尾泰士だ。山岸徹と上尾泰士が会うのも久しくなかったのである。


「はぁ〜、やっと見つけたぞ······」


「あれ、上尾さんじゃないですか、どうしたんです?」


 休む時間を最小限にして動き回る、海野結菜と山岸徹を探し出すのは骨が折れた。

 担当区画に到着するまでに一週間、見つけるまでに二週間、合計三週間の日数がかかってしまったのだ。


「軽くどうしたんですか、じゃねぇんだよ。お前らに情報を渡す為に、俺が派遣されたんだ。有り難く思えっ」


「山岸さん、茶番は後にしてください。早く情報を聞きましょう」


 母親から直接情報を貰っている海野結菜は、黒街彰が無事で居る事を知っている為、焦っている訳ではないのだが、悠長に構えられる月日は等に過ぎている。

 人に当たるような事はないが、貰える情報があるのならば、早く貰いたいのだ。


「なんだよ、山岸の相棒は可愛い見た目と違って随分と恐いじゃないか······」


 急かされた上尾泰士は、探索者が消息を断った区画の情報を直ぐに話しだした。その場所は、此処から反対の位置である為、一緒に扉まで行動しようと提案する。

 その提案をした理由は、安全に行動する以外にも、海野結菜の実力を見ておきたいと考えたからであった。


(見ないうちに威圧感が凄いんだよな、『成長型オートマタ』の能力を知っておくのも悪くないだろう)


 扉へと向う道中、出現するモンスターを海野結菜が朱菜と協力して倒していく。

 既に山岸徹との連携がなくても、倒せるだけの能力を手にしているのだ。

 基礎能力の向上も大きいのだが、戦闘センスと、能力が上がる度に朱菜に出来る事が増えるのも海野結菜が強くなる大きな要因であった。


「山岸、海野結菜はびっくりする程強かったな。お前は誰よりも強くなりたかったんだろ、近くに居て辛くないのか?」


「まぁ、確かに嫉妬する時はありますよ、でも気持ちいいぐらい強くなりやがるんでね······」


 共に闘い始めて最初の内は、実力を伸ばしていけると喜んでいた。いつの間にか、自分より速くなり、力負けする様になる。

 それでも戦闘センスに自信を持っていた山岸徹は、悔しいとは思わなかった。悔しいと思ったのは、訓練で海野結菜に負けた理由が闘いの上手さであると悟った時だ。

 その後は、多彩な攻撃方法も身に着け、どんどんと能力も上げる海野結菜を認めるしかなかったのだ。


「そうか、それなら人間で最強を目指せ。元上司として応援しといてやるよ」


 山岸徹が、流水で共に行動していた時には見せなかった表情をしているのを見て、なんだか複雑な気分で別れる事になる。

 上尾泰士は「応援しといてやるよ」なんて、自分でも何故言ったのかと考えながら別れるのであった。


「海野、このまま目的地まで進むか?」


「当然です。絶対に守護者を見つけますよ」


 『成長型オートマタ』の底無しの体力と、海野結菜の精神力に山岸徹は気合を入れ、目的地まで着いていく。


 上尾泰士と合流した場所から扉までは、5日かかったのだが、扉から目的地まで着くまでは6日の日数がかかってしまった。

 その前からずっと異界に居る上に、目的地までの強行軍で山岸徹は疲れきっていた。


「やっと着きましたね、流石に少し休憩をとりましょう。ごめんなさい、無理をさせてしまって」


「大丈夫とは言えないぞ、こんなに無理をしたのは俺も初めてだよ······」


[全くだらしないわねぇ、気合が足りないのよ、気合が]


 海野結菜が身体を動かしているので、移動に関しては何もしていない朱菜が、頭の中で文句を言っている。

 山岸徹には伝わっていないが、海野結菜は少し気の毒に思うのだった。


(この辺りに居るとしたら、どこ何でしょう。もう闇雲に探すのは、ちょっと嫌ですね)


[それじゃぁさ、この辺りの木を全部焼き払うなんてどう?]


(それは魔力が足りなくなって、戦闘どころじゃなくなりますよ。それに、痕跡とかもなくなるかもしれません)


[え〜、それなら結菜は良い案あるの?]


(目撃情報がないのがヒントになると思うんですよね、先ずは歩き回って、他と違う事がないか調べるしか思いつきません)


「山岸さんは、どうやって探すのがいいと思いますか?」


「探し方は判らねぇけど、注意するのはモンスターの特性だと思うぞ。未だに見つかってないのは、姿を消せたり、擬態出来たりするのかもしれないだろ?」


「擬態は有るかもしれませんね、北ノ扉では満月で姿が見えるって言っていたと思います。それに近い性能の可能性はあり得ます」


 守護者についての考察は、明確な答えが出る事はなかったが、会話をしながらでも休息は十分に取る事が出来た。

 後は足を使って探す、今度こそは必ず見つけてみせる、海野結菜はそう強く願うのだった。


(ん? 何だか地面が柔らかい気がしますね)


 捜索を始めて少し立つと、おかしな点を発見した。気になった地面を強く踏みつけると、数センチ程沈み込む。

 試しに他の場所でも同じ力で踏みつけるが、足跡が出来る程度で、明らかに地面の変化が感じられる。


(地面の下に居るんですかね、その可能性は十分あり得ますね)


[手掛かり発見だね、近くに居るのかな?]


 地面が数センチ沈み込んだが、中に空洞がある訳ではないのだ。

 真下に潜んでるとは考えづらい······


(柔らかい地面を辿ってみましょう)


 辿って行くと、見失うほどわかり辛い場所がある、海野結菜は少し考えて、深い地面を移動した形跡だと判断する。

 そして、辿ってから1時間以上が経過しても、途切れる事なく続いていくのだった。


 また段々と、形跡がわかり易くなってきた時であった、集中した足の裏に地面からの振動が伝わってくる。


(居ますよ。朱菜、合図したら土魔法で地面を出来るだけ深く掘り返してください)


[オッケー、全力でいいよね]


「山岸さん、発見出来るかもしれません。注意してください」


 地面からの振動が強くなり、真下から強く感じた、その瞬間。


(朱菜、今です)


 海野結菜が後ろへ飛び跳ねると、朱菜の土魔法が海野結菜が居た地面を一瞬で掘り返しす。

 すると、土魔法が見事にモンスターを捉えているのだった。


 現れたモンスターは、3メートルはあろう巨体で、顔より下はゾウに似た体型をしている。だが、顔だと思われる部分は目は見当たらなく、殆どが口で鋭い牙が幾つも生えている。


「随分と気持ち悪いモンスターだなっ、先手は俺が貰うぞ」


 山岸徹が刀を抜いて距離を詰めると、地面が行く手を阻むかの様に襲ってくる。

 足元から襲う、尖った地面に意識を割いていると、いつの間にか空中には大量の礫が浮んでいた。


[全く、一つ借りなんだからねっ]


 山岸徹に襲いかかった礫は、朱菜の風魔法が防いでくれる。

 朱菜の風魔法で、山岸徹の周りに常に回転した風が現れたのだった。


「助かった。朱菜、そのまま頼むぞっ」


 風魔法の継続を頼むと、モンスターへと突っ込んでいく。

 刀が届く位置まで距離を詰めると、鋭い斬撃がモンスターの腹部へと直撃した。


「かぁぁっ、こいつ、硬ってぇぞ」


 闘いが継続すると、モンスターが強力な土魔法だけではなく、防御力まで高い事から海野結菜も攻めあぐねていた。

 それに、これだけ強力なモンスターであった事が、目撃情報が見つけづらいだけてはなかったのだと教えてくれる。


[あっ、また地中に潜りそうだよっ]


(それはさせません。朱菜、少し無理します)


 危険を承知でモンスターへと接近していくと、海野結菜が土魔法でモンスターが居る地面を掘り返す。

 普段は朱菜に魔法は任せているが、海野結菜も同じだけ使えるのだ。


 地中に潜るのを阻止出来ると、山岸徹以上の斬撃を止めどなく放っていった。


(本当に硬いですね、胴体も足も首もダメなら、残りは······)


 モンスターの土魔法は、朱菜が風魔法で防いでくれている。

 直ぐ下に居る人間に、モンスターが他にやってくる攻撃方法など誰でも予測出来ると、鋭い牙が生えた口が飾りじゃないだろうと海野結菜は思っていた。


(朱菜っ、剣先に風魔法をお願いっ)


 鋭い牙だらけの口を大きく空け、食らいつこうとモンスターが下を向く。

 その大きな口へ、海野結菜は剣を突き刺すのだ。

 顔が弾け飛ぶまではいかなかったが、モンスターは叫び苦しんでいた。


(これで決まるかと思ってたんですけどね、ダメージが与えられただけ良しとしましょうか)


[うんうん、それじゃ次は火魔法でいかない?]


 朱菜の一番得意な魔法は、最初に使える様になった火魔法であった。更に、最近編み出した必殺技があるのだ。


[いくよぉ〜、焔スペシャル。発射っ]


 一つの炎に魔力を多く込め、それを圧縮させると風魔法を使い高速で発射させる。これが、朱菜の必殺技だ。

 朱菜の焔スペシャルが当たった皮膚が、高温で焼かれ崩れていた。


[焔スペシャルっ、連射]


 そして、モンスターにダメージが見られると、朱菜は調子に乗って連続で攻撃し始める。

 因みに、連続で使うのは、初めての試みであった。


(ストップ。朱菜っ、魔力がきれそうです。ストップしてください)


 目眩がする、直ぐに調子に乗ってしまうのが朱菜の悪い所だ。今回の様な強力なモンスターが相手だった場合、命を落としかねない。

 その考えが現実になりそうであった、皮膚はボロボロだが、まだ生きていたモンスターが煙が晴れると得意の礫を構え、今にも放つ所であった。


「ほれっ、魔力を回復しろ」


 礫と海野結菜の間に割って入った山岸徹が、海野結菜に魔力の回復薬を渡して、代わりに礫を受け止めてくれる。

 そして、血だらけになった山岸徹の背後から、勢いよく飛び出すと、風魔法で加速し、そのままモンスターに斬りかかる。

 皮膚を殆ど失っていたモンスターは真っ二つになり、黒の宝箱へと変わっていくのであった。


(やりました、やっとです······やっとですよ)


 海野結菜は、1年間探し続けた鍵の守護者を見事に見つけ、自らの手で倒す事が叶った。

 これでようやく出会う事が出来るのだ、記憶を失くし、覚えていなくても会いたいと願う、水元茜に教えられた『愛しい人』に······

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