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第四章【託された希望】進まぬ焦り

 中央の扉へお忍びでやって来た北の面々。本城尊を筆頭に、十傑も半数以上が着いて来ているのだった。

 郷倉未知瑠の居場所、その手掛かりを掴む為に中央の四ノ扉を攻略する。面子を見れば、本気度が高い事が伺えた。


「くそっ、満月が終わっちまったじゃねぇかよ······」


 もう三度目の満月の夜が明けようとしていた。中央で目立つ行動を控える為に、地球へは戻らず四ノ扉の中でずっと生活しているのだ、ストレスと焦りで険悪な雰囲気が漂う。


「尊様どうします、なんか作戦立てた方が良いんじゃないっすか?」


 空中から鍵の守護者を探していた上里太陽が、地上に降りてくると能天気に物を言う。

 こうゆう困った時に、意見を言ってくれるのが郷倉未知瑠だったのだが、居ないと実感するのだ、頼れる存在であった事を。


「てめぇらもちったぁ考えろよ、まったく。あぁどうするか······ちっ、しょうがねぇ一度戻って公雄と連絡をとるか」


 一度戻る事を選択し扉を潜ると、黒服の男が2人近づいて来る。


「本城尊様ですね、水元茜様が会って話したいと申しております。一緒に来て頂けませんか?」


 黒服の男は、水元茜の使いで来たと言う。互いの情報を交換する為に、本城尊との会合を希望していた。


「いいだろう、西で未知瑠の手掛かりは見つけけたのか?」


「すいません、私達には判りかねます。情報は水元茜様にお聞きください」


 正直困っていた本城尊は、素直に着いて行く事にする。何でも良いから手掛かりが欲しい、それでも水元茜に会う前には、北陽公雄にアドバイスを聞く事は忘れていない。

 北陽公雄に連絡すると、2つ程アドバイスを貰う事が出来た。それと、用心を忘れない様に釘を差されるのだった。


(まったく、心配しすぎだろ。でもまぁ頼りになる奴だよ。それにしても、頭脳派が公雄以外に居ないのは困ったもんだな)


 連絡をしながら着いて行くと、目的地へと到着する。やっとそこで、水元家の屋敷へと案内されていた事に気が付いた。

 そのまま屋敷の中へと案内される。


「よう来てくれたのう、思う所があれば遠慮なく申してくれ」


 当主の部屋へと到着すると、水元茜が出迎える。2人が直接出会うのは、200年以上の人生で初めての事であった。

 そして、お互いの第一印象は、色々な意味で悪いものではないのであった。


 水元茜は、筋肉質で鋭く光る目つきをした本城尊を、真っ直ぐで御し易いタイプだと勝手に思う。そう思うのも、先日の銅谷権兵衛と比べての事であった。

 対して本城尊は、水元茜が何処ぞのお嬢様みたいな少女であった事に驚きを隠せないのであった。


「まぁ色々あるがな、今は未知瑠の捜索が最優先だ。文句は見つかった後に取っておくとしよう」


 早速、この数ヶ月の情報を話すのだが、手持ちの情報を交換しても、お互い有益な話が出来ない。

 会いに来た意味があったのか、そう思っても仕方ない空気が部屋の中に漂い始める。


「良い情報は無しか······少し質問をしたい、一から三ノ扉に居た鍵の守護者について聞かせて貰えるか?」


 そんな時に、本城尊が北陽公雄から聞いていたアドバイスを思い出した。

 其れは、中央と北とで鍵の守護者が違う可能性についてであった。水元茜に会うのであれば、過去に討伐した鍵の守護者を聞いてみた方が良いと言われたのだ。


「詳しい情報は判らぬ、中央では時坂が殆どの守護者を倒しておるのじゃ。まぁ大分昔だが、一ノ扉に居た守護者の事は聞いた事があったのう」


 腹がでっぷりとした、土魔法を使うモンスターが鍵の守護者だと、時坂純也に聞いた事を思い出す。懐かしい記憶、さり気なくした会話を、本城尊へ話している事を不思議に思う。


「太った土魔法を使うモンスターか、聞いた事がないな。俺が知ってる一ノ扉の守護者は、打撃が上手いが、一ノ扉では格上ってだけのモンスターだったからな」


 この情報は役に立つかもしれない、モンスターに違いがあるのならば、北と同じ様に探していても、一生見つからなかったかもしれないのだ。

 もう一つ、北陽公雄が考える可能性についても聞いてみる。


「変わったモンスターの情報とかは無いのか? 北と違う守護者で、未だに発見されないのはおかしいだろ?」


 とても素速いモンスター、或いはとても小さいモンスター、探索者に出会っても逃げてしまう様なモンスターの可能性を北陽公雄は伝えていた。


「そのようなモンスターの情報は入っておらんな。私も借りをつくるのは嫌なのでな、探索者へと通達を出し、本格的に鍵の守護者を探すとしようか」


 北のトップと中央のトップ、2人の初めての邂逅は平和に過ぎていく。

 あまり実りの無いものだったかの様に感じるが、協力体制が築ける事は、2人にとっても良い事と同時に、日本国内にとっては大きな意味を持つのであった。


 この日から一ヶ月後、本城尊の元へ大事な報せが届く事になる。


✩✫✩✫✩


 黒街彰が、結界があった場所へと戻る為に進んでいると、全てのモンスターに気づかれないでやり過ごす事は難しく、どうしても戦闘になってしまう。

 ビグラウト・テラネウスが居なくなってしまった事で、より苦戦を強いられる。本当に命がけで進んで行かなければならなかった。


「はぁはぁ、怪我した人は治してから進みましょう、愛ちゃん回復してあげてくれる?」


 今回の戦闘では、不意に襲われたミクレリア・ピグが吹き飛ばされ、かなりの重症を負っていた。

 一撃でもくらえば、危険な事が証明されてしまう。それに、他のメンバーも至る所に傷がみられるのだった。


「悪い、俺が油断してしまった。次からは気をつける······」


 プロテラス・ガディの集中力もずっと続く訳ではない、今回はたまたま集中がきれた瞬間に襲われてしまったのだ。


「あの、気にしないでいきましょう。何時も助かってますから、それと陣形もしっかりと整えましょう。ガディさんだけ油断した訳じゃなくて、自分も同じです」


 疲れからか、陣形もバラけてしまっていた。戦闘能力が低いミクレリア・ピグが遅れ、最後尾に居る所を狙われてしまったのだ。

 黒街彰は、リーダーとして気付けなかった事を反省すると、陣形を崩さない為に、休憩の頻度を調整するのであった。


(気付かなかったけど俺も焦っていたな、翔太の速度に引っ張られてるのに気付けなかった)


 先頭を歩くのは時坂翔太だったのだが、時坂翔太は後ろを気にせずどんどんと進んでいた。

 能力的にも一番速い上に、母様に会いたい気持ちが急がしてしまうのだ。


 丁度昼時であったことから、食事と休憩を十分にとると、皆の顔色も良くなってきたのが判る。

 そして、進む事を再開させ、歩き出して数分でプロテラス・ガディの探索術に人の影が映るのだった。


「ちょっと止まってくれ、人が居るぞ······」


 高速で進んで来る人影に、銅谷京之介が戻って来たのだと皆が思っていると、現れたのは仲間の姿であった。

 捕らわれたビグラウト・テラネウスが戻って来るとは、誰も想像していなかったのだ。


「テラさんっ、無事だったんですね。逃げ出して来れたんですか?」


「ふぅ~、皆と合流出来て良かった。それに無事で居てくれて······あと、俺は逃げ出した訳じゃなくて、解放されたんだけどな」


 ビグラウト・テラネウスが合流すると、捕らわれていた時の状況を話し出す。重要な内容なのは、銅谷京之介との会話と、近くに扉が見えていた事であった。


 黒街彰も、ダ・ビャヌと郷倉未知瑠が生きている可能性を考えて、結界を越えた先に戻る途中である事をビグラウト・テラネウスに伝える。


「有難うございます。テラさんが持って来てくれた情報は、俺達の行動に選択肢を持たせてくれる重要な情報です。西の扉から地上に戻る事が出来るんですから······」


 それでも、今は扉に向う選択はしない。

 やはり一番は、ダ・ビャヌと再会出来る事だと、地球人である黒街彰のパーティーは全員思っていた。

 異世界人である3人は、帰る事が出来ない事から、着いて行く事しか出来ないのだが、力を貸すことに異論はないのであった。


 ビグラウト・テラネウスが加わった事により、加わる前よりも順調に進む事が出来る。

 数日が経過すると、ようやく結界があった場所まで戻って来れたのだ。


「そこだよ、結界の穴。今幻術を解くからね」


 ミクレリア・ピグが幻術を解くと、フォンス・カーリルが開けた結界の穴が姿を現した。

 黒街彰の中で、もしも穴が閉じてしまったら、とゆう考えもあったので、とりあえず結界の穴を見れてホッとする。


「良し、行こう。皆、何が待ち受けていても、冷静に対処しよう」


 結界の穴を潜り、歩いて行く。向うのは、闘いがあった場所。そこまでは、そんなに距離が離れている訳ではない······

 緊張した足取りで進むと、見えてきたのは、複数ある墓標の姿であった。


「······ガイさん、フルム、皆」


 墓標が作られていた事実は、絶望と希望の両方を与えてくる。

 ビグラウト・テラネウスは、銅谷京之介から言われ覚悟していたつもりであったが、現実をみて傷つかない何て事はなかった。

 そして、墓標を作ったのが誰なのか。その答えは一つしか思いつかない。


「今はビャヌさんの姿はないか、とりあえず、此処に拠点を作ろうか。きっと、ビャヌさんは此処に戻って来る筈だよ、なっ翔太」


「うん、そうだよな。ん? あれ······母様、か、母様っ」


 時坂翔太が返事を返していると、黒街彰の後ろの方から歩いて来るのは、ダ・ビャヌと郷倉未知瑠であった。

 時坂翔太は駆け寄り、強く抱きつく、向う道中は強がっていたが、ダ・ビャヌを見た瞬間に我慢が出来なくなる。

 ダ・ビャヌは、大粒の涙を流して抱きつく息子を、優しく抱きしめて頭を撫でる。


 その光景に、少しは救いがあったのかと、黒街彰は目を潤ませるのであった。



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